レイラ・ヴェルシオン
「ようやく俺の出番だ! 行くぞ、ヴァイン」
先ほどまでの雰囲気はどこへやら。腕を組み、ラフな格好の少女が仁王立ちしていた。
手を引かれ、茶屋から服屋へと強制的に連行される。
ヴァインの意見や要望を聞くつもりは全くないようで、嬉しそうに服を物色するレイラ。
「なぁ、これなんてどうだ?」
余程機嫌がいいのか、笑顔のレイラが選んだ服を持ってヴァインに。
眉間にしわを寄せていないレイラを見るのは初めてだ――断言できる。
そう言って見せてきた服は、純白のワンピース。フリルがかわいらしさを主張するように備えられている。
「ふむ……これの方が似合うと思うぞ」
鋲付の皮ジャン。
冗談抜きに似合いそうだが、眉間にしわが復活した。お気に召さないらしい。
「今の季節じゃ、その服は寒いだろう?」
「夏に着るんだよ。みんなで山に行こうぜ」
「夏か……山もいいが海もいいだろうな。みんなで行くと、賑やかで楽しそうだな」
それまでに身体が成長することを心から祈る。このままではあまりに不便だ。
改めて、頭の先からつま先までを観察してみるが、身長百四十程度の幼女体型、この体で、ヴァインの身長よりも長い、棒の先にドラム缶が装着されたようなハンマーを振り回すのだから信じられない。あの膂力はどこからくるのだろうか。
「なんだよ……なにジロジロ見てるんだよ」
頬を染めて胸元を隠すレイラ。
残念ながら、無いものを隠されても意味がないし、コメントし辛い。
「いや、最近成長したな……って思っただけだ、深い意味はない」
三年前に比べれば、成長しただろう。
ツンツンからツンデレにきちんと成長している感がある。
顔を真っ赤にしながらもじもじするレイラ。
その様子を微笑ましく見る店員。
ヒソヒソ声で、兄妹がどうとか言っているが聞こえないふりをしておく。
幸いレイラには聞こえていないようだ。
「それじゃあ約束だ。絶対夏には海に行くぞ。指きり……」
そこへ、ちょうど通信が入る。
舌打ちし、忌々しげに足元の魔法陣を睨む。
「ちっ、仕事残してきたのがリアンにばれたか……贅沢はいわねぇ。また絶対どこかに行こうな!」
そう言って、魔法陣の中へ消えていく。
レイラは散々楽しんだようだが、ヴァインはなぜか疲れた。次は誰が――
「ようやく出番ッスね」
「ずいぶん待たされましたね」
――アキラとリーディアの二人が来た。
どうでもいいが、こいつらは本当に仕事をしているのだろうか。