帰還道中
俺達は、東の荒野での狩り兼修行を終え、帰路についていた。
もう昼だと自覚してから、なんとなくお腹がすいたような気がするが、気のせいだろうな。
そう思いながら歩いていると、ローズが急に話題を振ってきた。
「もうすぐで、妹たちが、APOデビューね」
「第2陣で、樹璃ちゃんと、文ちゃんがAPOを始めるんだよな!」
「そういえば、そうだったね」
妹たちのAPOデビューか。
もう間近に迫ってきているな。
APOの初日は、まだまだ1週間もあるのかと思っていたけど、あっという間に4日過ぎ5日目になってしまったな。
妹たちが開始するのが、サービス開始8日目だから、明明後日か。
もうそこまで来ているのか。
時間の経過は速いな。
そう思いながら言った。
「8日目に開始だから、明明後日だな」
「後今日入れて3日か!」
もうすぐだな。
妹たちを驚かせられるほど成長できるかな、あと3日で。
目をキラキラと輝かせて尊敬されるような姿になれるかな。
ちょっとだけ不安だな。
このペースで大丈夫なのだろうかと。
そんな不安をうっすらと抱えながら言った。
「もうすぐだな」
「妹たちが来るのは楽しみね」
「文ちゃん達に限らず、第2陣でAPOにプレイヤーが増えるのが楽しみだね。僕たちのクランにあったプレイヤーがもっと増えるかもしれないしね」
「自然と大規模なクランになっているかもしれないな!」
第2陣のプレイヤーでいっぱいになったクランか。
その先頭に俺がいるのを想像できないな。
そうなったときには、リーダー的なものは誰かに譲って、名誉職とかになっていたいな。
創設者とかそういう風に思われているけど、今のリーダーではないみたいな立ち位置に憧れるな。
その憧れもあるけれど、一番は、そんな大規模なクランの運営なんて俺には出来ないからな。
運営について考えているだけで1日が終わりそうだもんな。
俺がやりたいゲームはそれではないからな。
俺は、2度ほど頷いてから言った。
「そのときには、クランマスターを他の人に譲って、自由にやりたいな」
「それはそうね。私たちって大規模な組織を引っ張っていく性格じゃないものね」
「その通りだな!」
「うん、それは向いていないと思うよ」
俺も向いていないと思う。
俺は人材の調整をするためにAPOを始めたのではないと言って発狂すると思う。
まぁ、でも、前みたいに、ゲームと言えばコルドとローズと3人でするものというイメージはなくなってきたな。
無意識に、他の人を拒絶するみたいなことはなくなってきたかも。
それは、今までのネットゲーツとは違って、APOでは実際に相手が目の前にいて動いているからかもな。
画面の向こうの人という認識ではなくて、目の前にいる人だと思うから、関わるハードルが低くなっているのかもな。
自分の思考を考察しながら言った。
「ただ、面白い人たちと一緒にAPOをプレイするのは、とてもいいことだと思っているぞ」
「そうだな! 他のプレイヤーと一緒にゲームをすることへの拒絶感はなくなってきたな!」
「これも、他のクランメンバーのおかげね」
「そうだね。何というか内輪! って感じの雰囲気だったのが、楽しくやろうという感じの雰囲気に少し変わった気がする」
第2陣か。
どんなプレイヤーがいるんだろうな。
どんなプレイヤーと関わることになるんだろうな。
第2陣のプレイヤーって『始まりの町』スタートだよな。
そうなると、『クランの町フラッグ』にいる俺達と関わるのには、少なくとも初ログインから3日が経っている可能性が高いな。
3日じゃたりなくて、5日とか1週間とかかかるかもしれないな。
そうなってくると、もうある程度人間関係が出来てきていて、俺達が入り込む余地はないかもしれないな。
そんな未来を想像しながら言った。
「第2陣でいろんなプレイヤーが来るんだろうけど、『クランの町フラッグ』にいる俺達が、その人達と関わるのはもう少し先になりそうだな」
「さすがに、わざわざ『始まりの町』に行ってまで関わろうとは思わないな」
「そこまでして勧誘したい人材がいるほど、人材不足ではないものね」
「それはそうだね。関わるチャンスがあるとしたら、その人達がこの町に来たときか、他のクランメンバー経由か、もしくは、文ちゃん達を『始まりの町』に迎えに行くときの前後だろうね」
そのときにいい人と巡り会えたら良いな。
いい人と巡り会えて、その人が入りたいと言ったら拒絶することはないだろうな。
そんな出会いをする可能性はかなり低いだろうけど。
「まぁ、積極的に拒絶していくことはしないだろうから、そのルートでなら関わることはあるかもな」
「それで関われるのはごく一部だろうけどな」
「ゲームで関わるのなんて、このゲームをやっている人のごく一部であるというのは、私たちに限った話ではないでしょうね」
「それはそうだね。ごく一部にいい人達がいっぱいいることを願うしかないよね」
このタラレバの話もここまでかな。
すごく失速して言っているのが分かる。
まぁ、みんな未来の想像がふわっとしているから、広がっていかないんだろうな。
じゃあ、次の話題でも振ろうかな。
次というか、前の間台に戻してみよう。
そう思いながら言った。
「話が戻るんだけど、妹たちは、どんなスタイルで始めると思う?」
「私から妹には、『極振りはやめておいた方が良い』と言う情報しか渡していないわ。後は、あの子がどのぐらい情報収集して選ぶかになると思うわ」
へぇ、ローズは、樹璃ちゃんにそんなことを伝えているんだ。
俺は、何を伝えたかな。
何か質問されたら、それに答えるみたいなことはしていたけど、それも数回だしな。
俺から何かを教えたことはないかもしれないな。
何か伝えた方が良いのかな。
いや、自分の考えで始めた方がいいと思うんだよな。
そっちの方が納得するだろうし。
このゲームはリセットが利かないからな。
嫌になったら止めるしかないんだよな。
それなら、自分で考えて、自分で決めたことの方が、長続きするんじゃないかな。
だから特に俺から言うことはないんだな。
自分の行動の理由を自分で考えながら言った。
「うちは、聞かれたら答えようとは思っているけど、あまり聞かれないから、あまり情報をお踏みに与えられていないな」
「それなら、やっぱり花形の戦闘職じゃない?!」
「第3陣以降に合流する仲間がいるのなら、そのメンバー内で、一緒に冒険できる戦闘職で統一するのか、一緒に作業できる生産職に統一するのか思想だよね」
「生産職統一みたいな渋いことはやってこなさそうよね。あの子達ミーハーだから、有名どころから行くんじゃない?」
まぁ、生産職と戦闘職で分担するみたいなことはしなさそうなイメージがある。
みんなで一緒に何かをやるタイプだからな、妹たちのグループは。
ローズが言っていた有名どころというのも的を得ていると思う。
APOに応募したのだって、流行っているから、広告で流れてきたからぐらいの感じなんだろう。
そのタイプは、王道とか有名なところを行くイメージがある。
ただ、俺は、掲示板とか攻略サイトを見ないから、APOの王道が何なのか分からないんだよな。
分からないなら聞くしかないと、気合いを入れて聞いた。
「APOの職業とスタイルの有名どころってどこなんだ?」
「王道は、多分、剣士と魔術師じゃないか?! 攻略サイトとかで一番、情報の厚みがあるのがそこだからな!」
「僕も有名どころは、その2つだと思うよ」
「そうなのね。でも、樹璃がその2つをやるとは思えないわね」
剣士と魔術師か。
その2つはなさそうな雰囲気があるな。
文の言動からしても、文の性格からしても。
そう思いながら言った。
「俺も、文がその2つをやるとは思えないんだよな」
「まぁ、この話で毎回同じ着地をしている気がするけど、2人がログインしてのお楽しみだな!」
「そうだね。そのときの楽しみにしていようね」
「そうだな」
「そうね」
俺達は、いろいろとおしゃべりしながら『クランの町フラッグ』ヘと向かった。
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