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第9話

 コンビニに戻った俺は段ボールベッドの上にへたり込む。

 ヤバかった。本気でヤバかった。


 気を抜いた瞬間の奇襲だった。

 上着を脱いでゾンビに掴まれた腕を見てみるが痣も擦り傷一つついていない。

 【幻想拡張】で付けた防御力アップが効いているんだろう。壁で擦れたはずの背中部分も全く傷ついていない。


 これがわかったのはかなりの収穫だ。


「ここまで防御力を上げてくれるのか。これがなかったらどうなっていたことか」


 思い出すと震えがくる。何が怖いって、俺自身がゾンビになることだ。


 ゾンビは元々人間だったと俺は仮定している。問題はどうやってゾンビになったかだ。

 大抵はゾンビの体液を取り込む、ゾンビに傷付けられて菌が入るなどがよくあるパターンだ。


 どうせ死ぬならゾンビになんかなりたくはない。


 近くに置いてあるコーヒーを飲んで気分を落ち着ける。一息ついて先ほどの戦闘を思いだしてみる。


 今までは背後からの不意打ちで倒していたが、今回は逆に不意打ちを受けたとはいえそこから挽回して正面から戦えた。


 まだ若干の恐怖はあるもののゾンビを倒すという忌避感はだんだん薄れてきている。

 それが良いことなのかは賛否がわかれるだろうが、現状ではそれでいいと思っている。躊躇してたら死ぬだけだとわかっているから。


「数をこなすって言うのは大事なことなんだな」


 そんなアホなことを考えつつ、正面から対峙した時のゾンビの動きを思いだす。

 ゾンビが両手を突きだしてのしかかるように迫る、俺は左に避けつつ剣を一振り、ゾンビの腕が切断され、振りむいて再度迫ってきたゾンビの首に一閃。


 我ながらほれぼれするような戦い方だ。そんな動きができるとは思わなかった。たぶんこれがレベルが上がったことによるステータスの恩恵なのかもしれない。


 だがそれでもゾンビは死なず、さらに斬り飛ばした頭に剣を突きたてても死なず。

 今の時点ではゾンビの弱点は心臓部のみだと仮定できる。


 もしかしたら腹にも弱点があるかもしれないが、初めて襲われたときの上半身裸のおっさんゾンビは脇腹が半分千切れて動いていたことを考えると、腹に弱点があるというのはなさそうだ。


 ゾンビに関する考察をおえると、念のためステータスを確認する。


「ステータス」



クガ ヤマト

タイプ:一般人タイプA

レベル:4

HP:20

MP:20

筋力:B+

耐久:B+

俊敏:B+

魔力:B+

精神:B+


固有スキル:幻想拡張


スキル:ソロアタッカー ステータス+



 レベルは上がっている。休んでいればMPと、たぶんHPも少しづつ最大値まで上がってはいくだろう。


 レベルはゾンビを倒すことで上昇する事はわかったけど、スキルはどうやって増えていくんだ?

 俺が持っている固有スキルを含めた三つ、謎の球体を壊した事で獲得することができたけど、それだけなのかな。


 ほとんどゲームをしたことがないから、レベルアップかイベント習得で覚えるぐらいしか想像できない。

 まあタイプが〝一般人A〟なのが気になるところだけど。


 下手すりゃこれ以上スキルを覚えないなんてこともあるかもしれない。


 それでも固有スキルが結構使えるし、トータルでスキルは三つもあるから不満はないけど、たぶん〝領域結界〟を壊してるから【ソロアタッカー】は死にスキルになっている感じがする。


 そっと【ソロアタッカー】をタップする。


【ソロアタッカー】パーティーを組んでいない時限定で結界領域内でのステータスが上がる


 うん、たぶん発動していない。

 実質的に便利スキルの【幻想拡張】と単純ステータスアップの【ステータス+】のみと言うわけだ。


 だが俺の知識不足のせいで【幻想拡張】がほとんど息してないんだよなぁ。

 今日もMP余りまくってて、使おうと思うが、何に使えば良いのか……。


 スマホが使えれば色々調べることもできるんだけどな。


 今日はレベル上げの目的を達成できたからここで終了にしよう。無理する必要はない。

 ここからは俺がやったことのあるゲーム知識から幻想拡張で使えそうな事を考えてみるか。

 俺がやったことがあるのはまずは国民的RPGであるドラ○ン○エスト。

 何年も前だからうろ覚えだけど何かヒントがあるかも知れん。


「初期装備は……ひのきのぼう、布の服とか?いやいや、装備じゃなくてアイテムは、ツボから手に入る薬草、毒消草、麻痺?を治す……何だっけ?名前が出てこない」


 ダメだ……基本薬草以外のアイテムを使わないプレイスタイルだったし、薬草も回復呪文覚えるまでのちょっとした応急処置に使ってただけだからアイテム名や効果を覚えていない。


 いやでも待てよ。毒消草は使えるんじゃないか?ゾンビ化は確定じゃないがおおよそ間違ってはいないと思う。

 ゾンビ化を予防する物、もしくはゾンビ毒(仮)を解毒できる物を作っておけばいざと言うときに役に立つ。


 それと同時に薬草、これも国民的?RPGのFFのポーションやエリクサー的なのを一緒に作れれば致命傷も回避できるのでは?


 今は全く役に立たないけどMPを回復する薬も作れるかも知れない。エルフの何とかってのがあったはず。貴重だから使ったことないけど。


 思い立ったが吉日。って言葉は合ってるかわからないが俺は冷蔵庫からそれっぽい飲み物を探していく。


 候補になったのはこの三つ。

 一つ、何処にでも売ってるスポーツドリンク。風邪の時に飲めば栄養が取れるって言うよね。


 二つ、機能性ドリンク。所謂C○レモンとかの栄養ドリンクまでいかない物。


 三つ、まあ栄養ドリンクだ。


 できることなら容量の小さい栄養ドリンクで色々作れれば楽にはなる。

 できる限り少量で効果の高い物が目標だ。


 ゾンビ毒(仮)がどれぐらいの時間で作用するかわからないし、瀕死の時に500mlのペットボトル全部飲み干さなきゃ効果がない、なんて事になったら話にならない。


 優先順位はゾンビ毒の解毒薬、回復薬、MP回復薬の順番だ。


 イメージは……何だ?毒の解毒のイメージが湧いてこない。解毒薬解毒薬、イメージとしては注射なんだけど、注射器を上手く使える自信はないから飲み物。


 解毒薬を飲むのは……


 ーーモ○ハンだ!


 確か青っぽいビーカーみたいなアイコンで、俺はほとんど漢方薬を使ってたから思い出すのに時間がかかってしまった。


 栄養ドリンクを一本持って集中する。イメージは一息で飲める解毒薬。


「幻想拡張」


 手から、身体から魔力が流れて栄養ドリンクを包み込む。

 頭の中に二つの選択肢が朧げながら見えてくる。


 ーー栄養ドリンクの効果を高めるのか?


 ーー関連するイメージの物へと変化させるのか?


 選択は後者。栄養ドリンクからゾンビ化に対する解毒薬へ。

 関連性が薄いのか、変化の兆候は感じることはできるが中々変化せず魔力が栄養ドリンクを包み込んだまま時間が過ぎていく。


 俺はイメージを途切れさせることなく、集中して解毒薬のイメージを送り込む。


 どれぐらいの時間が経ったのか、栄養ドリンクを包み込んだ魔力が動き始め収束して一本の瓶が手に残る。


 形は変わらず、茶色い瓶でラベルがなくなりキャップのロゴもなくなっているシンプルな見た目。

 成功したと俺のスキルは言っているようだが……


「効果が表示されるとかないから実際使ってみるまでわからないんだよな……」


 ゲームみたいに効果が表示されるとかないものかね?

 成功しているのは感覚でわかるけど、解毒薬みたいなのは毒もらってからじゃないと効果が発揮されないアイテムはちょっと怖い。


 効果を確認するためにわざとゾンビに噛まれるとか論外だし、んな事したら毒よりも先に普通に死にそうなんだよな。


 上半身裸のおっさんゾンビは内臓ぶちまけて歩いてたから、多分死体でもゾンビになりそうだし。


 集中しすぎて感覚がちょっと変になっているが、他の回復薬とMP回復薬も作ってみよう。


 俺は陽が落ちるまで、黙々と栄養ドリンクを加工していった。

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