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スリースターズ  作者: カミハル
新人と復習、あれから三年
18/51

再戦開始

 

一週間後――

 万全の態勢で、訓練所内に入ると、すでにヴァインがベンチに座って待機していた。

 気配も殺さず、近づき、挨拶の言葉を投げかける。リネスとしてはこのまま後ろから攻撃を仕掛け、先手を打ちたいが自制。

「おはようございます、ヴァイン総隊長。本日は無礼な事を多々するかと思いますがよろしくお願いします」

 敵意に満ち溢れた挨拶。ここまで挑発的な挨拶を受ければ何らかの反応をするだろう。精神的な駆け引き。勝負はすでに始まっているのだ。

 ゆっくりとこちらを振り向くヴァイン。

 こちらの挑発にのってくるであろうと予想していたリネスの思惑を完全に無視し、復讐心に燃えるリネスもさすがに引く顔をしていた。

「よぉリネス……あのチビ女、大量のデスクワーク寄越しやがって……一週間頑張ったが未だに終わりゃしねぇよ、チクショウ」

「ちょ……ちょっとあんた! 真面目に勝負する気があるの? なんで試験前にそんな体調で挑んでくるのよ!」

 レイラの仕事が回ってきたため、徹夜明けで目の下にクマができている。

 さすがに我慢できなかった。

 やる気の有無に疑問を抱き、心底腹が立った。

「バカヤロウ、仕事を終わらせなきゃ再試験すらできないんだぞ。少しは褒めてくれ、そしてレイラを連れて来い、気が済むまで両腕に万力込めてぶん殴ってやる」

 そんなやり取りをしていると、レイラとシオン、アキラとリーディアが到着。

 セラスはヴァインの調べ物のため来ることができない。リアンはティナと仕事があるため来ることができない。

「ちっ……あのチビぶん殴りたいがとりあえず後回しだ。役者が揃ったところで、そろそろ始めるか。シミュレーターの条件はリネス、お前が決めろ。シオン、操作はお前がやってやれ。俺は先に待機しているから、準備が整ったらアキラ、リーディア、リネス、三人入って来い、いい機会だから三人同時に相手してやるよ。どうせレイラにチーム戦を想定して仕込まれたんだろ?」

 そう言って、魔法陣へと向かう。

 その足取りはふらふらで、とてもこれから戦う者の足取りとは到底思えなかったが、頭の回転だけは平常運転のようだ。リネス一人ではヴァインに勝つのは不可能とみて、三人がかりでのチーム戦をレイラが仕込んでいるであろう事も想定していたようだ。

 シオンがパネルを操作している間にレイラが三人を集める。

「やっぱりばれていたが……まあ予定通りだ。さて、お前ら二人はヴァインと戦うこともそうだが、あいつ自身が戦うのを見るのも初めてだったな。アキラ、死ぬ気でかかれ、負けたら俺が止めを刺してやる。リーディア、あいつの実力を肌で感じてきな。そしてリネス、一週間の訓練は厳しかったろ? その成果をあいつにぶつけてやれ」

『はい!』

 三人同時に声を合わせ、元気よく返事し、シミュレーション内に入る。

 ステージは山中。ヴァインは木にもたれかかるようにうな垂れていた。かなり眠そうだ。

「あれで三人がかりなら大丈夫ッス」

「そうですわね、あそこまでフラフラの相手に負けたらそれこそ恥ですわよね」

 アキラとリーディアが楽観的な雰囲気を漂わす中、リネスだけは気を抜かず、ヴァインを見据えていた。

 緩んだ空気を読み取ったのだろう、ヴァインが小さく舌打ちし、呟いたのをリネスは聞き逃さなかった。

「ふぅ、ずいぶんと舐められたもんだな……どれ、気合でも入れてやるか」

 徐々にヴァインから漏れる魔力が大きくなる。それを察知したのはリネスだけ。残りの二人は遠足気分で未だにはしゃいでいた。

「二人とも! 油断しないで!」

 リネスが叱咤するが、その必要はないとばかりに、ヴァインが不敵な笑みを浮かべた。

「魔石開放、エスクリオス!」

 胸元が開いた黒いシャツと黒皮のズボン。皮のベルトが装着され、青い柄が白を際立たせるように申し訳程度に装飾されている白のロングコートがヴァインの魔力に呼応するようにはためく。

 背中の翼を大きく広げ、発現時と発動時に消費する魔力を青く輝く羽で表示する調整は、つい最近、自ら調整したものらしい。本人は派手で結構気に入っていると、レイラに聞いた。

 それを見て、気を引き締める三人。

「魔石開放、カイザー・インパクト!」

 アキラの魔石開放。ヴァインと違い、アキラは皮グローブを両手に装備し、魔石は右手の甲にはめ込まれている。

 青い短パンと黒いシャツに白のショートジャケット。三年前、姉のレイラが身に纏っていた訓練着と同じタイプだ。

「魔石開放、カゲロウ!」

 リーディアも次いで魔石開放。いつものドレスに魔力を帯びた緑の紋章と、それに呼応する光が追加される程度の変化で、武器もないが、一週間の訓練でリーディアの魔石が希少魔石であるとレイラに教えられた。これ以上に頼りになる仲間はそうそういないだろう。

 それを見て、リネスも魔石を開放する。

「魔石開放、レイダー・ガングレイブ!」

 アキラと同じ魔装法衣。レイラが今日のために調整してくれた。武器は両手に持った銃。一週間前は、ろくに使う間もなく倒されたが――

「あの日の借り、今日は必ず返すわよ!」

 三人の体勢が整うと同時、ヴァインの魔力が膨れ上がり、三人を威圧する。

 しかし、これに圧されては勝負にならない。

 アキラとリーディアに視線だけで合図し、それぞれの役割を果たすために移動する。

 リネスは後衛、アキラとリーディアは前衛の役割を任されている。


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