生産体験会『調薬』感想フェーズ
俺達は、少しの間、作り終えたポーションを作業台において、3人でおしゃべりしていた。
今日は何をしたという話や、何が作りたい、何がしたいという話、APOを始めるきっかけとかいろんなことを話した。
共同で作業をしたことで、また一つ距離感が近くなったように感じる。
これもまた、体験会の成果の一つだろうな。
そうやって話していると、いつの間にか、まわりも作業を終えたようだった。
全員の作業が終わったところで、ササキさんが一度咳払いをした。
その声を聞いて、俺達は、話を中断した。
俺達が話を中断してから少しして、ササキさんが話し出した。
「みんな、簡易ポーションは作れたな?」
「作れたぞ!」
「作れたわ」
コルドとローズが自信満々な様子で、作った簡易ポーションを掲げながら言った。
この流れだと、俺達もポーションを掲げながら行った方が良いのかな。
そう思い、作ったポーションを手に取って大きく掲げて言った。
「作れたぞ」
「作れたわよ」
「じゃあ、それを飲んでみよう。効果はないけど、飲むことは出来るはずだ」
飲むのか。
確かに、このまま放置していたら、ただただ、賞味期限、消費期限を迎えるだけだな。
それなら、効果はなくても飲んだ方が良いのかもしれないな。
飲むことなんて全く考えていなかったら、予想外の言葉に、ちょっと動揺してしまった。
俺達は、各々自分たちで作ったポーションを手に取って言った。
「「「「「いただきます」」」」」
そう言って、みんなポーションを飲んでいった。
飲み干した順に、感想を言っていく。
「うん、ただのポーションね」
味は、通常のポーションと何も変わらなかった。
効果は薄いらしいが、今はHPが減っている訳じゃないから、実際にどんなもんか測ることは出来ない。
これは、普通に使えるな。
通常のポーションと同じ味というのがいい。
これなら緊急時の代替品になり得るな。
味が同じならそこに意識を持って行かれることもないだろうし。
俺は、飲み干した後の空の瓶を眺めながら言った。
「普通のポーションと味は変わらないんだな」
「普通に飲めるな! これなら使えるかもな!」
「ただの水ね」
「味がないわね」
「戦闘職の人ってこれを飲んでいるんですね」
「なんか、もっと甘かったり、苦かったりするようなイメージがあったね」
もしかして、生産職組ってポーションを飲むのが初めてなのかな。
まぁ、戦闘をすることもないだろうし、魔法を使うこともないだろう。
そうなってくると、ポーションを使うタイミングってないよな。
だから、使ったことがなくても不思議じゃないな。
俺達は、当たり前のようにポーションを消費していくから、ポーションの味なんて、当たり前に知っているものだと思っていたけど、そうじゃないんだな。
ポーションを飲もうと言ったササキさんの発言以上に動揺した。
まぁ、そういうこともあるよなと思いながら気持ちを落ち着ける。
一応、確認のために言った。
「生産職組は、もしかして、初ポーションなのか?」
「素材取りの時は、攻撃されたら基本的に死ぬしかないから、回復は使わないし、生産において、何かダメージを負うことはないからね」
「錬金術とかなら使うんでしょうけど、僕の場合は、いろんな生産をしながらの錬金術なので、MPを回復してまでやろうとはならないんですよね」
「料理にポーションは使わないからね」
「鍛冶でも使わないな。実際に武器を試すときには、常備はしているんだけど、プレーンラビットとかとしか戦わないから、攻撃されることもなくてね」
「生産職の人って、ポーションを飲んだことがないのね。意外だったわ」
やっぱり飲んでなかったんだな。
まぁ、飲む必要がないもんな。
クジョウ君は、自分で調薬とかもしているのだし、飲んだことがあるものだと思っていた。
自分の作ったものを自分で使わない人もいるし、それもありか。
βテスター組は、βテストの時から、ずっと飲んでいないのかな。
そんなの有り得ることなのかな。
そう思いながら聞いた。
「β版からずっと飲んでいないのか?」
「そうね、β版の方がより引きこもっていたから、今よりも飲む可能性もなかったわね」
「僕は、あっちこっちに引っ張りだこだったので、戦闘に寄り道したり、魔法に寄り道したりする余裕もなかったですね」
「β版の時は、試し切りとかはせずにひたすらに武器を作っていたからね。鍛冶で使うハンマーを手とか腕に当ててしまったとしてもダメージは入らないしね」
「そうだったのね」
そこでなんとなくこの話題が終わった。
そこから誰かが新たな話題を出して、話がどんどんとそれていく流れになりそうだな。
そう思ったところで、ササキさんが、グッと話を本筋に戻した。
「調薬体験は楽しかったか?」
感想を言えということなのかな。
めちゃくちゃ楽しかったな。
調薬をある程度経験していたけれど、全く知らないレシピで全く知らないレシピを作ることになって、調薬の楽しさを再認識できた気がする。
それに、誰かと一緒に作業するというのがこんなに楽しいんだな。
品質的にはよくないのかもしれないけど、こういうイベントごとでやるならそんなことをも考えなくて良いし、ただひたすらに楽しかったな。
その気持ちをぎゅっとまとめて言った。
「あぁ、もちろん楽しかったぞ」
「楽しかったわね。違う生産に手を出してみるのも楽しいわね」
「楽しかったぞ! みんなで協力して作るのがよかったな!」
「料理に似ていて楽しかったよ。それに、ポーションの味も知れて、新しい発見もあったね」
「いつも楽しそうに調薬談義しているメンバーの仲間に入れたような気がして楽しかったわ。SPが余ったら調薬を取ってみても良いかもしれないわね」
「鍛冶とは違った生産工程を踏んでいて楽しかったね。調薬ができるようになれば、鎧に武器、ポーションまで作れるようになって、1人で冒険者セットとか作れそうだね」
「やっぱり調薬って楽しいですよね。いつもやっている調薬をみんなで出来てよかったです」
「僕も楽しかったよ。初の生産体験が、これだったから、みんなに迷惑をかけたところもあったけれど、楽しく出来来たよ。生産に対するイメージがちょっとはっきりしたような気がするな」
みんなそれぞれ、感想を言っていった。
全員、楽しかったようで、みんなの顔は笑顔で溢れている。
これは、大成功って言っていいんじゃないかな。
こんな楽しい会がここから続いていくのか。
この成功で、後ろの会に対する期待がぐぐっと上がったな。
頑張ってくれ、次の体験会の人。
みんながみんな楽しめることを企画できるってすごい企画能力だよな。
さすがササキさんだな。
もしかしたら、ダイアさんかもしれないのか。
それはそれで、うん、有り得そうだな。
そんなことを考えていると、褒められて照れているのか、照れくさそうな表情でササキさんが言った。
「そうか、みんな楽しんでくれたみたいだな」
「調薬の体験会をした意味があったってもんだな」
「そうだな」
2人ともうれしそうで、恥ずかしそうで、照れくさそうな表情をしている。
2人とも、今の感情をどう表現していいのか分かっていない感じだな。
そう思いながら、微笑ましく2人を見ていると、ササキさんが終了を宣言した。
「じゃあ、これで、調薬の体験会は終了だな」
俺達は、全力で2人に感謝を伝えた。
「「「「「ありがとうございました」」」」
「まっすぐ感謝を向けられると照れくさいな」
「そうだな」
2人は、再び照れくさそうな顔をする。
成功して本当によかったな。
2人のおかげで良いスタートが切れたんじゃないかな。
発案者としてとてもうれしいな。
俺が満足げに頷いていると、ササキさんが言った。
「じゃあ、次は……」
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