2日目夕食 カレー
VR機器を外す。
すると、かすかにカレーの匂いがした。
今日はカレーかぁ。
良いな!
嬉しいな!!
俺はウキウキしながら、部屋を出て、リビングへ向かう階段を下りていった。
1階に下りると、もう匂いは完全にカレーだった。
俺は、空いているお腹をより空かせながら、席に着いた。
それからすぐに、ふみが料理を配膳してくれた。
そして、ふみと母も席に着く。
みんなが席に着いたところで、いただきますをした。
「「「いただきます!」」」
それからしばらくは、会話などはなかった。
みんな黙々とカレーを食べていた。
カレーって黙っちゃうよな。
スプーンを止めるタイミングがないからなのかな?
カニぐらい静かに食べちゃうんだよなぁ。
黙々と、止まらずにカレーを食べ続ける。
カレーを半分くらい食べて、食欲も落ち着いてきたところで、母から話しかけられた。
「あんた、今日もゲームしてたの?」
嫌味とかそういうニュアンスはなく、純粋に聞いてきた感じの聞き方だ。
だから俺は、特に何かを隠すこともなく、答えた。
「そうだよ。涼と華と一緒にやってたよ。この後も、もうちょっとやる!」
今度は少し心配そうに母が聞いてきた。
「宿題は大丈夫なの?」
宿題かぁ。
APOを楽しみた過ぎて、夏休みが入る前に涼と華と一緒に大抵のものは終わらせたなぁ。
あの時の勢いはすごかったなぁ。
というか、夏休みの宿題って1週間でほとんど終わるもんなんだなぁ。
普段は、文句を言いながら、弱音を吐きながら宿題をする涼も鬼気迫る迫力で淡々と宿題をしていたなぁ。
つい2日前までのことなのになぜか懐かしく感じる。
俺は、母からの質問に、心配をかけないよう元気よく答えた。
「大丈夫!」
俺の答えを聞いて大丈夫だと判断したのか、母の心配はふみの方へと向けられた。
「そう。ふみちゃんは宿題大丈夫?」
母にそう聞かれたふみは、俺と同じくらい元気よく答えていた。
「大丈夫だよ! APOをやるために全部前倒しでやってる」
ふみも前倒しでやってるのか。
頑張れふみ! そして宿題を一緒にやっているであろう樹璃ちゃんも頑張れ!
中学校の宿題量なら、なんとかなりそうだな。
2人が宿題の心配なく、心置きなくAPOができるように心の中で応援してるぞ!
母親が一応言っておくかくらいのテンションで言った。
「2人とも、ゲームもいいけど宿題もちゃんとするのよ」
「「はーい」」
母からのありがたいお言葉に、俺とふみは軽く返した。
母からの話は一段落、会話の主導権が、なんとなくふみに移った。
さっそく、ふみが俺に話しかけてきた。
「お兄ちゃん。今日は、樹璃と一緒に、本体の方を買ってきたよ」
ふみは俺に秘密にしていたらしいが、俺はすでに華から自慢げに聞いたので知っている。
俺は余裕たっぷり、当然知っているみたいなテンションで答えた。
「あぁ。知ってるぞ。華が言ってた」
ふみは口を結び、不満をあらわにしている。
「驚かせようと思ったのに!」
ふみが悔しがっている。
俺は、ちょっとだけ上から、アドバイスするみたいな雰囲気で言った。
「華にバレたら、すぐに俺のところに情報が来るから、俺を驚かせたかったら、華と涼にも情報が行かないようにしないとだな!」
俺が、ふみを煽ったら、ふみは地団太を踏んで悔しがった。
ふみはそれから、急に俺に指をさして宣言した。
「それなら、APOで驚かせて見せる!」
おぉー威勢がいいのはいいことだな。
ふみはAPOでどんなプレイをするんだろうな?
どうなんだろう?
話題としても、APO繋がりで不自然ではないだろうし、とりあえず聞いてみた。
「APOでふみと樹璃ちゃんは、何の職に就く予定なんだ?」
ふみは、俺の質問に、仕返し! というちょっと悪い顔をしながら答えた。
「えー。ひみつ!」
「そうか」
俺が、あっさり引くと、ツッコミを入れてきた。
「食いつきが薄い!」
「まぁ、どうせあと6日後には知ることになるんだし」
俺は、ちょっと冷めた感じで言った。
すると、またムキになったふみが俺に向かって宣言した。
うちの妹は、いつの間にこんなに短気になってしまったんだろう?
「あっと驚かせて見せるから!」
俺はその宣言に余裕しゃくしゃくの態度で返した。
「楽しみにしてるぞ」
俺とふみでAPO話が盛り上がっていると、そこに母が参戦してきた。
「そのAPOってお母さんでもできるの?」
母も興味があるのかな?
テレビCMとか、いろんな企業がタイアップ商品出すとかしてるし、母も気になったんだろう。
もしかして、俺たちの会話から気になったりもしているのかな?
「APO内で知り合った人で、主婦の人もいるよ。その人は、料理人として、戦わずに料理を作るようなプレイしているよ!」
俺は、母がAPOを始めやすいように説明した。
すると、母は驚きながら、次の質問をしてきた。
「APOって戦わなくてもいいの?!」
「APOはいろんな楽しみ方があるみたいだから、観光目的でも、戦うことを目的にしても、冒険を目的にしても、何かを作ることを目的にしても、何を目的にしても十分楽しめると思うよ!」
今度は、まだAPOを始めていないふみが、熱意のこもった説明した。
いや、まだふみも始めてないだろ!
そう思ったり思わなかったり。
その説明を聞いて母は感心したようにうなずいている。
「あんたたちの会話に付いて行くためにお母さんも始めてみようかしら」
CMとかの影響ではなく俺たちの会話から気になったのか。
俺とふみのAPOについての会話って、ほとんどゲーム内のこと話してない気がするんだけどなぁ。
それでも気になったのはなんでなんだろうなぁ。
パッションかな?
「VRって結構な額するけど大丈夫なの?」
「買うってなったら、お父さんに出してもらうから大丈夫だわ」
母は当然だというように笑顔で言った。
やっぱり母は強しだなぁ。
財布のひもも、父の手綱も握ってるから、うちで母に逆らえる人などいないのだ。
母は最強なのだ!
「そうなんだ」
俺たちの話を聞いて満足したのか、母は突然話題を変えた。
「今日のご飯はどう? おいしい?」
「「おいしいよ!」」
母の問いに俺たち兄妹は全力でこたえた。
それから、話していて少しぬるくなった残りのカレーをパクパクと食べた。
カレーは冷え切っている奴以外ならなんでもうまいな。
全員がカレーを食べ終えたので、手を合わせて、ごちそうさまをする。
「「「ごちそうさまでした」」」
「今日は、皿を洗っていくのよ」
今日は皿を洗ってはくれないらしい。
ここで不満そうにしてはいけない。
ここで不満をあらわにすると、母の逆鱗に触れてしまうのだ。
それに、普段はちゃんと自分の皿は自分で洗っているのだ。
昨日は偶々、母が洗ってくれたぐらいでそっちを当然だと思ってはいけない。
俺たち兄妹は、自然と声をそろえて返事をした。
「「はーい」」
それから、パパッと皿洗いを済ませて、部屋へと戻った。
もう10年近く自分の皿を自分で洗っているのだ。
これくらい朝飯前だ!
もう夕食後だけど。
部屋へと戻って、パソコンで掲示板とか攻略サイトを覗こうかと思ったが、手づまりなわけでも、何か困っているわけでもないため、パソコンを立ち上げず、VRを手に取る。
固定観念に縛られたくないし、見なくて大丈夫だろ。
それに、極振りの検証ばかり進んでいて、バランス型の検証はほとんどないんだろ? それなら俺が見る必要はないな。取りたいアイテムとか、スキルがあるわけでもないし。
それに、掲示板とか攻略サイトによらなくても、皿を洗う時間が食休みになっただろう。
今、横になっても逆流してくることはないはずだ。
俺は今日3度目のAPOへのログインをした。
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