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第18話

 コンテナの中で強化しては休むを繰り返す。疲労が濃くなってきたらソファで寝る。


 それを何度か繰り返しているうちにいつの間にか叩きつけるような雨音がしなくなっていた。


「雨は止んだか?」


 ちょっと頑張りすぎてコンテナの中に籠っていたので時間の感覚も曖昧だ。雨が止んでいるなら外に出て日の光を浴びたほうがいい。


 けだるい身体を起こしながらコンテナの扉を開けてみる。光が差し込み薄目をあけながら手で光を遮る。久々に光を浴びたような気がする。身体を伸ばしながら気持ちのいい晴れ渡った空を眺める。


「そろそろ移動するか。コンテナに籠るってのは初めての経験だったけど、緊急的にはありだな」


 コンテナの中に出しっぱなしにしていたソファ、椅子、干していたマント、スーツをアイテムボックスに収納し、リュックの中に【領域結界】コアを入れる。


 改めて見ると全身黒ずくめの犯人に見えなくもないが、パーカーのフードを被らなければ大丈夫だろう。黒でも怪しくないスーツって何て万能な洋服なんだと、作った人は天才だなと思いつつコンテナを降りる。


 まだ少し水が溜まっているところはあるが、逆にそれは俺にとっては有利にしか働かない。いや、あってもなくても大して変わらないか。アスファルトや土を変換して攻撃すればいいのだから……。


 俺がこれから行こうと思っているのは人が集まっているコミュニティだ。どこにあるのかはわからないけど、ショッピングモールには見たところ戦闘要員しかいなかった。奴隷として人を扱っているとするならどこかで作業をしている人間がいるはずだ。それを探したい。


「そんな時はスキルの探知的なものがあれば発見できると思うんだけど、それがいまいちイメージできないんだよな」


 自分の見えないところには視線は届かないし、人の気配があれば何となくだが勘で察知できることもあるが、それが遠すぎるとできる気がしない。どういう理屈でできているのかがわからないからだ。


 たぶん魔力を飛ばしてそれを感知するとかになるんだろうけど、やってみてもたぶん半径50メートル程度が限界なんじゃないかと思う。使い方が違うのか、何なのかすらわからない。


「とりあえず、実験がてら探してみるか」



 散歩をしながら大通りを歩いて行く。今の俺ならゾンビがこっちを感知する前、感知した瞬間に倒すことができる。複数同時でも問題はない。


 歩き始めてすぐに前方にゾンビを発見。


 ゾンビが気がつく前にゾンビの真下のアスファルトを棘に変えて下から串刺しにする。魔力が広がり地面に作用するのに若干のタイムラグがあるが、使っていくうちに慣れるだろう。


 何かキーワードを設定してもっと安定させれば早くなると思うが、できるだけキーワード無しでできるようにしたい。まだまだ練習が必要だ。


 しっかりと股下から心臓部まで貫通しゾンビが動かなくなる。すぐに棘は崩れ元のアスファルトに戻る。


「ただのゾンビを倒すのならこの程度で十分。次は何か武器を使ってみるか」


 どうしても使ってみたいのが短剣・極黒(ごくこく)。ゾンビに使ってもいまいちわからないような気がするが、どうしても使ってみたい。絶対に強いからだ。


 歩道を歩きながらゾンビを探す。すぐに脇道に二体発見。


「実験がてら大量に倒してみるか……」


 ゾンビに寄ってきてもらった方が楽だな。


 今まであまり出番の無かったスナイパーライフルを取り出す。これは威力を上げたものだ。


 建物の陰からゾンビに照準を合わせ、トリガーを引く。軽い反動とタンッと軽快な音を立ててゾンビの腹に命中。


 衝撃でゾンビの一体が半分千切れながら吹っ飛んでいく。いまいち威力の上昇がわからない。


 そしてもう一体のゾンビが俺を感知し、声を上げ近づいてくる。


「あぁ〜あ゛あぁ〜」


 スナイパーライフルから極黒に武器を変え、抱きつくように飛びついて来たゾンビの両腕に振るう。


 あっさりと両腕を切断するが……別にこれは今までの短剣でもできた。すぐに心臓部に突き立ててゾンビにとどめを刺す。


「いまいち強さがわからない。異形の肥大化した部分をどれだけ斬れるかぐらいじゃないと判断できないかも」


 ゾンビに叫ばれたことで、他の路地にいたゾンビや大通りにいたゾンビが俺をめがけて集まってくる。やはり東京よりも格段にゾンビが多い。


 この多さを考えると、【領域結界】を破壊したほうがいいのか、破壊せずに利用したほうがいいのか迷うところだな。


 ざっと周囲を見回し、人間がいないことを確認する。集まっているのはゾンビ十数体。まだまだ集まってくるだろうがとりあえずはこれでいいか。


「幻想拡張」


 念のためスキルを口にする。まだ完全にコントロールできるわけじゃないので安全に行こう。一瞬にして俺の周り、半径50メートル程度に魔力が広がり、範囲内のゾンビを補足する。視界に入ってないゾンビは少しやりにくい。


(ニードル)


 イメージしやすい名称を口ずさむ。


 捕捉したゾンビの地面が隆起し、一本の針となりゾンビ達を一斉に串刺しにする。倒したゾンビの数は……10体ほど。他にも刺さっているゾンビはいるが心臓部を外して地面に繋ぎ止められている。


「一気に出せる数はまだ余裕がある。ただコントロールは下手くそ……と。いや、十体程度を一発で心臓部に直撃できたんだから冷静に考えれば異常な命中率だと思っていいのか?」


 すぐに(ニードル)が消えて、ゾンビ達が解放される。倒せなかったゾンビも足を貫かれたゾンビは倒れて這いずり、腕を貫かれたゾンビはそのまま近づいてくる。


 ゾンビ達の仲間を呼ぶ合唱を聞きながら俺は歩きだす。幻想拡張で広げた魔力はキープしたまま、倒せていないゾンビに再度(ニードル)を使っていく。


 他には何かできないか?雨が降っていればもう無双状態だが、天気の良い日は降ってくる雨を利用できない。他にあるものは……空気、風?


 優里亜さんの魔法は魔力を属性に変化させて使う。例えば魔力を土の塊にするみたいな。たぶん俺もやろうと思えばできるのだろうが、今はあるものを使って攻撃したい。その方が奇襲の意味でも使い勝手がよさそうだ。


 考えながら歩いているため集中力が散漫になっているので(ニードル)を潜り抜けてゾンビが襲ってくるがそれを極黒で一刀両断にしつつ新しい技を考える。


 空気……空気を何かしらの毒に変化させて大虐殺を行う?ゾンビに効く毒なんてあるのか?てか、もし俺がそれ吸ったら死ぬ可能性もあるので却下。現状そこまで困っていない。


 風……風を起こして斬り裂く。かまいたちの強力版。結構練習しないと厳しそうだが……衝撃波とかどうだ?前後左右に群がられたときに一撃で全員吹き飛ばす的なの。いやそれ必要か?群がられた時点でほぼ詰んでる気がしないでもない。


 でも空気や風を利用して行動を阻害するってのは悪くないと思う。ゾンビも異形も地面を歩いたり、物理的な制限をある程度持っている。〝肉塊〟を見た後だと今後も同じだとは言いきれないがやってみても損はない。


 近づいてくるゾンビの目の前に空気の塊を作りだす。空気を圧縮し触れれば弾け飛ぶ空気の爆弾。名称は……


空気(ルフト)


 確かドイツ語で空気って単語だった気がする。なぜドイツ語か、それは風魔法の使い手が現れたときに英語で名称をつけている可能性が高いからだ。被ってしまうと俺のイメージが崩れる可能性がある。その人の方がメインで風を使うだろうし。イメージが引っ張られてしまうのは避けたい。


 (ニードル)は良いのかって問題があるが、そこは優里亜さんに名づけを被らないようにお願いしておけばいい。


 そしてゾンビと俺との距離は約5メートル程で空気(ルフト)がゾンビに触れて爆発を起こす。


 ゾンビは爆発で吹っ飛び、俺にも風が当たって立ち止まる。ゾンビはすぐに立ち上がって迫ってくるので今のところは倒せるような威力にはなってないが、一時的に行動を阻害することはできそうだ。イメージが固まっていけば今後威力は増していくだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公のスキルはまさにチートスキルですが、主人公自身のイメージが良い感じにストッパーになっているのが良いですね。 次はどんなスキル使うのかというワクワク感が最高です。 敵?ライバル?側にも…
[一言] 面白い
[一言] 気付いたのですが、主人公は実はばかげたスキルを持っています。 彼は想像力で魔法を作ることができました。 彼の想像力の中でより堅固なイメージは、それがより致命的である可能性があります。 彼が原…
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