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カリカリ道中

 俺達は、東に向かって歩き出した。

 早足だけど、決して走ってはいないぐらいの速度で進んでいった。

 俺達は、東の城門の場所も知らないので、地図とにらめっこをしながら進んでいく。

 まぁ、基本的には、東西に通る大通りをまっすぐ東に向かって進んでいくだけなんだけどな。

 定期的に地図を確認しては居るけど、まぁ、間違いなく見なくても着くだろう。

 でも、不安だから、地図とにらめっこをしてしまうんだよな

 そうやって進みながらも、楽しくお話をする。


「なぁ、兄貴知ってるか?! 今日の昼頃から、大規模なパーティーが、『ビックボスゴブリン』の討伐と、この町に来るために動き出すらしいぞ!」


「あぁ、なんとなくだけど、『始まりの町』で聞いたよ。又聞きなんだけどね」


「そうなのか! 何か知っていることとかないのか?!」


「何だろうな。何かあったかな。あぁ、そういえば、その大規模パーティー、大規模クランのトップの人たちと面識があるよ」


「そうなの?」


 へぇ、シルさんって、そのデカいプレイヤークランのトップと知り合いなんだな。

 シルさんの人脈ってよく分からないな。

 夜中に『始まりの町』に向かっていろいろしたり、そもそも内のメンバーともある程度面識があったみたいだし。

 まぁ、シルさんだからな。

 どの集団でも、すぐになじんでいくんだろうな。

 やる気さえあれば。

 シルさんってそういう人だもんな。

 そう思いながら言った。


「すごいなそれは」


「どんな感じの面識があったんだ?!」


「えっとね、その人が入っていたパーティーに、僕の知り合いがいてね、その人経由で、そのパーティーと一緒に狩りとかをしたことがあるよ」


「そうなのね」


 そんなつながりがあるんだな。

 そもそも、戦闘職の知り合いがいないから、そんなつながりを作るのは難しいな。

 まぁ、それは、身内だけで遊んで言うから何だろうな。

 外の人を入れずとも遊べるなら、身内だけで楽しんじゃうよな。

 そんなことを考えながら言った。



「すごいな。そんな人脈があるのか」


「兄貴って顔が広いんだな!」


「まぁ、β版の時の話だけどね」


「β版の時の話なのね」


 まぁ、そうだよな。

 ここ数日で、知り合いが出来て、それ経由でパーティを組むみたいな流れが出来ていたとしたら、すごすぎるもんな。

 シルさんが同時に2,3人以内と説明できないもんな。

 そう思い納得しながら言った。


「それでもすごいけどな」


「そんなつながりがあったんだな!」


「まぁ、β版は、小さなコミュニティだったからね」


「そうなのね」


 なんとなくその雰囲気はあるよな。

 生産職と戦闘職とが近い距離感に居て、互いに協力して頑張っていたという雰囲気がある。

 まぁ、それを、正規版でやるのは難しいよな。

 何というか、正規版は、別にゲームをものすごく好きじゃない人もいるからな。

 その中でプレイヤーがなんとなく結束するのは難しいだろうな。

 それが悪いことではないけど、何というか、β版と正規版で、プレイヤーの雰囲気は違うんだろうなと思う。

 そんな考察をしながら言った。


「へぇ、そうなんだな」


「それでもすごいと思うぞ!」


「そうかな?」


「それで、その人はどんな人なの?」


「その人はまず、プレイヤー名はメイっていう女性のプレイヤーだよ。真面目な人という印象かな。なんとなく頑固そうな雰囲気もあったかな。2,3度一緒にパーティーを組んだだけだからそれぐらいしか分からなかったよ」


「女性のプレイヤーなのね」


「なんとなく、男性のプレイヤーなのかと思っていた!」


 女性のプレイヤーなんだな。

 何というか、俺もコルドと同じように、無骨な男のプレイヤーだと思っていた。

 よく100人規模の団体をまとめられるな。

 俺には絶対に無理だな。

 今の規模かもう少し大きいぐらいが、俺の限界のキャパだと思う。

 それ以上はどうにもならないんじゃないかな。

 俺は、100人規模をきちんとまとめているという事実から、メイさんを尊敬しながら言った。


「まぁ、極振り続行して、『ビックボスゴブリン』に挑むのだから、頑固だろうな」


「いい人ではあるよ。どちらかというと、人と争おうみたいな感じではないかな」


「そんな人なら、この町に来たとしても、うまくやっていけそうね」


「兄貴は、メイさんがトップを務めるクランとの関わりはあるのか?!」


「あぁ、あるよ。まぁ、そこのトップのパーティーと関わりがあったのだから、当然だけどね」


「そのクランはどんな感じだったの?」


「気になる!」


 メイさんというプレイヤーの雰囲気というか、なんとなくの印象は掴めたような気がする。

 だけど、そのクランについては、何も分からないから、かなり気になるな。

 実際に、町で関わることになるのは、そっちのクランの方なんだろうし。

 そう思いながら、シルさんに言った。


「シルさん教えてくれ」


「3人がよそのプレイヤーに興味を示すのって珍しいね」


「この町で共存していくことになるかもしれない人たちの情報なら、得ておいた方がいいと思うのよ」


「単純に気になるしな!」


 確かに、他のプレイヤーとか、よその団体に興味を持つことは少ないな。

 だって、他人事だし。

 俺と関わりがある訳じゃないからな。

 だけど、今回のことに関しては、俺達も関わることだからな。

 すごく粗相をするような人たちなら、関わりたくないし、まともな人たちなら、イベントとかで何か一緒にやる機会もあるかもしれない。

 だから、身近なことに関しては、知らないものは知りたくなるものだ。

 その思いをぎゅっとして言った。


「そうだな。知らないものは知りたくなるよな」


「そうなんだね。そのクランは、名前は何だっけかな。あぁ、あれだ。特化連合って名前だった気がするな。多分あっていると思う。β版の時はそうだったな。多分だけど、今の同じ名前で活動していたと思うよ」


「特化連合というのね。何というか、極振りのプレイヤーがめっちゃいそうね」


「そうだな! いっぱい良そうな名前だな!」


 名前は分かった。

 その中身というか、雰囲気というか、そっちの部分の方が気になるな。

 どんな団体なんだろうな。

 その、特化連合という団体は。

 そう思いながら聞いた。


「雰囲気とかはどんな感じだった?」


「何というか、上の層は、メイさんが好きで集まった奴らって感じだね。一般メンバーは、強くなりたいから所属しているってプレイヤーが多いかな。全体としては、ストイックに戦闘とかレベル上げとかを頑張っている人たちって印象だね。まぁ、大規模な攻略クランって感じなのかな」


「何というか、ゴリゴリの雰囲気ね」


「雰囲気的には、俺達とは相容れなさそうだな!」


 ストイックな人たちか。

 その場の流れで何かを決めて、雰囲気で楽しんでいく俺達とは全然違う人たちだな。

 いわゆるガチの方々ってことか。

 これって、水と油にならないか心配だな。

 そう思いながら言った。


「まぁ、ガチの方々って感じか」


「メンバーは割といい人が多いと思うよ。メイさんをはじめとした幹部達ががしっかりと統制しているし、迷惑をかけるような人たちではないと思う。ただ、今は、『クランの町フラッグ』の到達とか、『ビックボスゴブリン』の討伐とかを取られて、少しだけピリピリしているって、知り合いが言っていたよ」


「そんな感じなら、町中であっても、難癖をつけれることはなさそうね」


「荒くれ者の集団と言うよりは、軍とかそっちの方のちゃんとした組織になっているんだな!」


 規律のある組織って、すごいな。

 ゲームって、やっぱり、ゲームだから、何というか、大きな団体だと、気の抜けた人不真面目な人は出てくるものだ。

 それなのに、まともに運営できるってすごいな。

 俺には出来そうもない。

 そう思いながら言った。


「ゲームでそれが出来ているってすごいな」


「まぁ、僕の一意見だけど、メイさんがいけると判断したんだから、多分『ビックボスゴブリン』を突破してくると思うよ。どれぐらいの犠牲を出すのかは分からないけど」


「そんなクランなら、安心して到着を歓迎できるわね。表だって歓迎とかはしないけど」


「良いリーダーだな! 俺達には難しいだろうな!」


 俺達には難しい。

 その通りだと思う。

 そもそも、そんなデカい団体のリーダーなんて大変そうだし、責任重大だし、やりたくないな。

 俺は心からそう思いながら言った。


「それはそうだな」






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