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最後の灯火

作者: 結城陸空

久々の企画参加作品です。読んでいただけると、吠えて鳴きます。


 ――孤独。


 ボクは生まれた時から、孤独だ。誰にも触れられず、誰にも触れない。ただ、ひたすらに永遠とも思える漆黒の闇を進む。そして、その存在は誰の目に触れることも無く、誰にも気が付かれる事はない。ボクが背負っている運命とはなんなのだろうか。どれほど悲しくても、どれほど楽しくても、それを誰かと一緒に分かち合うことは決してない。自分の運命から逃げたいと思っても、それは決して許されない。


 ――ボクに生まれてきた意味があるのなら、それを知りたいとボクは願う。


 でも、その願いは叶うことは無い。なぜなら誰もそれを教えてはくれないから。自分で見出すことでしか、答えは分からないものだけれど、それでもひとつ、ひとつの可能性を捨てずに模索していきたい。それでもボクの心は、ボクにしか分からず、ボクの生き方はボクにしか決められない。それに対して誰かが手を差し伸べてくれるわけも無く、逆に誰かが邪魔することも決して無い。


 ひょっとしたら、意味に答えなんてないのかも知れない。物事には全て意味があると思っていたけど、答えがあるとは限らない。でも、どんな些細でちっぽけなことでも、それが一番大切なことであることだって、あると思う。


 ずっと、一人で歩んできたこの道は、寂しさも、楽しさもなにも持っていない。さまざまな感情が入り混じることもなく、まるでロボットのようにただ、進むだけ。ボクと、同じ寂しさを持つモノがいるとも限らない。ボクは唯一無二の存在で、ボクだけが孤独を味わっているのかも知れない。


 でも、だからと言ってボクはそれを悲観的に考えることは無い。


 孤独とは、案外そういうものなのかも知れない。誰かのぬくもりを知るから、孤独が怖くなる。誰かの優しさを知るから、孤独が怖くなる。一度でも、触れることを知ってしまったら、それはまるで麻薬のように自身を蝕みそして、それをひたすらに求めてしまう。


 それならはじめからそれを知らなければいい。そうすれば、孤独は当たり前で、決して恐れることのないモノになるのだから。


 そんなことは生まれた時から孤独なボクは、分かっているハズなのに。それなのに、ボクは思ってしまう。


 ――ボクは孤独だと。


 ボクは孤独だという考えを持つこと自体。孤独を恐れているということ、孤独ではないなにかを知っているということ。そういう迷いや不安でさえ、それが正しいモノなのかどうか分からない。ましてや、それは本能的なものなのかも知れない。ボクが生み出した、偽者のコトなのかも知れない。生まれてから一度も触れたことの無いボクは、孤独以外の何も感じたことはない。


 それなのに、孤独を恐れ、自分の生まれてきた意味を求める。


 それはなぜか、原因は分かっているのかも知れない。どこまでも永遠に続く漆黒の闇の中、”光”が見えている。まるで、ボクに差し伸べれた手のように、それは気が付けばそこにあった。ボクは不思議だった。今まで誰も、ボクに触れようとしなかったし、触れることすら出来なかった。でも、その光は確実にボクを捕らえ、そして導いていた。ボクも勇気を出し、その差し伸べれた手を掴む。


 ボクはその光に吸い込まれるように、闇を突き進む。その光は希望という名の光なのか。ボクに生きる意味を与えてくれる光かも知れない。そんな淡い希望を持ってしまったのも、仕方が無いことなのかも知れない。それほど、その光は今までボクが知ることがないほどの、大きな光なのだ。この世にこんな光があること自体ボクの常識を逸していた。


 その光に近づけば、近づくほどに、その光は大きくなる。それと同時に、ボクの身体は熱くなる。これが触れるということなのか。触れ合うことで、温かみを知り、その偉大さを知る。なんの抵抗もなく、何者も拒むことなく、全てを受け止めるこの光は、寂しさや孤独を取り除き、逆に希望を与えているかのようだった。


 その光は、ボクよりも遥かに大きく、ボクの全身を大きく、そして温かいもので包み込む。包み込まれたボクの身体は赤みを増し、そして――知る。


 ボクの生まれてきた意味は、ここにあった。


 ボクを大きな光で包み込むそれは、何よりも大きく、偉大で、そこに存在する全てのものを包み込んでいた。ボクは知った。孤独で生まれてきた意味を。孤独は悲観するものでもなく、それが当たり前だと思うものでもない。ましてや、絶望ではない。


 孤独を知ることで、孤独以外のそれを知った時、その喜びはとてつもないモノになる。ずっと漆黒の闇を進んできた。でもそれは決して無駄ではなかった。ボクの身体は崩壊していくけど、そこに光がボクを導いた意味を見出した。



 だってボクは今、孤独以外を知り、そして生まれてきた意味も知った。ボクが求めていたのは、このぬくもりだった。直接的な温かみではない。心から満たされるこの強くて大きなぬくもり。ボクは達成し、楽しさや悲しみ、多くの感情を共有する。命が尽きるのではない。それは新しいものを生むのだ。


 ボクを見るために、みんながボクを見上げる。ボクは、この瞬間生まれてきた意味を果たした。悔いも無く、迷いや不安もない。ボクははっきり言える。ボクは生まれて初めて、笑うことをを知った。生まれて初めて、共有した。生まれて初めて、悲しみを知った。そして、この大きな光の一部となり、触れ合い、温かみを知り、孤独ではなくなった。


 ありとあらゆる感情、正の感情も、負の感情も、全ての感情がボクに集められる。ボクの孤独だった世界は、孤独ではないことを知り、世界中がボクを見ることでボクの心は満たされた。誰にでも生まれてきた意味はあるんだと実感した。


 誰にもその存在を知られることがなかったボクは今、誰よりも生まれてきた意味を実感している。ボクは、生まれてきて良かったと思った。この世に生まれていなければ、孤独を感じることもなかったけど、それ以上の喜びを知ることもなかった。


 そして様々な感情と共に、この命に最後の火を灯した。




「あ、流れ星っ!」


  


                        了


ちょっと分かりにくいかも知れないので簡単に補足すると、


『宇宙を漂う隕石が、地球の大気に触れて流れ星となる話』です。

ジャンルがわかんなかったです。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。 遅くなりましたが拝読しました。 自分が指摘しようと思ったことは他の皆さんが感想に書かれているので置いといて。 いや~、すごくロマンチックですね! 途中からいくつか落ちが思い浮か…
[一言] 読ませていただいたので感想を。 否が応でも考えされられる、非常にメッセージ性の強い作品でした。 人間と流れ星の対比が見事です。 ただ、着眼点は素晴らしいのですが、5分は長すぎる気がしました…
[一言] はじめまして。読ませて頂きました。 せつせつと綴られる詩だなーと思っていましたが、なるほどビックリのラストで、予想だにしませんでした。 詩の部分が心情の吐露のみで語られているので、ときに…
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