2日目の自由行動その3 調薬終了、次はミヤネ露店
「お前ら、さっきから口ばっか動かして、手が動いてねぇじゃねぇか!」
雑談ばっかりしてたら、ササキさんから檄が飛んできた。なんとなく拳骨が落ちてきそうな檄だ。
確かに今この場でみんな口は動いているけど、誰の手も動いていなかった。
ここは作業場のはずだよな?
カフェかなんかだと勘違いしそうなくらい、話しかしてない。
でも、ササキさんも手を動かさずに雑談してたのになぁ。
「あぁ、ごめんごめん。話に夢中になっちゃって」
ダイアさんがうれしいことを言ってくれる。
夢中になってくれてたんだ!
俺も謝りながら、とりあえず言い訳を並べる。
「すみません。皆さんのことを早く覚えようと必死で」
「オクツさんとの話が楽しくて!」
いやぁ、クジョウくんもうれしいことを言ってくれる。
「ササキ、君も用具を出しただけで、何も作業が進んでないじゃないか」
ダイアさんが、俺が思ったことを代弁してくれたのかな? っていうことを言った。
そうだそうだ!
心の中で、ダイアさんに賛同しておいた。
「確かにそうだな……すまん」
ササキさんは、ちょっとだけ恥ずかしそうに言った。
これは、雑談に夢中になってたのが恥ずかしいのかな? それとも、注意したことを自分もしていた事が恥ずかしいのかな?
「まぁ、そろそろちゃんと作業しましょう!」
「そうですね!」
俺とクジョウくんで、場の雰囲気を切り替えようとする。
そこに、ダイアさんも乗ってくれて、さっきまで残っていた楽しく雑談って雰囲気が、だんだん、作業もしようって雰囲気になってきた。
「あぁ、じゃあ、作業を始める前にオクツ君に1つアドバイス! 『生産の心得(入門)』ってスキルを取った方が良いよ」
生産にも心得スキルがあったんだ。
知らなかった。
SPのスキル一覧も、生産の方まで見ないからなぁ。
仕方ない、仕方ない。
「それって、SPで取れますか?」
心得スキルだから、SPで取れるだろうけど、一応確認してみる。
「取れるよ」
「じゃあ、SPも余ってるので、さっそく取ってみます」
ダイアさんに教えてもらった、『生産の心得(入門)』スキルをSPで取った。
ステータスアップ系のスキルがあらかた取り終わって、今後どんなスキルを取ろうか考えてたタイミングだったから、SPが余っていたのだ。
「そうした方が良いと思うよ。ここにいる3人はみんな持ってるから!」
「そろそろ、作業を始めるぞ。そろそろ、手を動かしながら話せー」
ササキさんの号令で、みんなが各々手を動かしだした。
俺もその流れに乗って手を動かす。
「はいはい」
「分かりました」
「クジョウを見習え! もうあいつは黙々と作業を始めたぞ!」
俺が用具の用意をしている時、クジョウくんはもう作業を始めていた。
すごく真剣な表情で集中している。
「すごいですね! あの集中力」
「集中ってスキルを持ってるのもあるけど、あの没頭癖は天性の才能だと思うよ!」
ダイアさんが、クジョウくんを褒めた。
同じ調薬(入門)組として、親近感があったけど、クジョウくんの表情とかを見て、一気に生産職の人なんだなぁという尊敬の気持ちがわいてきた。
「本格的な雑談は、ポーションを冷ますときにでもな」
ササキさんの言葉を聞いて、俺たちも本格的に作業に入っていった。
俺のポーションづくりは順調に進んでいった。
みんな作業中・生産中は集中していて、ほとんど雑談することはなかった。
作業中静寂の時が流れていた。聞こえてくる音は、道具から出る音だけ。
薬草をすりつぶす音や、鍋を火にかけている音などだけ。
たまにする雑談は、ポーションを冷ましている時間や、道具を洗ったりしている時間だけ。
本職だなぁって心から思った。
やっぱり生産が、調薬が好きなんだなぁと思うほどみんな真剣にやっていた。
その真剣さに充てられて、俺もいつも以上に集中して作業することができた。
正直、作ろうと思っていた量よりもだいぶ多くできてしまい、初級のHPポーションもMPポーションも過剰在庫になっている。
ササキさんの何度目かの、ポーションを覚ます時間、ササキさんが、みんなに話しかけた。
「いい感じにできたな! 俺はこれぐらいにして露店に戻るが、お前らはどうする?」
ダイアさんも集中が必要な作業ではなかったのか、すぐに答えた。
「ササキが戻るなら、私も戻ろうかな!」
クジョウくんは、作業を区切りのいいところまでして、答えた。
「僕は、他の生産もしたいので、ここに残ります!」
俺は、用具の片付けをしている手を止めて答える。
「俺も、結構な量のポーションができたから、ここで切り上げます」
「おう! じゃあ、クジョウ以外は作業場を出るんだな。この後何するんだ?」
本格的に雑談モードだ。
まぁ、俺はすでに作業が終了しているからいいけどね!
まず答えたのは、これまた片付けに入っているダイアさんだ。
「うーん……露店にいるかな。採取とかに出る気分でもないし」
俺もそれに続いて答える。
「俺は、ミヤネさんの露店に向かいます。新しい装備が欲しいですし!」
ちなみにクジョウくんは、もう作業に戻っている。
真剣な顔して、集中しているのが分かる。
「お、ミヤネちゃんかぁ。懐かしい名前だね!」
へぇ、ダイアさんもミヤネさんを知っているんだ。
生産職の繋がりかな? βテスターのつながりかな?
「懐かしいも何も、お前昼過ぎぐらいにミヤネの露店に行ってただろ!」
ササキさんから、ダイアさんに突っ込みが入った。
そんなに親しい感じなんだ。
名前を知ってるとか、一言二言かわしたことがあるみたいな間柄だと思ってた。
まぁ、確かに、あのアクセサリーは、誰もが必要だしな!
「ダイアさんもミヤネさんと知り合いなんですか?」
「生産職のネットワークはすごいからね! ついでにβテスターのネットワークもあるしね」
俺が思っていたつながりの両方らしい。
「へぇ、そうなんですか!」
作業場から出ていく組の片付けが終わったので、個室から3人で出た。
俺たちが個室から出る時、クジョウくんはこっちを見て手を振ってくれた。
クジョウくんは手を振り終えるとすぐに作業に戻っていった。
クジョウくんって本当に何かを作るのが好きなんだな!
俺たちは、歩きながら雑談をする。
「ミヤネちゃんによろしく言っておいて!」
「分かりました!」
「ちなみに私の露店は、ここだよ」
ダイアさんから、店の場所が記された露店の地図の画像がメッセージで送られてきた。
ちなみに雑談を始めて最初の方に、ダイアさんとクジョウくんとは、フレンド交換をした。
「時間があったら伺いますね!」
社交辞令じゃなくて、ほんとにね!
ダイアさんが作った細工の商品とかも気になるし!
「時間によったら、作業場にいたり、南の草原に行ってるかもしれないけど、来てくれたら歓迎するよ!」
「じゃあ、俺たちはこっちだから、ここで別れだな」
露店街の入り口ぐらいで、ササキさんとクジョウさんと別れる。
進行方向が、俺とは違うのだから、仕方がない。
「誘っていただきありがとうございました!」
「どういたしましてー」
「誘ったのは、お前じゃなくて俺だろ!」
ササキさんとダイアさんは、なんかコンビって感じがするなぁ。
2人でいるとすごくしっくりくる感じがある。
クジョウくんは、2人とは、生産職仲間って感じがするけど、ダイアさんとササキさんは、長年のコンビみたいな感じがする。
不思議なもんだなぁ。
キャラがあってるのかな?
「またねーオクツ君」
「またな、オクツ」
2人は、俺に手を振ってくれた。
俺は軽く手を振り返すと、歩き出した。
俺は、2人と別れて、ミヤネさんの露店へ向かった。
ダイアさんもクジョウくんもいい人だったな。
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