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クラン顔合わせ 開始

 ドアを開けると、中にいたみんながこちらを見てきた。

 全員の視線がこちらに向く。

 その中で、ササキさんが言った。


「おう、もうみんな来てるぞ」


 ササキさんの言葉に合わせて、俺達は、1歩部屋の中に踏み入れた。

 俺達が入ったことで、開いていた扉も閉じる。

 見られていると緊張するな。

 静かだとより緊張するな。

 みんな何かしら話してくれたら良いのに。

 あれ? これはどこに座れば良いのかな?

 どこに座れば良いのか軽く困っていると、天野さんが、空いている席を指さしながら言った。


「いらっしゃい、3人の席はあそこだからあそこに座ってちょうだい」


 俺達は、座っている皆さんの後ろを通りながら、天野さんが指さした席を目指した。

 ダイアさんの後ろを通らせてもらうときに、ダイアさんがこちらに振り向きながら言った。


「ようやく主役の登場だな」


 急に振り向かれたせいで、びっくりしてうまく反応できなかった。

 まぁ、緊張していたし仕方ない仕方がない。

 次は、ダイアさんの対面に座っていた。クジョウ君から声をかけられた。


「楽しみすぎて早く来すぎてしまいました」


 照れながら軽く頭をかくクジョウ君。

 クジョウ君って何歳なんだろう?

 こんな可愛い仕草をするんだから年上ではないはずだ。

 そうであってほしい。

 俺はニコッとして、会釈をして返した。

 ここで話すと、さすがに邪魔だろうし、それに、うまく反応できなかったダイアさんとの差をなるべく作らないように軽い会釈にした。

 続いて、けんけんぱさんの後ろを通るときに、やはりけんけんぱさんから声をかけられた。


「お! 重役出勤だね」


 けんけんぱさんにも笑顔で軽い会釈で返事をした。

 最後に、俺が座る予定の席の隣の席に座っているミヤネさん声をかけられた。

 ミヤネさんは、俺が座る予定の椅子をポンポンとたたきながら言った。


「さぁ、座りなさい」


 俺達3人が無事に席に着いたら、ササキさんが言った。


「全員そろったところだし正式に顔合わせを始めようじゃないか。まぁ、半分ぐらい始まっていたようなものだけどな。じゃあ、始めにオクツクランマスター何か話を」


 この顔合わせ会の司会的なポジションは、ササキさんなんだな。

 キャラ的に、けんけんぱさんとか、ダイアさんがやるのかと思ってた。

 最初からこの部屋にいたから、ササキさんがホスト的な立ち位置でやってるのかな。

 こっちの負担が減るからありがたいな。

 それにしても、急に無茶振りが飛んできたなぁ。

 どうしようかな。

 まぁ、とりあえず話し出すか。

 話してれば、そのうち話したいことも出てくるだろう。

 俺はなにも話すことを決めずに話し出した。


「かなりの無茶振りですね。皆さん、おはようございます」


 みんなが声を合わせて言った。


「「「おはよう」」」


 ミヤネさんから、机に置いてあるグラスを手渡された。

 グラスの中には、炭酸が入っている。

 これをどうしろと?

 結局何も話すことが出てこなかったな。

 スピーチ的に話すこともないし、よし、それっぽい乾杯の挨拶をしちゃおう。

 俺は、それっぽくなるようにグラスを持ちながら乾杯の挨拶をした。


「この顔合わせ会は、皆さんのやる気により、約1時間半強も前倒しになりました。ここまでのやる気を持って、クランの活動に参加していただき、ありがとうございます。これからのクランの繁栄、そして、ここにいるメンバーがこれからも楽しく笑顔でAPOが出来ることを願いまして、乾杯!」


 俺の乾杯に合わせて、みんなが言った。


「「「乾杯」」」


 乾杯が終わると、ササキさんが司会のように進めてくれた。

 ありがとうササキさん。


「すぐに自己紹介に移っても良いが、話したそうにうずうずしている奴が何人かいるし、先に自由時間だな。好きに話せ」


 自己紹介の前にご歓談タイムか。

 場の雰囲気も柔らかくなるし良いんじゃないか?

 初対面でいきなり自己紹介から入るのって、勇気がいるしな。

 俺はとりあえず隣に座っている、ミヤネさんと話した。

 というか、まずミヤネさんに話しかけられた。


「オクツ君。顔合わせ会を開いてくれてありがとうね」


 ミヤネさんとは、昨日ぶりか。

 えっと確か、昨日は、耐久値を回復してもらったんだっけ。

 多分それ以来だよな。

 うん、そうだと思う。

 俺はとりあえずめちゃくちゃ謙遜しておいた。


「いえいえ。クランマスターとしてクランのためになると思ったからやったまでです。顔合わせ楽しめてますか?」


 ミヤネさんは、俺の質問にウキウキで答えた。


「もちろんよ。とても楽しんでいるわ。話には聞いていたけど、オクツ君3人以外、みんな純生産職なのね。戦闘ができる人が1人もいなくて驚いたわ。多分この6人で南の草原に行ったら、売る父兄の魔物にボコボコにされる気がするわ」


 生産職でも、戦闘ができる人がいるのかな。

 ミヤネさんの口ぶり的に、そういう人がいるような感じだな。

 自分で素材を集めて、自分で生産するような人なのかな。

 サバイバルみたいでかっこいいな。

 そして、めちゃくちゃ玄人向けっぽいな。難しそう。

 俺だったら多分無理だろうな。そんな玄人向けのプレイング。


「そうなんですよ。皆さん純生産職で。戦闘職の人との良い出会いがないんですよ。あ、俺達が来る前ってどんな感じでした?」


 手に持っている飲み物をあおりながらミヤネさんは言った。


「生産系の話を中心にかなり盛り上がったわよ。みんながみんな純生産職だから、話が合うし、いろんな職の生産職の人がいるから、それはそれで話が盛り上がったわ。あと、みんな、顔合わせの前から、どこかしらとは関わりがあったから、話しやすかったのかもしれないわね」


 盛り上がっていたのか。

 それはよかった。

 お通夜状態とかだったら目も当てられないからな。

 まぁ、みんなどこか白髪つながっている人たちだし、話しやすいのかな。

 でも、友達の友達って、かなり話しづらい部類だよな。

 俺は、盛り上がっていたと知って、ホッっとした。


「盛り上がってたならよかったです。もしかしたらお通夜状態かもしれないなぁと不安になってたんですよ」


 クスッと笑いながら、ミヤネさんが言った。


「心配性ね」


 この話題はこれぐらいにしようかな。

 そこまで深掘りするようなことでもないし、別にミヤネさんにしなきゃいけない話題でもなかったし。

 次の話題は何がいいかな。

 とりあえず俺は、乾杯の時に渡された飲み物を1口飲んだ。

 甘くておいしいなこれ。

 普通に炭酸のジュースだ。

 これは良いな。

 これは、誰が用意したものなんだろう。

 よし、次の話題はこれだな。

 俺は、ミヤネさんに聞いた。


「この飲み物とかってどうしたんですか?」


 ミヤネさんが、自分のグラスを指さして、これ? という顔をしたので、俺は頷いた。

 あぁ、これならという顔をして、ミヤネさんは言った。


「あぁ、それは、天野さんが持ってきてくれたのよ。自分で作ったのと、料理人仲間からもらってきたって言ってたわ」


 へぇ、天野さん、こういう料理もできるようになっていたんだ。

 料理ってすごいな。こういうのもつくれるのか。

 天野さんのイメージ的に、家庭的な料理とかそういう料理を作っているイメージがあったな。

 こういうパーティー用の料理とか飲み物とかも作っていたとは知らなかったな。

 天野さんさえいれば、本拠地で毎日パーティーとかも出来るのか。

 それは楽しみだな。


「こういうのも作れるんですね。料理人ってすごいな」


 ミヤネさんは、楽しそうに言った。


「料理人は、これからゲームが進むにつれ、絶対重宝されるわね。基本消耗品だから、需要を満たす供給をするのは難しいし、かなり強力なバフをつけることが出来るし」


 確かに、他の装備とかは、ある程度の耐久力があったら、あまり壊れないだろうし、修理も出来るし、補正値の変化以外だとあまり買い換えないのか。

 最新の装備じゃなくても良いとなると、装備系はすぐに供給側が多くなる。

 そうなると、良いものをつくれないプレイヤーの装備の需要は急激になくなっていくな。

 補正値を更新していけるようなプレイヤーの装備は、いつでも需要があるだろうな。

 その点、料理とかは、毎回消費するから、相当な生産力がなければ、需要が満たされることは難しいから、どんな料理人でも、これからある程度は重宝されていくんだろうな。

 まぁ、そんなことを考えなくても、天野さんの料理は、おいしいし、補正値も他と比較したわけではないけれど、高いからどうなっても需要があるだろうな。


「じゃあ、料理人の人はどこも引っ張りだこになりそうですね。天野さん学ランに入ってくれてよかったな。これで、料理の心配がなくなりますね」


 ミヤネさんは、満遍の笑みで言った。


「何より、どんだけ食べても太らない、おいしいものって時点で最高よね」


 俺はクスッと笑いながら言った。


「確かにそうですね」














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