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第13話

 翌日、早朝の時間から俺達は動き出す。


 装備はいつもと同じ短剣二本、ハンドガン二丁、スナイパーライフル一丁だ。ゾンビとの戦い方も前回と同じで七瀬さんが射撃、撃ち漏らしたら俺が倒す。


 俺のレベルが上がりづらくなっているので、戦力アップのためにも七瀬さんのレベリングも行っておきたい。


 マンションを出るとすぐにゾンビ一体を発見。


「今日はこれを使ってみます」


 そう言うと七瀬さんはスナイパーライフルを取り出す。スコープを外すとそのまま構えゾンビを撃ち抜く。ハンドガンよりも高威力なのでゾンビが吹っ飛ぶのを確認すると俺が飛び出す。


 倒れたゾンビに短剣を突きつけ確認するとゾンビの胸には穴が開き、事切れているのを確認する。スナイパーライフルだと威力が高くてゾンビが吹っ飛ぶから倒したかどうかの確認がしづらい。


 ハンドガンに変えてもらおうかなと近づいてきた七瀬さんを見ると、満足げに頷いているので俺は言葉を飲み込む。まぁ倒せるなら何でもいいか。


「MPの消費や反動はどう?」


「消費はハンドガンと同じで、反動は強めですけど問題にならないぐらいですよ」


 七瀬さんの消費も俺と同じなら1のはずだから平気か。乱戦時はスナイパーライフルじゃ使いにくいだろうけど、乱戦になるような状況ならまず逃げるので七瀬さんがゾンビを問題なく倒せると言う自信の方が今は大事だ。好きな武器使ってもらおう。


「アサルトライフルやショットガンも今度強化して使ってみる?」


 俺は歩きながら七瀬さんに聞いてみる。


「アサルトライフルって連続で撃つやつですよね?ハンドガンがあるので大丈夫そうです。ショットガンは、まだ近づくのは怖いので遠慮します」


 七瀬さんは微妙な顔して断ってくる。ん〜そのうち一丁ぐらいは強化して俺が試しに使ってみるかな。


 俺達はできる限り大通りを避け、事前に打ち合わせしておいたルートを通ってスーパーに向かう。若干ゾンビの数が多いか?


 七瀬さんはスキルの影響もあってかゾンビが気づいていない状況なら最初の一発は外すことはない。俺の仕事は複数の場合やいきなりの遭遇の時だけでかなり楽ができている。


 反面、七瀬さんが消耗してきている。いつゾンビに襲われるかわからない緊張状態で集中した射撃を行なっているのだ。


 ちらちらと七瀬さんの状態をチェックしながら歩いているが、このままだと七瀬さんのMPが切れる前に集中力が切れてしまう。その前に一度休憩したい。


 俺は周囲を見回してみる。少し先に半分だけ崩れた家があったのでそこを一旦休憩場所にする。


「七瀬さん、ちょっと休憩しましょう」


 無言で頷く七瀬さんを連れて慎重に中に入りゾンビがいないか確認する。家の中は物が散乱して座れる状態じゃないので、マンションから持ってきた二人掛け用のソファーを出してあげる。


「七瀬さんどうぞ。警戒は俺がしているのでしばらく休んでください」


「ソファーなんて持ってきたんですね。ありがとうございます。助かります」


 七瀬さんは水分補給をした後にソファーに横になる。そのうちベッドも持ってきてもいいかもしれないな。


 俺は家に転がっていた椅子を外が見える窓辺に置くと腰掛ける。一体のゾンビが道路を通っていくのが見え、倒しておこうかと思ったが七瀬さんが休み始めたばかりなので大人しくしておく。


 横になって目を瞑っている七瀬さんをチラリと見て考える。もう少し七瀬さんの負担を減らすか?目的はスーパーの物資の回収だ。レベリングを優先してスーパーに着いたら疲れて動けませんじゃ話にならない。


 休憩後からは交互にやっていけば七瀬さんの負担も軽くなるだろう。


 少しの休憩ののち、俺達は改めてスーパーを目指す。



◇◇◇



「大和さん、これ……人の声ですよね?」


「そうだね、七瀬さん。たぶん……戦闘中、ですよね?」


 休憩をおえた俺達は、七瀬さんの消耗を抑えるために交互にゾンビと戦い、もう少しでスーパーにたどり着くところまで来ることができた。そこで耳にしたのは、微かに聞こえる人の声。


 ゾンビ溢れるこの世界でむやみに大声を出すのは自殺志願者かよっぽどのアホ、もしくは気がふれてしまった致命的な人達だけだろう。すなわち、そういう人じゃないのなら声を出さざるをえない状況、複数での声を出さないと不味い戦闘中であると予想される。


 スーパーに近づけば近づくほど、静まりかえった世界に人の声という雑音が入ってくる。途中見かけたゾンビはその雑音を目印とするようにふらふらと歩いて行ったのを確認している。後ろを向いてくれているので倒しやすいことは倒しやすいのだが、俺達の後ろからゾンビがくる可能性が高まり気が気じゃない。


 ゾンビの歩いていく方向を見る限り声の発生場所は俺達が目指しているスーパー近くの可能性が高く、進めば進むほど面倒な状況に自分から突っ込んでいくことになる。


 七瀬さんもどうするか迷っているみたいだ。七瀬さん自身が集団で戦っている戦闘に介入して戦局を変えられるほどの力も経験もないと言うのが理由だろう。


 もしかしたらゾンビが多いってだけで安定して戦っている可能性だってある。不利であるならただのゾンビ相手なら俺が一点を突破してそこからみんなで逃げる、有利に戦えるところまで撤退することもできるとは思う。


 ここまで来て物資を回収せずに撤退するのも悔しい気がするし。行ってみて何とかなりそうならちょこっと介入して無理矢理恩を売り情報を得ることができるかも。


 まあ俺より一ヶ月先行している人達だし俺より高レベルだと予想できる。ただのゾンビ相手に負けることはないとは思っているが、問題は防御力。ノーダメージで戦闘を終えるのは結構厳しい。どれぐらいの傷でゾンビ化するかは知らないが擦り傷でゾンビ化するなら一瞬の気の緩みで全滅だってあり得るのが怖いところだ。


「行くだけ行って何とかなりそうなら介入。無理そうなら撤退。どうかな?」


「そうですね。助けられるなら助けたいですし」


 緊張した面持ちで、それでも嬉しそうに言う七瀬さん。まずは二人で声の方に向かう。後数メートルでスーパーの入り口が見えるところまで来ると――いた。


 俺の中では第一村人を発見したような嬉しさと微妙さがある。見つからないようにそっと物陰から声の方を覗いてみる。


「……? 戦っているわけではない?」


 身体中に防具を着けた、普段そんな姿をしていたら不審者かスケボーやローラースケートなどの練習中の子供かと思われるような大人が誰かと言い合っていた。相手の姿はここからは見えないし正確な声も聞こえないが激しく言い争っているようだ。


 鑑定眼鏡を使って覗いてみるが有効距離が離れているのか表示もされない。七瀬さんも不審な顔をしてスーパーの入り口前のだだっぴろい目立つところで言い争いをしていると思われる男性を見ている。


「何か言い合っているみたいですね。別のコミュニティと遭遇して喧嘩になっているとか?どうしましょう?入り口にいられると邪魔ですよね」


「まあゾンビじゃないなら俺達には関係ないから裏口に回ろうか。集まってきたゾンビは彼らに責任を持って対処してもらって、俺らはその間に物資回収と行こう」


 俺の素晴らしい提案に七瀬さんは苦笑しながら「漁夫の利ですね」と言いながらついてくる。正面入り口から見えない部分を通って俺達は裏口に回る。裏口はシャッターが閉まっていたが、従業員通路の鍵が開いていたので難なく侵入することに成功する。言い争いをしているアホが入ってくる可能性も考えて鍵は閉めておく。


 ただ倉庫内は暗く、天井付近の窓から多少光が入ってくるだけなのでゾンビがいると見つけにくいかもしれない。


「暗いから念のため俺が警戒をするよ。七瀬さんは片っ端から段ボールを回収。開封されて個別になっている物は時間がかかるから後回し。ただし食品は優先的に回収しよう。七瀬さんも欲しいものがあったらバンバン入れちゃっていいから」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 本文中の『?』ですが、文章として『?』の後には1つスペースを空けるのが作法らしいですよ。 例文はこんな感じです。 「え……? そんな、嘘だろ」 [一言] 見つかったらもめそうな事し…
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