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 訴訟のことで精一杯だった聖美は、頭の片隅に引っかかっていたその言葉の存在を思い出した。あいりを失くした自分たちには関係ないことだと思っていたため、政府から各世帯に配布された冊子をサラッと読んだだけで物置の奥にしまっていた。


「先輩は免許、どうするつもりですか?」

「どうするって?」

「新たに取得するかどうか」

「あれ? 導入前に結婚した夫婦は取らなくていいって言ってなかった?」


 聖美はスマートフォンで親免許について掲載されている公式ホームページを開く。よくある質問の中で、制度導入前に婚姻関係となった夫婦は新たに親免許を取る必要はないと明示されていた。彼女もこの部分ははっきりと覚えていた。ただ、制度開始以降、子どもの出生を希望する場合新たに親免許を取らないと違反になると説明があった。


 聖美や朋夜も、あいりを亡くしてから子どもを産みたいと思っていなかった。再び不妊治療を始めないといけないのと、高齢出産のによるリスクを考慮してのことだった。それらのことを踏まえたうえで、笹木は訊いてきたのだろうか。訝しがる聖美を見て、笹木は慌てて両手を胸の前で振る。


「あ、ごめんなさい。えっと、私が言いたかったのは、養子を迎えてはどうかってことで……」

「え、養子?」


 唐突な単語に聖美はさらに困惑した。


「はい。養子縁組を組むには親免許を持ってないといけないんですよ。先輩は親免許を取るメリットって何がご存知ですか?」

「メリット……。子どもが成人するまで補助金をもらえるってことぐらい……」


 何とか記憶の底から捻り出した。それを聞いて笹木は満足そうに頷き、補足するように続けた。


「補助金も一つのメリットですね。だけど、これだけじゃないんです。二人以上子どもを産めば公立高校の授業料が減額されます。さらに、私達親世代にもいいことがあるんです。親免許を持っていると、六十五歳になってから負担医療費分が安くなったり、一部の交通機関料金が無料になったりと盛りだくさんなんです」

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