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スリースターズ  作者: カミハル
~総隊長と休暇、ついでに勝負~
27/51

パコス、悲劇の始まり

 記録、三十二キロ。

「がぁっはっは! バカめ、このマシンは魔力測定用だ、普通のパンチをいくら打とうが無駄だ! もっとも、小僧如きでは俺の記録は越せんよ」

 豪快に笑うパコス。

 パコスの勝利を確信し、最後まで見届けず、それぞれ自分の遊びたいゲームに向かう観客。

「負けたら財布と女だっけ?」

 アキラとリーディアを前に押し出す。

 顔だけ見れば、二人ともなかなかのレベル。

 もちろん、魔力もパコスに比べれば上だ。

「おうよ、なんだ? もう敗北宣言か?」

 店内に響く笑い声、周囲の観客もヴァインを遠巻きに嘲笑う。

「俺が勝ったら、街中で知らない女性十人に甘えた声で、間違えてお母さんと呼べ。それと財布丸ごとな」

 ヴァインの要求に、パコスは一瞬だけ戸惑いながらも了承した。かなり屈辱的な罰ゲームだ。

 ヴァインの自信に不信感を抱きつつも、周囲を取り巻く観衆の手前、拒否するわけにはいかないのだろう。

 そしてパコスの二回目。

 轟音と共に表示された記録、四百十二キロ。合計九百六十二キロ。

 歴然とした差に満足しつつ、勝ち誇るパコスを冷ややかな目で見つめながら、ため息。

「自分の勝ちを確信して油断したな。千と三十一キロを超えれば負けなかったのに……」

 がっかりしたように芝居がかった仕草で頭を抱える。

 周囲の観客からはブーイングが飛ぶが、アキラとリーディアは平然とそれを聞いていた。

 もちろん、ヴァインが勝つと確信した上での余裕だ。

「アキラ、リーディア。今のうちにカメラ買って来い、こいつの恥ずかしいお母さん映像を録画するぞ」

 パコスに視線を向けながら、財布を放り投げて渡し、買い物を頼む。

 さぞかし屈辱だろう。わかった上でやっているのだから、それぐらいの効果が無くては困る。

 二人は買い物を了承し、嬉しそうに店を出て行った。

「おいおい、女だけでも逃がそうって腹か? せめて財布だけでもおいて……」

 ニヤニヤとあざ笑うパコスのセリフが途切れる。

 ジャケットのボタンを止めていたので見えなかったのだろうが、青い魔石、エスクリオスを見ての反応だ。

「魔石開放……してもいいんだよな?」

 仮に開放なしでも問題ないが、パコスのアピールを見て、自分もやってみたくなった。

 パコスよりも目立って、初めて満足が得られる。点数も歓声も、全ての面でパコスを上回って、そこで真の勝利が手に入る。

「魔石開放、エスクリオス!」

 開放、エンジェルフォームで翼をアピール。

 わざわざ青く光る翼に包まれ、一気に広げる。舞い散る魔力片を羽へと変化させているので注目度は抜群だ。

 ゆっくりと歩を進め、マシンに近づき、固まるパコスの肩をポンッと叩き一言。

「残念だったな」

 と、吐き捨て、一瞬で拳に魔力を込める。

「手加減しなきゃ、機械が壊れちまうな……っと」

 余裕の笑みを浮かべながらパンチ。

 音の壁を突き破る光速の突きが奏でる音は無音。

記録、最高値の九百九十九キロ。

 合計値を算出するまでも無い、ヴァインの勝ちだ。

 観客もパコスも目が点になっている。

 機械の音だけが、虚しく店内に響いた。

「買ってきたッス!」

 タイミングよく、アキラ帰還。

 パコスの肩に手を乗せ、満面の笑みを浮かべるヴァイン――

「さぁ、行こうか。俺が女を選んでやる、存分に甘えるがいい」

 ――外に連れ出し、女をチョイス。

 どれもレベルが高い女性ばかりで、最後の方には半泣きになるパコス。

 止めとばかりに『十人じゃ少なかったな』と呟き、外部メモリにコピーしたパコスの罰ゲーム映像を記念に進呈。

 パコスは泣きながらどこかへと走り去ってしまった。

 もちろん、アキラとリーディアは終始、大爆笑していた。

「この映像、姉貴たちにも見せるッス」

 足元に魔法陣。二人は笑顔で消えていった。

 レイラとシオンのリアクションを後で尋ねなければいけないな。

 そして最後のリネス。


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