北のボスへ 道中、個人行動話
北へ向かって歩いている途中、俺たちは楽しく話しながら歩いていた。
ギルドを出てから、ローズがやけにうずうずしている。
北門を出たところで、ローズが、やっとこの時が来た! みたいなテンションで話題を振ってきた。
「個人行動の時何してたの? 気になるわ!」
なんとなく俺が先に行けみたいな視線をコルドから感じたので、俺から言うことにした。
俺はまず、一言で説明した。
「俺は、まず、作業場で、薬師の人たちと、ポーションづくりしてたよ!」
「なんで、薬師の人たちと一緒にやってたんだ?!」
合いの手みたいにコルドが反応を挟んでくれた。
話に興味を持ってもらっている感じが出て話しやすい。
ナイスアシスト、コルド。
俺は、細かくその状況を説明した。
「作業場に行ったら、ササキさんと薬師の人たち2人がいたんだ。それですぐにササキさんに誘われて、一緒に作業することになったんだ! 薬師仲間になった、ダイアさんとクジョウくんとフレンド交換したぞ!」
「そうなのね!」
ローズがこっちに1歩詰めながら相槌を打った。
なんでこっちに1歩寄って来るんだよ。
落ち着こうな!
俺は、ローズに落ち着けのジェスチャーをする。
その間を埋める形で、またもやコルドからナイスパスが飛んできた。
コルドが謎にさえている。
「他には何したんだ?!」
俺は続きを話し出した。
「ある程度ポーションを作った後は、ミヤネさんの露店に行ったんだ。ミヤネさんの露店に行ったんだけど、事前に連絡するのを忘れてて、ミヤネさんが露店にいなかったんだ」
「そうだったのね」
話の続きが気になりすぎているのか、ローズがまた1歩こっちに詰めてきた。
ローズを片手で制しながら、俺は最後まで話した。
「ミヤネさんがいなくて、どうしようと思ってたら、隣で露店をしている料理人の天野さんに声をかけられたんだ。ミヤネさんが戻ってくるまでの間、天野さんの料理を食べながら、天野さんと話して待ってたんだ! ミヤネさんが露店に戻ってきた後は、普通にミヤネさんの露店で買い物したぞ! そこで、ミヤネさんと一緒にいたローズと合流して終わりだな!」
俺の話が終わって、すぐ次の人のエピソードへ行くのではなく、感想タイムに入った。
「うまく交友関係を広げてきたんだな!」
俺は、コルドの感想に返事をしながら、補足情報というか、言い忘れたことを言う。
「偶然が重なったけど、3人もフレンドが増えたな。何故か分からないけど、APOで新しく出会ったフレンドは、みんな生産職なんだよなぁ。なんでだろう? 忘れてた。作ったポーションを分けるから受け取ってくれ!」
「いいの?」
ローズが不思議そうに聞き返してきたので、俺は笑顔で答えた。
「大量にあるから大丈夫だ。それに、もともとパーティー用に作ってるから大丈夫だぞ!」
そういって、ポーションを2人に配った。
「じゃあ、ありがたくいただくわ!」
ポーションを受け取り終わったコルドが、元気よく宣言した。
「じゃあ、次は俺の番だな!」
ワンテンポおいてコルドが話し出した。
「俺は、狩りに行ってたぞ! 西の森にまたチャレンジしに行ってたんだ! 足場になれるところから始めて、弱めの魔物から少しずつ倒していったぞ! 西の森の浅めのところなら普通に戦えるぐらいにはなったぞ!」
「何時間か1人でずっと戦ってたのか?」
コルドの話が途切れたタイミングで、我ながらいいパスを出した。
これは、うまくアシスト返しができたんじゃないかな?
コルドは、さっきまで語っていた時よりもテンションが2割増しぐらいになって、続きを話してくれた。
「いや! 違う! 1,2時間戦ったところで、飽きたから、町に戻ってきたんだ! ボスの周回と、西の森の魔物討伐で、大量の素材があったから、気力で換金してたんだ! その後は換金で疲れたから、カフェで一休みしてたぞ!」
へぇ、カフェなんてあったんだ。
知らなかった。
まぁ、プレイヤーの職業に料理人があるんだから、町に飲食店があっても不思議じゃないか。
戦闘のためとか、生産のためみたいな実用性のあるところ以外の店もきちんとあるところが、APOって本当に自由なゲームだなって思う。
「町にカフェなんてあるの? 知らなかったわ!」
ローズも知らなかったんだ。
ローズは、街中で特殊なクエストとかを見つけるために歩き回ったりしてたって聞いたけど、カフェとかには興味がなかったのかな?
気になったので素直に聞いてみた。
「ローズって、よく町を探索しているんじゃないの?」
「特殊なクエスト探しをメインにしているから、カフェとかを見落としているのかのしれないわ!」
あぁ、店探しとかをしているわけじゃないんだなぁ。
クエスト探しってどこら辺を探すのかな?
そんな疑問が出てきたタイミングで、コルドが話を本筋に戻した。
気になったからローズに質問しちゃったけど、確かにまだコルドの話終わってなかったわ。
すまん! コルド!
「カフェで一休みしているところに、オクツから連絡が来て、スキルオーブ屋で合流って感じだな! 俺の個人行動はこんな感じだ!」
コルドの話が終わったので、感想を言っていく。
「個人行動の間も戦ってたのか」
「他にやりたいこともなかったからな!」
話したくて仕方がないみたいな雰囲気を出しながら、ローズは言った。
「最後は私ね!」
ローズも一呼吸おいてから話し始めた。
「私は、ミヤネさんにアクセサリー作りを教えてもらってたの! ミヤネさんと1対1で、いろいろ教えてもらったわ! その後ミヤネさんと一緒にミヤネさんの露店に戻ったら、オクツがいたからそこで合流したわ! これが私の個人行動よ!」
いっぱい話したいという雰囲気を出してたから、もっといっぱい話すのかと思いきや、簡潔にまとめてきた。
ちょっとした肩透かしを食らった気分だ。
コルドも同じこと思ったのか、思いっきりツッコんでいた。
「簡潔だな!」
「基本ミヤネさんと一緒にいたから、短くまとまったわ! オクツみたいにいろいろ回ったりしてないもの!」
ローズよ! 俺が、いろいろウロチョロしたみたいに言うけど、お前と俺の行動範囲、ほとんど同じだぞ!
作業場に行って、ミヤネさんの露店に行ったというほとんど同じ行動だぞ!
抗議の意味も込めて反論をした。
「新しい出会いが何個かあっただけで、俺も2つしか行ってないぞ!」
話さなきゃいけない出会いが多かっただけで、いろんなところに行ってたわけじゃないぞ!
そして俺が話をまとめるのが下手なんてこともないんだぞ!
そこんところ勘違いしないように!
「確かにそうね」
気が付くと、始まりの町が見えないくらい北に来ていた。
結構話したのに、まだ目的地にはつかないみたいだ。
俺たちはまた話題を変えて、話しながら歩いていった。
話ながら、たまに出てくるゴブリンを倒していく。
北から出始めた新しい魔物であるゴブリンは、単体ではあまり強くなく、数が増えていくとだんだん厄介になっていくタイプの魔物だった。
統率がうまく、組織的な動きをする。
複数のゴブリンが出てきた場合、戦いが始まると、楽しい会話がいったん止まるぐらい、ちょっぴり苦戦しながら、対処していった。
ちょっぴり苦戦する代わり、複数体で出てきたゴブリンは、何故か経験値が同じレベルの単体のゴブリンと比べてちょっとだけ多めだった。
なんでなんだろうな? 不思議だなぁ。
ゴブリンを切りながら、考え事をする。
いつになったら、目的地に着くんだろう?
北のボスに出会えるんだろう?
話してるのも楽しみだけど、早く北のボスと戦ってみたいな!
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