表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/13

11

 彼女は聖美に親免許を持つことの利点を熱弁した。強引でお節介な部分はあるが、悪い人ではないと分かっている。免許制度を支持しているのは、彼女のような若い世代が中心なのだ。


「私、親免許制度の導入が決まってから政治に興味持ち始めて。すごくいい政策だと思いませんか? 子ども親も両方救われるなんて」

「そうだね……」


 聖美は適当に相槌を打つ。制服からすらりと生えるきめ細かな肌を持った腕。後ろで一つに束ねた艶やかなストレートヘア。これから人生の最も大事な時期を歩もうとする、彼女の全てが妬ましくなってしまった。


「しかもこれ、養子であっても適用されるんですよ。案外知られていないんですけどね。だから、春野さんもぜひ知っておいてほしいなって。それから」

「ありがとう……。考えておくよ」


 聖美は話を遮った。もういい、分かった。だから、その瑞々しい唇を私に向けないで。これ以上話されると頭が混乱してしまいそうだった。


 笹木は申し訳なさそうに表情を曇らせた。しかし、彼女の口が開く前に、聖美は時計を見て「少し早いけど巡回に行こう」と話を切り上げた。


 養子を迎え入れることについては何度か考えたことがある。聖美には兄弟がおらず、母が旅立った後、もし朋夜に何かあれば彼女は天涯孤独になってしまう。もしそうなれば、何を希望に生きていけばいいのかという不安がある。結婚してあいりを産んだことがついこの間のように思えてくる。最初の頃の子育ては大変だけど、子供はすぐ成長しちゃうから。今のうちに可愛がっておきなよ。母の忠告をしっかり守っておけばよかったと、今になって後悔している。


 二手に分かれそれぞれの部屋を回り、患者の様態を確認する。キュッキュッと、ナースシューズの裏が廊下に擦れる音が響く。


 一人になっている間、聖美は改めて笹木の話を整理した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ