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第24話

「終わったなら後は自由時間で良いよ。無理してやる様な緊急性もないしね」


 俺が音緒さんにそう話しかけると音緒さんは困ったように頭を振る。


「私も……もっと、みんなの役に立ちたくて、何かお手伝いできることはないですか?」


 手伝えることか……。俺の方にはないが、崩れている家屋の撤去や畑の拡張などやることはいろいろあるが、たぶんそういうことじゃないのだろう。〝彼女にしかできないこと〟それをやりたいのだとは思うが。


「音緒さんに求めているのはスキルのアイテム強化を使った戦力強化だ。だから今以上となると〝タイプ持ち〟として戦力になるってのもできると思うけど」


 今の音緒さんはみんなの支援としては間接的な戦力にはなっているが、直接的な戦力にはなっていない。サポートタイプに出会ったのは初めてだが、ゾンビを倒していけば何かスキルを獲得できるんだと思う。


 〝タイプ持ち〟だと赤城コミュニティの優希くんの縮地、優里亜さんの土属性魔法。後は斑鳩くんの金剛など一般人タイプとちょっと違ったスキルを獲得できるはず。本人が望むようならレベル上げを手伝ってあげれば何かのスキルを覚えるかもしれない。


「戦力ですか……直接戦うってことですよね?でも戦闘班のみんなと違って私は弱いです……」


 俯きながら音緒さんが答える。確かに通常スキルがない音緒さんは現状では弱いだろう。


 ただ、スキルさえ獲得できれば他のタイプ持ちみたいに戦えるんじゃないかとも思う。サポートタイプってどんな戦い方があるんだろう?辛うじて思い浮かぶのはFFT。FF○クティクス。確かアイテム士って職業があった気がする。武器は……銃使わせてたような。


 うろ覚えの知識で何とか思い出すと俺はハンドガンを取りだす。まだ黒くなっていない普通のハンドガンだ。ゾンビ程度だとこれで十分なのでこれを貸してあげれば戦えるんじゃないかな。


「レベルを上げることで今より多くの強化ができるし、もしもの時に役に立つ。頑張ってレベルを上げてみない?フォローはしてあげるから」


 俺の提案に音緒さんは少し考えるそぶりをすると、覚悟が決まったのか俺の目を見てしっかりと頷く。何が彼女をそこまで突き動かしているのかはわからないが、レベル上げをする気にはなったみたいだ。


「が、頑張ってみようと思います。……あの、よろしくお願いします」



◇◇◇



 覚悟が決まった音緒さんと共に敷地外へ出るために出入り口になっている建物へ入る。暗くなってお化け屋敷の通路みたいにしてしまった建物だ。


「ひっ……!?なんで、こんなになっているんですか?これも久我さんがやったんですか!?」


 暗さにちょっと音緒さんがビビりつつも俺についてくる。


「うん、そうだよ。ちょっといろいろあってこんなになっちゃったけど大丈夫。便利にはなっているよ」


 黒い通路なので俺もどうにかしたいと思っているが、幅もあるし使い勝手は前よりも向上はしている。後は慣れの問題だろう。


 俺がすたすたと歩いて行くと音緒さんも俺の後ろにピタッとくっつくようについてくる。出口を出ると明るい日差しが差し込みあからさまに音緒さんがほっとしているのがわかる。


 これから本番なんだけどな。


「じゃあ音緒さんにはこれを渡しておくね」


 俺はそう言うとMP回復薬とハンドガンを渡す。MP回復薬は午前中の強化で消費しているMPの回復のため、ハンドガンは近くに行かなくてもゾンビに攻撃できるためだ。前に愛理さんのレベルアップを手伝ったのを思いだす。


 あの時も一体一体ゾンビを倒して堅実に上げていったことを思いだす。音緒さんの場合はレベルが5になっているので多少は慣れていると思うが、見ているとちょっと接近戦は難しそうに感じた。


「銃なんてあるんですね……。使い方がわからないです。後この瓶は……」


 安定の茶色い瓶に不審に思ったのか音緒さんが首を傾けているが、まあこれは想定内。MP回復薬であることを説明し、銃の使い方を教えてあげて準備ができたらゾンビ狩りのスタートだ。


 残っていたMPでハンドガンを試射させて使い方を理解してくれたので俺達はゾンビを探す。


 領域結界から出たアナウンスで音緒さんがビクッとしていたが、緊張感が出て良いだろう。


 結界の周囲にはゾンビはいないように感じるが、倒壊した建物で見通しが悪くはっきりとはわからない。


 魔力を周囲に広げてみるが……うん、俺の感知できる半径50メートル以内にはいなさそうだ。


「ここら辺にはゾンビはいないな。もう少し遠くまで行ってみようか」


「そ、そんな事までわかるんですね……」


 緊張したままの音緒さんのペースに合わせてゆっくりと近くの通りまで歩いていく。


 これは、俺がここまでくる時にゾンビ倒しまくったから一時的に減ったのか、それとも〝異形〟でも出てるのか?


 そこら辺の判別は俺にはできないが、異形が出てくれればレベル上げもしやすいので丁度いいんだけどな。


 大通りまで出ていくと、三体のゾンビがゆっくりと歩いているのを発見する。物陰に隠れながらどうしようか考える。


 このまま見つかっても良いからゾンビを呼びまくって大量に倒すのが良いか?それとも堅実にいくか……。


「俺がゾンビの頭部を破壊する。頭部を破壊したゾンビから音緒さんは確実に倒してほしい」


「わ、わかりました。……どれから、倒しますか?」


 ハンドガンを握りしめながら緊張した面持ちで聞いてくる音緒さん。


「右から行くよ」


 俺も黒く染まったハンドガン——鑑定すると黒蓮(こくれん)となっている——を取り出すと物陰から飛び出し、ゾンビが俺に気がついて声を出す前に三連射。


 一発目は右端のゾンビの頭を吹っ飛ばし、二発目は真ん中のゾンビの頭部を、三発目は左端のゾンビの顎に掠るように破壊する。


 左端のゾンビには掠っただけだが顎を破壊しているので大丈夫だろう。チラリと音緒さんを見ると俺の視線にはっと気がついてハンドガンを構えて慌ててトリガーを引く。


 一発目は外れ。ゾンビに当たる事なく閃光が通り過ぎる。


「落ち着いて。ゾンビは仲間を呼べない。ゆっくりで良いから確実に狙っていこう。近くに来たら俺が倒すから。一体づつ確実にね」


 俺がそう言いながら顎が砕けたゾンビの胸に撃ち込んで一体倒す。


 それを見て落ち着いたのか、慎重に狙いをつけると近寄ってくるゾンビに弾丸を撃ち込んでいく。


 その間に他にゾンビの接近がないように魔力を広げて警戒する。範囲内には数体のゾンビはいるが、動きはなさそうなので気付かれてはいないっぽい。


 音緒さんは数発撃ち込んで一体目を倒し二体目も何とか倒すことができた。


 緊張が途切れたのか音緒さんは座り込んでしまったが、すぐに立ち上がると申し訳なさそうに俺の近くに寄ってくる。


「ご、ごめんなさい。上手くできなくて……」


「大丈夫だよ。まだ始めたばかりだしね。ゆっくりやっていこう」


 レベルが5あるだけあって初めてゾンビと戦った俺や愛理さんよりだいぶマシだと思う。あの時は一体倒してギブアップだったから。


 そのうちスキルを獲得できれば効率も上がっていくだろう。


「まだやれるかな?」


「はい。次はもっとしっかりできると思います」


 まだ戦えるなら十分だ。これからは時間のある時は音緒さんのレベル上げを優先しても良いかもしれない。


 午前中はアイテム強化を使ってもらい、午後はレベル上げって感じで良いかも。ただ強化のノルマを増やすと午後のMPに響くからそこは変えずにって感じかな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 面白い
[一言] なんかすごく依存されそう・・ 危ないキャラが出来上がりそうな予感
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