身動きが……取れない!?
単刀直入に言おう。異世界に転生した。
これならまだ小説とかでよくあるパターンだ。
神様からスキルや特典をもらって異世界を無双するパターン。
もしくは何もない状態で、それでも現世の知識をフル活用して成り上がっていく等等。
僕もその内の一つだろうと思っていた。
なのに、これはあんまり過ぎる。だって僕の場合は……
「……動かないわね……」
「……これ、人形ですか……」
「にしては、心の臓も動いてるぞ」
「えっ??じゃなに、この子動けない呪いでもかけられてるってこと??」
「だろうな。それもこんなダンジョンのど真ん中でだ」
「うわぁ……私達が来なかったら死んでいたわよこの子……」
僕の周りをジロジロを見て回るのはやめてもらいたい。見世物じゃないだよこっちは!?
しかしそんな叫びもこの人達には聞こえない。
「どうしようか??」
「いやいや!連れて帰りましょう!!このままだとモンスターに殺られて終わりよ!!!」
「ですよね〜」
「遊んでないで運ぶ準備をしろ。全く動かない奴を運ぶなんざ普通の荷物よりも大変なことぐらい知っているだろうが」
そういってリーダーらしき渋い男の人がいうと、明るく調子のいい女の子が布を取り出して、もう一人の冷静な女の子が持っていた杖とリーダーの腰にあった剣の鞘を使い、簡易的なストレッチャーを作り出した。
そこに動けない僕を乗せて前にリーダーの男の人、後ろに二人の女の子がストレッチャーを持って持ち上げた。
「いいな。一気に駆け抜けるぞ!モンスターがいても無視しろ!!」
「はい!!魔法もダメですか!?」
「当たり前だ!!余計に向かってきたらどうするつもりだ!!?」
「ですよね〜」
3人が3人ともに両手が塞がっている。
この状態ではモンスターとの戦闘なんて無理過ぎる。
でもこの状態でも魔法が使えるなんて凄いな〜と感心していると、いつの間にか一気にさっきいた場所から運ばれているのに気付いた。
この人達、ダンジョンにいるからとても凄い人たちなんだろうなーとは思ったけど現世の世界ではまずいない程にかなりのスピードでダンジョンを駆け出している。
途中でモンスターが現れてもリーダーの人が蹴り一つで倒していく。
女の子達はとにかく付いていくのに必死な様子だ。
「す、スピード落として〜!!」
「鍛え方が足りないんだよお前らは!!」
「わ、私はまだ付いていけます!!」
「よく言った!!じゃまだ上げるぞ!!」
「へぇ??」
「余計なことを言うな〜!!!」
この先はよく分からない。
スピードが速すぎて何も見えなくなったのだ。