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 政府のホームページにはマスコットキャラクターと共に親免許制度に関する説明が大々的に載せられている。若い世代へ積極的に関心を持ってもらおうと「親免許制度について学ぼう!」と丸いオレンジの太文字で書かれた部分には、キャラクターの横に吹き出しを作り、詳しい説明がされていた。


「毎年のように子どもの虐待が増えています! どうしてですか?」

「その背景にあるのは、ズバリ負の連鎖が起きてしまうから。劣悪な家庭環境で育ってしまった子どもは、自分の子どもに虐待してしまうことが多いのです」

「なるほど」

「それだけじゃなくて経済的な理由だったり、誰にも相談できず1人で抱え込んでしまい最悪な自体に陥ってしまうケースも……」

「だから親免許が必要なんですね!」

「はい! 結婚する時も出産する時も、免許があればみんなが安心できる。目標は虐待や犯罪をなくすことです。国民の8割がこの制度に大きな期待を寄せていると回答しました」


 夕日向はこのホームページを読んだ時、制度を支持している人の多さに目を見張った。また、この数字は免許を取れないでいる自分に対して、厳しい現実を突きつけられているような感覚さえした。だからなのか、彼女としては断固反対の気持ちが強くある。親になる前になぜ国の許可が必要なのだろうか。結婚するタイミングも子供を授かるかどうかも、個人間で決めればいいと。そに対してしかし、七江は親免許制度に対して寛容だった。なぜなら彼女は元夫、つまり夕日向の父と離婚する羽目になったからだ。彼はアルコール依存症で酒に酔うと暴力や暴言を振るうといったDVを日常的に繰り返していた。


「親免許制度があったら、絶対あの男とは結婚していなかった」


 ある日の朝、夕日向が朝食を作っていたところに七江が電話をしながら帰ってきた。熱したフライパンに卵を入れたタイミングと彼女の声がちょうど重なり、はっきりと聞き取れたのは一部だった。いや、本当は聞き取りたくなかった。だから水道の出力を最大にして、洗う必要のない皿を洗った。卵の焦げた臭いが漂うキッチンで、苦い過去が蘇った。

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