総員出撃
その頃、本部施設では戦闘メンバーがラボに集結していた。本部施設の防衛システムと他の戦闘員たちが敵の進行を抑えてくれているが、それも時間の問題だろう。
「レイラとアキラは地上の人型を潰せ、シオンは空中の飛行タイプだ。リネス、お前は遠距離から地上、空中を援護する形で狙撃を任せる、狙撃地点はなるべく高所を選べ」
「ヴァイン総隊長、うちのリーディアは?」
「……別任務だ、もうすぐ戻る」
今回の件、シオンには伝えていない。
自分の部下を危険に晒すと知れば反対するだろうし、一年前までは教官だった人物を疑っているなどと伝えるのは、さすがに気が引けた。
そんなことを考えていると、ヴァインの携帯端末が小さく三度、振るえた。
「リアン、現在の座標は?」
モニターを凝視するリアンに尋ねる。
同時に携帯で、今作戦の二つ目の鍵となる女性にコールする。
「現在の座標はX34――Z189の位置」
「X43――Z189、大至急で頼む」
携帯で座標を知らせ、待つこと数秒程で、ラボにリーディアが転移してきた。
「ご苦労だった、帰ってすぐですまないがシオンと組んで空中の敵勢力の撃退を頼む。各分隊長も、自分の役割を冷静に認識して事にあたってくれ、俺は確認しなけりゃならないことがある。それが終わればすぐに向かう」
『了解しました!』
全員が敬礼し、一斉に飛び出す。
数の上ではかなり不利だが、戦力だけで言えば、こちらが有利と予測している。
セラスは新人たちを実戦経験不足と評価するが、毎日のように、ヴァインやレイラの殺気に当てられ、毎日のように実戦のような戦いをしているのだ、誰にも言わせない。彼女たちの実戦経験が不足しているなど。
ヴァインも出撃しようと、魔石を開放する直前だった――
「ヴァイン君……少しお願いがあるんだけど……」
リアンが神妙な面持ちでこちらを見ていた、そして頼みごとの内容も想像がついている。
「わかっている、セラスとの戦闘はあんたに任せるよ。援護もできないタイマンになるだろうが、かまわないだろう?」
親友との戦いに野暮な真似はしたくないし、リアンがセラスと戦うのは、ヴァインにとっては願ったり叶ったりだった。
敵の背後にはシュウが控えている。
できれば無駄な魔力は使いたくない。
「本部の防衛指揮はティナに任せる。俺は各チームの援護をしつつ、敵戦力を削り、敵本体の撃破に戦力を費やす。すまないが、そっちは任せたぞ」
「了解、これが終わったらみんなでパーティーでもしましょう」
「もちろん、セラスも一緒にな。全員今夜の会議は強制参加だからな」
小さく笑みを浮かべながら、セラスが通過するポイントを目指し、飛ぶリアン。
それを見送り、地上、空中の敵迎撃に向かったシオンやレイラたちの部隊が、戦闘を繰り広げている場所に視線を移す。
そこかしこで爆発が起こっている。
そんな中、空中でポッカリ口を開けている黒い穴、転移魔法よりも高度な次元転移のゲートが現出し、そこから大勢の敵が湧き出ている。
おそらくあの先にシュウがいるだろうが敵の数が多すぎる。
「魔石開放、エスクリオス」
魔石を開放し、行動を確認。
各チームの援護に向かい、ある程度まで敵を減らし、援護部隊が到着してから、シュウの元へ向かう。
倒すべき敵に速攻で突っ込めば、仲間を危険に晒す懼れがある。
「少し……いや、かなり面倒くさいが……やるしかないな」
だが、その前に確認しておかなければならない事がある。
胸中で呟き、翼を大きく広げ、空へと飛ぶ。
魔力の羽がラボの操作パネルに優しく落ち、弾けて消えた。




