生産体験会『細工』体験フェーズ
ミヤネさんが笑顔で言った。
「じゃあ、制作を開始しましょう」
俺達は、それに同じようなテンションで返事をした。
「「「「「はーい」」」」
もう制作が始まるのか。
材料とかないけど大丈夫なのかな。
今から実際に作るという訳ではなく、ここからは、制作パートですよってことなのかな。
ノリで返事をしたけど、どうすればいいのか分からなくなっていると、ミヤネさんが、ハッとした顔をした後に言った。
「あ、そうだ。忘れてた」
「制作開始、ちょっと待って」
どうやら、何かやり忘れているようだ。
やっぱり、素材の配布かな。
それがないとどうにもならない品。
そう思いながら俺達は返事をした。
「「「「はーい」」」」
「席替えしましょう席替え」
え?
席替えなの?
ミサンガの材料を配布するのではなく、なぜ席替え?
予想外の言葉が出てきたことに驚きが隠せない。
俺は思わず言った。
すると、コルドとローズと声が重なった。
「「「席替え?」」」
「同じチームでずっとやるのも良いけど、せっかくならいろんな人と関わりたいじゃない? だから、席替えをしましょう」
確かにそうだな。
交流の場として、体験会をやろうということになったからには、多くの人との交流、珍しいメンバーでの交流をやっていきたいよな。
さすがミヤネさん、そこまで考えているんだな。
すごいな。
俺が泥期ながらも納得していると、コルドが言った。
「いいなそれ!」
「今の席に不満がある訳じゃないけど、そっちの方がいいと思うわ」
「じゃあ、みんなこっちに来て」
俺達は、声をそろえて返事をした。
「「「「はーい」」」」
俺達は、自分の席を立ち、ミヤネさんの方によっていった。
俺達が集まりきり、静かになると、ミヤネさんは言った。
「席替えはくじ引きで行うわ。それと同時に、材料の配布も行っちゃうわ」
席替えのくじ引きと材料の配布を同時にやるのか。
そんなことが出来るのか。
でも、それってどうやってやるんだ?
俺は気になったのでそのまま質問をしてみた。
「それは、一石二鳥だな。どうやってやるんだ?」
「この箱から、糸を引いてもらうわ。その糸は事前に私が、3本の糸をまとめておいた、ミサンガ作り用の糸よ。3本1束になっているから、それを1つ引いてもらうわ。その束が、赤青黄の3食なら、あっちの作業台ね。ピンク水色白だったら、あっちの作業台ね。オレンジ紫緑だったら、あっちの作業台ね」
はぁ、そんな方法があるんだな。
それなら、素材を配っていくと同時に、席替えが出来るな。
そんなことよく思いつくな。
そして、それを用意してやってくれるサービス精神もすごいな。
今日やりますと言って、今日できるってすごいな。
さすが生産職ということなのかな。
それとも、ミヤネさんがすごいのかな。
そう思っていると、クジョウ君が、目をキラキラと輝かせて言った。
「それならわかりやすいですね」
ミヤネさんが、箱を揺さぶりながら言った。
「じゃあ、一人ずつ引いていって」
「じゃあ、俺から行くぞ!」
そう言って、コルドが前に出た。
さすがコルド、一番手を行くんだな。
コルドがピンク水色白を出したら面白いな。
そう思っている間に、コルドは糸の入った箱に手を突っ込んだ。
コルドは、1束を取り出して、それを見て言った。
「赤青黄だな!」
「じゃあ、コルドはあの作業台ね」
「ピンク水色白ね」
「じゃあ、ローズは、あの作業台ね」
テンポよく2人がやった。
2人がやったなら、次は俺だな。
そう思い、そっと前に出た。
俺は緊張しながら、束を引いた。
束を見ながらその色を言った。
「オレンジ紫緑だな」
「オクツは、あの作業台ね」
俺は、言われた作業台に移動していく。
今のところ、綺麗に3人分かれた。
ここからどうなっていくんだろうな。
俺の後もテンポよく、みんなが糸を引いていった。
「赤青黄です」
「クジョウはあの作業台ね」
「オレンジ紫緑だね」
「じゃあ、けんけんぱはあの作業台ね」
「僕もオレンジ紫緑だ」
「シルもあの作業台ね」
「赤青黄ね」
「天野さんはあの作業台ね」
「ピンク水色白だな」
「ダイアはあの作業台ね」
8人が、テンポよく、自分の糸の束と、自分のグループを決定していった。
すごくスムーズな席替えだな。
現実の席替えもこれぐらいテンポよく行ってくれたらいいのにな。
そんなことをもっていると、ササキさんが、ミヤネさんの方を見て言った。
「俺もやるのか?」
「当然でしょ」
「じゃあ、やるか」
そう言って、後ろに立っていた、ササキさんが前に出てきて、箱から最後の1束を引いた。
その束を見てササキさんが言った。
「ピンク水色白だな」
「ササキはあの作業台ね」
これで、9人の配置が終わった。
そして同時に、材料の配布も終わった。
これで、いつでも制作を始められる状態になった。
これはすごい発明だな。
他で使うところがあるのかどうか分からないが。
そんなことを考えていると、ミヤネさんがニコニコ笑顔で言った。
「じゃあ、全員の割り振りも出来たところで、作業開始よ」
俺達は、上機嫌に元気よく返事をした。
「「「「「はーい」」」」
最後に、追加で説明するぐらいのテンションでミヤネさんが言った。
「手順を忘れたら、まず、同じ作業台の人に聞いて、それでもダメなら手順のメールを送ったからそっちを見てね。それでも分からなかったら、私に声をかけて」
メールを送ってくれるのか。
それは安心だな。
まぁ、なるべくそのメールに頼らずに行きたいな。
同じ作業台の仲間と協力とかをしながら。
そう思っていると、ミヤネさんが言った。
「分からない以外のことで声をかけても良いわよ」
ミヤネさんが元気いっぱいの声で言った。
「じゃあ、制作開始!」
そのテンションにあわせて俺達も元気よく返事をした。
「「「「「はーい」」」」」
こう言うのって、自分たちで拠点をもっているから出来ることだよな。
拠点をもっていなかったら、ギルドの作業場の個室とかでやるしかない。
さすがに、個室といえど、この規模の馬鹿騒ぎは出来ないよな。
拠点を手に入れて改めて、よかったなと思った。
そんなことを思いながら、体をミヤネさんの方から作業台の正面に向けた。
俺は、同じ作業台になった2人に声をかける。
「男3人の台だな」
「そうだね。ミサンガづくり初めてだから楽しみだね」
「俺も初めてだな。それにしても、珍しいメンバーだね」
2人とも馴染みのあるメンバー。
俺が、生まれたときから知っている、シルさんと、2日目の生産体験の時から知っているけんけんぱさん。
この2人なら安心だな。
まぁ、珍しいメンバーではあるけど、それを言ったら、だいたいの3人組が珍しいメンバーだよな。
俺達幼なじみ3人組とか、俺達調薬3人組とか以外だと。
そう思いながら言った。
「3人で何かをしたことはないね。それぞれ関わりはあるけど」
「このクランってそういう人たちが多いよね」
「それはそうだね。特に僕は、戦闘組と、1対1はあっても3人で何かすることってないね」
「こっちだってな、生産職のメンバーを交えて3人で何かってことが今まであまりないな」
「そうだよね」
「3人で協力して頑張ろうね」
「そうだな」
「じゃあ、ミサンガ作っていこう」
俺達は、アイスブレイクを終え、制作作業に入った。
ミヤネさんが言っていたことを思い出しながら、作業を進めていく。
糸を編む作業は思いのほか楽しくて、思ったより集中できている。
中盤あたりにさしかかってきたところで、シルさんに声をかけられた。
「ここって、こうで良いんだっけ?」
俺は、顔を上げて、シルさんの方を見た。
シルさんがどうやら困っているらしい。
どうしたんだろう。
同じ作業のしすぎで、よく分からなくなっちゃったのかな。
そう思いながら、一通りのシルさんの動きを眺めた後に言った。
「いいと思うぞ」
「俺もそれでいいと思うよ」
「とりあえず、このままやってみようかな」
3人とも各々の作業に戻っていった。
その後はみんな集中して黙々と作業をしていった。
みんな細工にはまっているのかな。
かくいう俺もかなり楽しいと思っている。
これはハマりそうだな。
そう思いながら、作業を進めていく。
10分程度で作業は終了した。
できあがった瞬間に、顔を上げて言った。
「出来た」
「僕も出来たよ」
「俺も出来た」
同じタイミングで2人も出来たらしい。
まぁ、みんな黙々と作業をしていたし、同じタイミングで終わるのも納得だな。
そんなことを考えながら言った。
「じゃあ、他のグループが出来るまでの間、話でもして待っているか」
「そうだね」
「それが良いね」
それから俺達は楽しくおしゃべりをした。
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