表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/46

キムン・カムイと穢れ無き魂


山が揺れ、悲鳴を上げる。

あちこちから絶望と怨嗟の声が響き、沢山の血が流れる。


山は死に包まれた

沢山の命が荒ぶる神によって刈り取られていく

もはや、この山はこれまで


オカアサン


誰?


オトウサン


貴方は誰?




『これはなんと……』


黒い毛皮を持った優しき神が驚愕に満ちた声で呟く。

小さな小さな魂を喰らおうとした魔は、気高き聖なる山の神――キムン・カムイによって倒された。

そうして助け出した魂に、彼は茫然とする。


オトウサン


オカアサン


キンム・カムイの瞳から涙がこぼれる。


『貴方は……貴方様は……』


アナタハダアレ?


『私はキムン・カムイ。この山の神の一人』


そして


『貴方様の父君に仕えるものですよ』


キムン・カムイは、無事に生まれてくれば自分が仕えし存在に頭を垂れた。

その時、体に負った傷から血が噴き出す。


ケガシテル


『これは……』


山貴神を……緑葉を救おうとしたこの山の神々は既に九割方滅ぼされ、後は命からがら逃げ延びた者達だけである。

そして自分も……体中に負った傷で、もはや瀕死に近かった。


もはやこれまで……そう思っていた。

この傷ではこれ以上生きられない。

主の無実を晴らすことが出来なかった。

悲しみに全身を掻き毟りたいほどの悔恨に苛まれた。


そんな時だ。

小さな小さな魂を追いかける魔を見つけたのは。


必死に逃げる小さな魂を、魔は追いかけていた。

その余りに美しい光に、気づけば最後の力を振り絞り魔を倒した。


一見すれば自分の寿命を縮めるだけの愚かな行為。


だが、それは正解だった。


なぜなら、その魂はあの方の血を引く若君の魂だったから


触れてみて、すぐにわかった


『そうですか……大根様は……』


あの方は身籠もっていられたのですね……


それを知らずに下界に降り、静かに暮らそうとしていたにも関わらず、緑葉様の新たな正妃によって殺された。


身籠もっていた子どもと共に……


オオネ?


『貴方様の母君の名です。そして……父君は緑葉様と仰られます』


だが……若君が自分の子と会うことはないだろう


あの方は狂ってしまった


完全に


大根様が殺された時の全てを報され、あの方はギリギリの所で保っていた理性の全てを叩き切った


もはやあの方を止められるものはいない


もしかしたら、若君なら止められるかもしれないと思うも、すぐにその考えを打ち消す。

若君の魂はあまりにも弱く、今にも消えそうになっている。


荒ぶる神となり全てを殺し尽くす今の山貴神に近づけば、即座に消滅してしまうだろう。


ならば……たとえ消滅するとしても、その瞬間まで自分が守らなければ


キムン・カムイは、その小さな小さな魂を胸に抱く。

既に自分は出血しすぎで体に力は入らないが、それでもその小さな魂を守ろうと決める。


この方の両親は守れなかった


せめて、この方だけでも守ろう


願わくば、この方の消えゆく運命と自分の運命を取り替えてでも良い


誰か


キムン・カムイは願う


神でありながら、彼は人と同じように神に願った


それからどれほどの時間が過ぎただろうか?


気づけば、山は静まりかえっていた。

あれほど山全体を覆い尽くしていた絶望と怒りは消え、空は美しい星空がどこまでも広がっていた。


「やっとおきたの~?」


心配そうに自分を見つめるのは、小さな女の子だった。

紺碧色の髪とオッドアイの瞳を持つ美しい幼女。


一目見て、キムン・カムイはその美しさに……内面から溢れる美しさに魅入られた。


「くまさん、だいじょうぶ?」

『貴方は……』


その美しき汚れない魂が見える。

彼女は自分達と同じ神だ。

だが、神の中でもこれほどの美しさは希である。


「くまさん、もうからだはいたくない?」

『体?』


そこでハッと我が身をみれば、あれほど傷だらけだった体にはなんの傷もなかった。


『これは……っ!若君っ』


ここで初めて、キムン・カムイはあの小さな魂を思い出す。


あの方は……あの方は一体どうなったのか?!


「こっちだよ」


少女とは違う青年の声に顔を上げれば、少し離れた場所に立つ一人の青年が居た。


美しい――


その美しさに、キムン・カムイは声もなく見とれた。


「そのこ、だいじょうぶですか?れんりさま」

「ああ、何とか大丈夫。とりあえず消滅はしないよ」

「よかった~」

『あ、あの、いったい……』


一体どうなっているのか?


キムン・カムイの疑問にれんりと呼ばれた青年が答えた。


「まあ、簡単に説明すると……」


つまりこういう事らしい。

たまたま近くを通りかかった青年と幼女がこの山の異変に気づいたという。

それで駆けつけてみれば、自分達が倒れており、しかも若君は消滅しかかっていたため、すぐに処置を施したのだと。


『そうですか……ありがとうございます』


が、そこでもう一つ気にかかる事があった。


『や、山は……山貴神様は』

「ああ、前の山貴神なら封印されたよ」


封印された……


キムン・カムイが苦悶の声をあげる。

だが、それはある意味予想していた事だ。

彼はそれだけの事をしてしまったのだから。


「で、今は前の山貴神の義理の弟が現在の山貴神となってる」


その言葉に、キムン・カムイは怒りを覚えた。

山貴神が本来受けるべき愛情を全て受けた義理の弟。

キムン・カムイは知っていた。

山貴神が両親から愛を受けられず苦しんでいたことを。

それを、苦もなく手に入れた弟。


「その弟が必死に懇願して、封印程度の処罰ですんだんだけどね」

『っ?!』

「弟はね、兄を助けたかったんだよ。でも、助けられなくて……本当は、この山は『なかった』事にされる筈だったんだ。意味分る?文字通り消滅させるんだ」


臭い物には蓋というように、この山の存在を消そうとした上層部。


「でも、弟はそれを阻止した。なんとしてでも、この山を残すって。いつか罪が許されて戻る兄を……兄が愛した人が生まれ変わるのを待つって。その弟ね~、兄に助けられた事があるんだってさ」

『え?』

「本当は殺したいぐらい憎んでる筈なのに、弟の自分が死にかけた時に、兄が助けてくれたって。本当は優しい人だから……弟は自分で調べてたらしいよ。今回の真相を……本当に、馬鹿みたいに優しいよね」


キムン・カムイに言葉はなかった。


「山貴神が封印されてから……一月ほど経ったかなぁ?上層部から命からがら逃げた神々の殆どは、弟が助けた。後は君達だけだよ」

『我らだけ……』

「弟を助けてあげてほしい。まだまだあいつの足を引っ張る馬鹿も大石ね。それに……山貴神という地位は、いつか兄に全てを戻すまでの中継ぎ――なんていう根性では到底支えきれない。だから……君のような人が必要なんだ」

『……わかりました』


気づけばそんな言葉がポロリと出てた。


『我の名はキムン・カムイ。貴方様の名は?』

「うん?僕の名は蓮理。これでも冥界の皇子なんだよ~」

『ええ?!』

「あ、といっても今の時代のじゃないけど。時空流で飛ばされてきただけだから」


はい?と声を上げれば、蓮理皇子はケラケラと笑っている。

その横では、幼女がにこにこと笑っていた。


「んで、この子もこの時代の子じゃないよ~。同じく別の時代から飛ばされてきたんだ」

「わたしは、そうれいっていいます」


ペコリとお辞儀する彼女に、キムン・カムイはつられて頭を下げた。


「さてと、君はこれでいいとして……問題はこの子だね」

『若君っ!』

「悲しき運命によって生まれる前に死した汚れ無き魂。このままここにいれば、じきに負の念を吸い続けて堕ちてしまうだろう。だから……冥界に行きなさい」


そこで魂を休め、次の転生を待つようにと蓮理皇子は言う。


「大丈夫……きっとすぐに生まれ変わるよ」


そう言って、その魂を導こうとした時だった。


カミサマオネガイ


それは小さな小さな魂から聞こえてきた。


ボクハマダココニイタイ


『若君?!』

「…………」


オトウサン……オカアサン……タスケタインダ


だから此処に居たいと必死に叫ぶ小さな魂に、蓮理は厳しい眼差しを送る。


「気持ちはわかるけど……それは無理だよ。君みたいに汚れない魂はここにいるだけで負の気を吸い続ける」


ソレデモタスケタイ


タスケタインダ


オネガイココニイサセテ


「……君が此処に残っても出来る事はないのに?」


父は狂い封印されてなお怨嗟の声を上げ続け、母の魂は行方不明だ。


「冥界で待つという事も出来るよ?」


しかし、小さな魂は言う。


オネガイ


ボクハナニモデキナカッタ


オカアサンガシヌトキモ


オトウサンガクルッタトキモ


小さな魂は泣いていた


助けられなかった後悔に


見ているだけしかできなかった無力さに


タスケタイ


オネガイ


オネガイ


オネガイシマス


必死に願い、小さな魂は泣きながら懇願する。

淡い光の中で、泣いている姿が見えるかのようだった。


オネガイ


オネガイ


オネガイ


だが……蓮理は首を横に振った。


「無理だよ」


ドオシテ


両親を助けたい


血を吐くような叫びで小さな魂は叫ぶ


オトウサントオカアサンヲタスケタイ


「……それでも……無理なんだ」


蓮理は言う。

生まれる前に散った命。

それゆえに、その美しさは魔物さえ虜にするほどの清らかさを持っている。

そんな魂を守るべき器もない状態で此処に留まれば、あっという間に魔物に喰い殺されてしまうと。


ウツワ


「そう……でも、君の器はもうない……それは分ってるよね?」


ウン


器がない。

となると、代わりの器が必要となる。


『ならば我の体を使って下さい』

「くまさん?!」

「あんたね……」

『所詮一度は死にかかった身です。今更惜しくない命。どうか、若君に』


ヤダ


『わ、若君?!』


ダメ、イラナイ


『我の体では不満ですか?!』

「ちがうよ、くまさん」


蒼麗が首をぶんぶんと横に振る。


「くまさんをぎせいにしたくないってことだよ」

『え?』


驚いてキムン・カムイが小さな魂を見れば、頷くように小さく揺れる。


ヒトノカラダイラナイ


ダレカヲギセイニシタクナイ


オトウサントオカアサンノタイセツナヒトナラトウゼン


『若君……』

「それでどうやって残るつもりなの?」


蓮理は厳しい口調で言った。


ソレハ


「器がなければ残る事は出来ない。でも、他人の体はいらない。なら、残る事は無理だよ」


蓮理の言うとおりだった。

小さな魂が項垂れるように光を弱める。


助けたい


助けたい


そう思っているのに、此処に残る事さえ出来ない


その辛さは、蓮理にも分かっていた。

出来る事ならば何とかしてやりたいという思いが、その瞳に現れている。


どうすればいいのだろう


誰もがそう思った時だった。


「これはうつわにできないんですか?」


蒼麗がポケットから何かを取り出す。


それは


一輪の破魔大根


「破魔大根!……まだ残ってたのか?!」


全て緑葉に焼き尽くされた筈なのに


「あのね~、とってもきれいだったから……」


一輪摘んできてしまったと、蒼麗が笑った。

そして、はいっと蓮理に渡す。


『破魔大根……』

「ふむ……まあ、強い力は宿してるな」


これならいけるかもしれない――と、蓮理は破魔大根に宿る力を調べる。


「まあ……何とかなるか。但し……色々と誓約があるが」


セイヤク?


「そう……破魔大根の中に宿る力は確かに強い。けれど、この中の力を使っても、君をこの場に留める事しか出来ない」

『つまり……どういう事ですか?』

「この破魔大根を器とすれば、君はこの世に存在できる。しかも、魂の時とは違い、この世にある物に触れることが出


来れば、他の者達にその存在を認知して貰うことも出来る。まあ……強い力を持った幽霊のようなものだな」

『なんだか……わかったような……わからないような……』

「けど、それだけだ。存在し動き回る事は出来る。けれど、それ以上の力はない。神としての力を使う事なんてほぼ不可能。ただ、動き回る事しか出来ない――簡単に言えば、ただの人間と同じと言うことだ――まあ、破魔大根の力が尽きない限り死ぬことはないけど」

『な、なんですって?!』


神としての力が使えない?


蓮理は小さな魂を見つめた。


「それに、この山から出ることは出来ない。なぜなら、この破魔大根は君の父上が憎んでも憎み足りないものだからだ」

『それは……』

「彼は破魔大根を一本残らず根絶やしにしたい。大切な女性を犠牲にして咲いた花など全て滅ぼしてしまいたいと。その思いが強すぎて、破魔大根を外に持ち出すことは不可能だ。つまり、それを器にすれば、君もこの山に囚われる」

『そんな……』

「君がとるべき選択枝は二つ。一つは、破魔大根を器にしない事。ただし、これ以外に今のところ君の器になるものはないから、この場合は強制的に冥界行きだね。で、もう一つの選択肢は、破魔大根を器にする事。この場合は、君は器を得る事が出来るうえに、その姿も他者から認知して貰えるし自由に動きまわれるが、その行動範囲はこの山の中だけ。しかも、動き回るし他の存在と話が出来る以外は何も出来ない、そのうえ……」


蓮理は悲しそうに呟いた。


「破魔大根の力が尽きれば、君の魂は強制的に冥界に送られる」

『っ……』

「あと、もう一つ。さっき力が使えないと言ったけど、それはね、君の魂があまりにも強すぎて、この一輪の破魔大根だけでは受け止めきれないから、器に残す魂は半分だけにしなければならないからなんだ」


エ?


「魂そのままを器に残せるとすれば、ある程度は力を使える。でも、それは無理だ。それにはあまりにも、君の魂は純粋すぎる。かといって、他の器を用意するには……もう時間がない」


既にこの山には、小さな魂の器になるだけのものがない。

それに、蓮理も何も持っていない。

いや、持っていたとしても……逆に器が固すぎてこの魂を傷つけてしまうかもしれない。

それほど、この小さな魂はあまりにも汚れなさすぎた。


タマシイヲハンブン


「そう……半分だけなら、器に宿してここに留まれる。でも、何も出来ない。出来て……ただ見ているしか出来ない」

『あの……半分はここに留まれるとして、もう半分は』

「冥界に行くよ。そこで、次の転生を待つ」

『そ、そんな事が可能なのですか?!』

「まあ、特殊な例だね。けど……出来るならばいますぐ魂を半分になど分けずに冥界に送りたいんだ。一応、手当はしたけど……実際には消滅寸前なのは今も同じだからね。冥界の奥深くでゆっくりと休ませてあげたい……だから、転生自体はもっと後になるけど……」

『はやくなる事もあるのですか?』

「まあね。ただ、その時にもきちんと糸は繋がってるから、転生した半分のところにいつでも行って一つに戻る事は可能だよ」


ただし、出来るならば魂を半分になど分けずにいて欲しい


だが……


オネガイシマス


『若君?!』


ハンブンダケデモイイ


ナニモデキナカッタトシテモ


ナンノチカラガナカッタトシテモ


ボクハマチタイ


イツノヒカ……オトウサントオカアサン……ソシテ


コノヤマニトラワレタヒトタチガ……カイホウサレルマデ


『若君……』


タトエナニモデキナカッタトシテモ


マツコトハデキルヨネ


ダカラ……ココデマチタイ


「……待つ……か……それは君が思うよりもずっと苦しい事だよ?何も出来ず、ただ見守る事しか出来ない」


それが、破魔大根の力が尽きるまでずっと続くのだ


「いつか、今日のことを後悔するかもしれない」


ソレデモ


マチタイ


ソレニモシカシタラカワルカモシレナイ


「え?」


イマハダメデモ


イツカマツダケデナクタスケラレルカモシレナイ


ソレガイツノヒカワカラナイケド


アキラメナイ


ズット


ズット


アキラメナイ


「……君は……」


もうそれ以上言葉はなかった。


「わかったよ……君を此処に留まれるようにしよう」


それが、自分に出来る唯一の事だから


アリガトウ


「君は凄いね」


蓮理はクスクスと笑う。


「出来れば……生きている君と出会いたかったよ……」


それはもはや言ってもどうしようもない事。


「キムン・カムイだっけ?」

『は、はい』

「この子を守ってあげてね。いくら器が出来たとはいえ、力はないに等しいから」


そう言うと、蓮理は自分の首にさげていた水晶を破魔大根に重ねる。

すると、水晶が淡い光となり破魔大根へと吸い込まれていった。


「これで……少しはもつだろう」


そして小さな魂を手招きする。


さあ――おいで……


果那は見ていた


その全てを


小さな魂が二つに分けられ、その一つは蓮理の手に、一つは破魔大根へと吸い込まれていく


魂を抱いた破魔大根は光り輝き、その姿は小さな小さな赤ん坊となる


それは、キムン・カムイの手に渡された


「その子がどのように変わるかは……その子自身のがんばりだよ」


蓮理が去り、蒼麗が去り


キムン・カムイは託された赤子を大切に育てた


全ての事情を知った山貴神の加護のもとに


赤子はすくすくと成長した


本来ならば成長する筈のない身


けれど、父を、母を、この山に囚われる者達を救いたいと願う心が、彼を成長させた


赤子から幼児に、幼児から少年に、そして青年へと成長した彼


彼は山を自由に歩き回ることが出来た


山に入る人間達と言葉を交わすことも出来た


でも……それだけ


彼は父が封印された場所に赴き言葉をかけ


母の魂を探して彷徨う


でも……それだけ


怨嗟の声を上げ続ける父は決して耳を傾けず


母の姿はない


そして……父に仕え殺された者達の姿み見つける事は出来なかった


何度も絶望が支配しそうになりながら


彼は必死に自分を奮い立たせる


そんな中、彼は自分の器となった破魔大根を育てた


それは父が焼き尽くしたにも関わらず、生き残っていた数輪の破魔大根


そこに残る力から、蒼麗が助けたのだと気づいた


それらを大切に保護し、育て、新たに得た種を再び山へと蒔いて


順調に破魔大根を増やしていく


群生していく破魔大根に、青年は顔を見る事なく逝った母を思い出す


そうして……永い時が過ぎていった


青年になって、彼の姿は時を止めた


青年のままの姿で、彼は永い時を過ごした


そうして、いつしか山は開けて多くの人間達が来るようになった


山頂――もともと前山貴神の宮があった場所には沢山の建物が作られていった


それに伴い、山貴神は人間に混じり生活するようになり、彼に仕える者達も皆、人間に混じって生活を始めた


そんな中、両親の解放を待ち続ける彼は山貴神に誘われ、植物園を任される


そこは山貴神が創り出した、彼の為の揺りかご


いつか目覚めるかもしれない緑葉から、彼を守る最後の砦


山貴神は気づいていた


永い時を待ち続けてきた彼に……限界が近づいていることを


永い時の中、一度消えかけもした


それでも何とか生き延びた彼を守りたい


いつか両親に再会できる日まで


それに感謝しつつ、彼はそこで待ち続ける


そうして彼は……植物園の職員として残された僅かな日々を過ごしてきたのだった



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ