表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/386

2日目の自由行動その5 料理人、天野さんとの雑談と食事

 スープを机に置いた。

 張りつめた緊張感が、やっと緩まった。

 スープがまず席に着き、その後に天野さんが席に着いた。

 俺はその後に、天野さんが座った席の正面に座る。

 俺は手を合わせて、言った。


「いたただきます!」


「召し上がれ!」


 俺はスープを1口飲む。

 湯気がかなり顔に当たる。

 すごくおいしい。

 正直、母の料理なんて比にならないくらい美味しい。

 これは何かしらの補正が働いてるのかな?

 それとも、天野さんの料理の腕が、すごいのかな?

 だけど、ちょっと熱い。湯気がむくむく出ているようなスープだから、熱い。

 でも、APOの中での最初の食事は最高な思い出になるな! そう直感が言っている。

 俺が感動に浸っていると、天野さんが申し訳なさそうに、告げた。


「ごめんね。料理に箸とかが必要なのを言い忘れてたね。ハイこれ! 本当は、料理を買うときについでにお勧めするんだけど、今回は私が忘れちゃってたから、あげる! はい、箸どうぞ!」


 確かに箸がない。

 なんで気づかなかったんだろう?

 確かに、露店には、料理が並んでいる脇に箸とかスプーンが小さな山積みになっていた。

 その光景を思い出すことはできる。

 ということは、買い物の時の俺は少なくとも、箸の存在を認識していたはずなのに。

 俺はこの具だくさんのスープをどうやって飲み切ろうとしてたんだろう?

 買った時に箸を渡されなくて、なんで疑問を持たなかったんだろう?

 ゲームだからなんとかなるとか無意識下で思っていたのかもしれない。

 俺は、天野さんから箸を受け取った。

 受け取った箸を持ちスープを飲む前に、俺はふと気になったことがあったので、天野さんに聞いてみた。


「箸が別売りってことは、箸は原価のある物ってことですよね? もしかして、このスープの皿もお金がかかってるんですか?」


 箸も、皿も金がかかっていたら、あの値段に抑えるのはどうやっても無理なんじゃないだろうか?

 どうやっているんだろう?

 天野さんはすぐに答えてくれた。


「皿は大丈夫だよ。ポーションとかも、瓶は作業場で何故か無料で使えるでしょ? それと一緒で、皿は、作業場で無料で使えるのね」


 あぁ、確かにそうだ。

 そもそも、作業場で無料で瓶がもらえるのも、よく考えると不思議だな。

 これこそが、ゲームだから! ってやつなんだろうか?

 箸などは、無料で作業場でもらえるものの対象外なんだな。それもまた不思議なもんだ。

 もしかして、木工職人とかに対する救済処置とかそういうことなんだろうか?

 俺は箸を持たずに、天野さんとの会話を続ける。

 食欲よりも知識欲が勝ってしまっている。


「そうなんですか。確かにそうですねポーションとか、瓶代がかかってたら使い捨てさせないですもんね」


「でも、何故か箸とかスプーンとか、皿以外のものは別らしいんよね。だから、ミヤネちゃんの知り合いの木工職人を紹介してもらって、結構な量の箸とかを作ってもらってるのね。これが意外と値段しちゃうのよね」


「不思議ですね。システムの判定って言って謎ですね」


 俺の意識からスープという存在が外れかけたその時、俺が箸を持たずに会話をしているのを見て、天野さんは気を使ってくれた。


「口に物を入れたまま話さないなら、会話しながら食べていいわよ」


 そう言ってもらったので、俺は箸を持ちスープを飲みながら話をする。

 会話に専念していた時間で湯気が収まって、ちょうどいい温度のスープになっていた。

 箸を使うことで、初めて食べることのできた具材たちは、スープの味がしみ込んでいてとてもおいしかった。

 俺が再び具だくさんスープを堪能するのを十分待ってから、天野さんが話し出した。


「あんたも、昨日からAPOを始めたの?」


 天野さんの質問に答えるため、スープを飲むのを一時中断する。

 会話のテンポが少し悪くなってしまって申し訳ない。


「そうです! 天野さんも昨日からですか?」


「そうだよ!」


 天野さんも昨日からプレイ組なのか。

 ミヤネさんと親しそうな感じがあるから、βテスターなのかと思ってた。

 それにこの料理の腕前だし。


「ソフトはどうやって手に入れましたか? 予約の抽選に当たったんですか? 俺は、知り合いからもらいました」


 あの抽選を勝ち抜いてきた猛者なのかと思い、質問をしてみる。

 質問をしている間は、スープを飲む気になれないから、やっぱり箸が止まる。


「地元のでかいショッピングモールの感謝祭の応募企画の景品だったんだよ! その感謝祭の景品の2等が、金券だったから応募したら、APOが当たっちゃったから、始めて見たんだよ! あとから、予約の倍率とかを見て倒れそうになったよ!」


 へぇ、景品かぁ。

 景品にAPOがある応募企画ってすごく豪華だな。

 確かに天野さんはゲーマーって雰囲気がしないな。

 いろんなゲームをやっているようなタイプではないんだろう。


「あの倍率を潜り抜けてきた人達、すごいですよね。当たる気がしない倍率してましたもんね!」


「そうだね! オクツは、なんで剣士にしたんだ?」


 俺は、今度は質問に答える側になった。

 これ、案外スープを飲んでる時間がないぞ。


「いろんなところに戦いながら冒険してみたいって気持ちと、一緒に始めた友達との職業の兼ね合いで、剣士になりました」


「そうなんだね! 私は、戦闘職とか考えられなかったね!」


 今度は同じ質問を返す。


「天野さんは、なんで料理人にしたんですか?」


 たぶん、スープを取るならここだ!

 俺はなんとかスープを飲みながら、天野さんの話を聞く。


「現実じゃ高くて買えないような食材とか、現実にはない食材とかを使って料理がしてみたくなったからね! 戦闘職をする度胸もやる気もなかったし、だけどものづくりとか細かいことは性に合わないしね!」


 会話と会話の間や、天野さんが話しているときなどに少しずつスープを飲んでいき、無事、飲み切ることができた。

 もちろん、味わいながら大切に飲んだよ。

 めっちゃおいしかったし。

 スープを飲んでいる間は、少し会話のテンポがよくなかったのは申し訳ない。

 スープがおいしすぎて、ワンテンポ遅れるんだよ!


 箸をおいて、本格的に雑談だけに集中する。

 俺は、天野さんに気になっていたことを聞く。


「ミヤネさんとは、昨日知り合ったんですか?」


「そうだね! 昨日からいろんなものを教えてもらってるよ! それにいろんな人に私の露店を紹介してくれているらしいし、ミヤネちゃんには感謝しかないね!」


 へぇ、ミヤネさん、そんなこともしてたんだ。

 βテスターの鏡だな。


「なんか、すごくミヤネさんらしいですね」


 今度は、同じ質問が天野さんから返ってきた。


「オクツも、昨日、ミヤネちゃんと知り合ったの?」


「そうです! 会計の時に商品と一緒にフレンドコード渡されてめっちゃ驚きました!」


「その強引な感じ、ミヤネちゃんらしいね! 私も最初は遠慮してたんだけど、ミヤネちゃんが有無を言わさずどんどんおせっかいをやいてくれたんだよ!」


 ミヤネさんの話題で盛り上がっていく。


「そうなんですね」


 ミヤネさんの話題で盛り上がっていたところに、天野さんが思い出したかのように、味の感想を聞いてきた。

 すごい話題の方向転換!

 あの盛り上がりはなんだったんだろう?


「そうだ! どうだい? うちの料理は!」


 俺は、全力でおいしさを伝えようとテンションを上げて、感想を伝える。


「すごくおいしいです。おいしいし、バフもかかるし、太らないしで最高ですね!」


「そんなに素直に褒めてもらうと、少し照れるね!」


 天野さんが急に照れたように言った。

 天野さんも照れるんだな。


 天野さんとの雑談を楽しんでいると、露店の正面の方から、聞きなれた良く通る声が聞こえた。


「あ! オクツ! えっと……そちらの方は、どなた?」








よろしければ、下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけるとありがたいです。

★だと思った方は、★でもいいので、評価をよろしくお願いします!!!!

それと、毎日更新をしているのでよろしければ、ブックマークの方をしていただけると、更新した時にまた読みやすいと思います。

ついでに、いいねや感想などもしていただくと、活動の励みになるので、ぜひよろしくお願いします!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ