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第33話

 黒葬から伸びていく黒い閃光がミミズもどき――ワームと仮称する――の口を貫通する。当たった部位は破裂するように散らばってビクビクと痙攣したのち動かなくなる。弱点部位は頭部でいいみたいだ。


 黒葬一発で仕留められる程度の固さしかないが、地を這っている分纏めて当てることができない。いつか動物ゾンビと戦った時のようなやりにくさを感じながら一匹一匹狙撃していく。


 音緒さんも嫌そうな顔をしながらハンドガンを撃ちこんでいる。こんな生物は女性は苦手だろう。


 そのうち俺達に近寄れないことにしびれを切らしたのか後ろの方のワームが身体を曲げ、一気に伸ばし飛びこんでくる。


 10メートル程を一気に飛んでくると俺に噛みつこうと口を開けて迫ってくるが黒葬の銃身を横殴りに振るいワームを壁に叩きつける。


 弾力があるのか銃身や壁に叩きつけても潰れるなんてことはなく、ボトリと地面に落ちるとそこから再度動きだす。


 片手に極黒を取りだすと地面に張りつけにするように頭部に突き刺しとどめを刺すとビチビチ胴体部分を跳ねさせた後に動かなくなる。


空気(ルフト)っ!」


 うねうねとワームが集まっている中心部に圧縮された空気を発生させ一気に破裂させる。強度がないことで中心部に近いワームは身体を弾けさせ、離れているワームは勢いに押されて壁に叩きつけられる。


 直撃させれば効率よく、場所を考えれば俺達に辿り着かせることなく撃退できそうだ。


「音緒さん。近くに来たやつは任せたっ!」


「わ、わかりましたっ!」


 俺はそう言って空気(ルフト)を連発する。少しでも近づけないように最前列のワームに撃ちこみ弾き飛ばし進行を遅らせる。


 俺達のいる場所は通路の行きどまりだ。ずっといても後退することはできない。前に進まなければ攻略ができないどころか逃げ場もない。


 身体を曲げて飛びこむ体勢になったワームを優先的に空気(ルフト)で狙っていき、音緒さんも少し重そうだが右手にハンドガン、左手にショットガン・黒改を持って丁寧に一体づつ倒していく。


「これは……時間がかかりそうですね……」


「ああ、MPの残量には注意してね」


 先頭のワームを弾き飛ばし、それを構わずに入れ代わり立ち代わり迫ってくるワームを倒しながら洞窟を一歩一歩前に進んでいく。


 

 そうしているうちにだんだんとフォーメーションが決まってくる。音緒さんが俺の右斜め前方に立ちハンドガンを使い空気(ルフト)で倒しきれなかったワームを処理していく。稀に飛びこんでくるワームにはショットガン・黒改(こくかい)で大まかに狙いをつけ撃ちこんでいく。


 俺は空気(ルフト)で進行を遅らせ、弾き飛ばし、俺から見て左側の撃ち漏らしを葬っていく。


 じわりじわりとワームの大群を押し戻していき通路を進んでいくと、前方に道が開ける。そこまで進んでみると、そこには大きな空間。球場ぐらいの広さだろうか。


 相変わらず洞窟というのは変わらないが、今までの通路ではなく大量のワームが蠢く広大な広場があった。ここがワームの巣なのかもしれない。


 高さもあり、デコボコした岩の隙間に通路があるように見える。鍾乳洞に広がる空間みたいなところだ。


「何処か通路は繋がっていないのか?」


 蠢くワームを大量に弾き飛ばし、繋がっていそうな通路を探してみるが、広場に入ったところからは確認することができない。ワームを全滅させたり、そこまでの道を開いていかないと確認することもできず、か。


「く、久我さんっ!……っあれは!?」


 通路を探してキョロキョロしている俺の耳に飛び込んできたのは音緒さんの悲鳴のような声。


 何かと思い視線を追うと、そこには



 ——人型をしたワーム


 正確には、人型に折り重なっているワームが立っていた。


 何匹もの灰色のワームが筋肉の様に絡み合い、人の形を作り上げている。だが……顔は()()だ。


 顔だけが白く目鼻は窪みがあるだけで口は赤く染まってちゃんとある。身体は、筋肉を鍛え過ぎたボディビルダーのようにワームで形作られている。肥大化している右腕はワームが張り付いているのかさらに異常な太さと長さになっていた。


「まさか……異形がワームを防具のようにしているっ!?」


 俺からの距離は魔力を広げられる範囲外にいるので空気(ルフト)が当たらない。蠢くワームたちの間を掻い潜って異形を倒すのは骨が折れる。ならばっ!


 スナイパーライフル・黒葬(こくそう)を構えると心臓部に照準を合わせ、トリガーを引く。閃光が異形の胸部に当たった瞬間に心臓部に蠢いているワームが弾け飛ぶ。


 黒葬は貫通力を増したスナイパーライフルだ。いくらワームが密集していたとしても異形の心臓部ごと貫通して破壊できるはず!


 弾丸が直撃した異形は衝撃で一歩後ずさると、赤く染まった口をあざ笑うように歪にゆがめる。


 ――効いていないっ!?


「いや、そんなはずは……貫通力は増しているはず!普通のハンドガンでも倒せていたのに、威力の増したスナイパーライフルで倒せないなんて……弱点が、いや、違う……?」


 俺が一瞬呆気に取られた拍子に周りのワームが飛びかかってくる。ギリギリで飛びこんできたワームを銃身で叩き落としながら異形から目を逸らさず何が起こっているのか胸部を凝視する。


 胸部のワームが弾けとんだ部分、ワームがいなくなり一時的に胸板が薄くなってはいる。そこに身体中のワームがまた集まってきて装甲が完成する。



 そうか……〝爆発反応装甲〟みたいなものか……。確か二枚の装甲の間に爆発する物質を挟み、弾が当たると爆発し弾丸の威力を減少させる。それと同じような原理をワームが行うことで弾丸が当たった部分が破裂し、異形本体へのダメージを軽くさせている。


 こんな感じだろうか。俺もそれほど詳しくはないが、わかっていることはワームが周囲にいる限り弾丸が当たった部分はすぐにワームが寄り集まって再生しスナイパーライフルなどで倒すのはかなり難しい。


 それならば近接戦か?空気(ルフト)でワームを蹴散らし異形までの道のりを片づけ一気に近づくか異形がこっちに来るのを待つしかないか。


「っ!?久我さん!あっちにもっ!」


 焦りながら声を上げる音緒さんの方をさらに見るとそこにもワームが纏わりついている異形がいる。もしやと思い片っ端から周囲に空気(ルフト)を放ち山になるように重なっているワームを弾き飛ばしていく。


「……っ!?」


 その数6匹。弾けとんだワームの山の陰から姿を現したのは6体の異形。そのどれもが一回り大きく、身体中にワームが筋肉の様に纏わりついている。


 この人数は……まさかとは思うが、上田班か!?


 呆気に取られて攻撃の手が緩んでいる音緒さんに声をかける。


「音緒さんっ!異形は俺が何とかするっ!今はワームに集中してくれっ!」


 はっと気がついた音緒さんはハンドガンを撃ちながら悲しそうな顔をする。


「でもっ!……あれは、上田さん達、ですよね……?」


 音緒さんも気がついたか……たぶんそうだとは思うが、確証はない。人数が同じというだけだ。もしかしたらそこら辺に武器や服の切れ端が落ちているかもしれないが、完全に異形になってしまったら助けることはできない。


「異形になったらどうにもできないっ!」


 6体の異形に無数のワーム。一斉に襲いかかられたら俺でも凌ぎきれる自信はない。早めに異形は倒しておかないと。



 ――一気に行くっ!


空気(ルフト)!」


 一体の異形を倒すべく空気(ルフト)を連発しその途中にいるワームを弾き飛ばしていく。同時に俺は走りだしワームを弾き飛ばしてできた道を駆け抜ける。〝縮地〟。道が開けた瞬間にトップスピードになりさらに空気(ルフト)で〝異形〟への道が完全に開ける。


 このスピードにワームや異形じゃついてこれないはず!


 右手に極黒を持つと魔力を流し、異形の攻撃範囲外から胸部に向かって極黒を突きだす!


 突きだした極黒から魔力の刃が伸びるとそれに反応した異形が胸部をガードするように動くが、間に合わない。魔力の刃が異形に突き刺さり固いものを破壊する感触が手に伝わる。


 極黒の攻撃なら破裂しない?これなら何とかなる!

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