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第14話

 それからも俺は休むことなくゾンビと戦い続ける。


 三十体倒した時点で数えるのをやめた。

レベルアップの間隔を数えたかったがそれどころじゃない。

 ステータスと疲労軽減が付いている革靴のおかげで戦い続けることができているが、少しづつ疲労が溜まっていることがわかる。


 崩れたビルの陰、曲がった道の先、大通りからと、まるで湧いてくるようにゾンビが集まってくる。

 ゾンビの視線が途切れることなく続いているため隠れることもできずにいる。


 一時凌ぎにしかならないだろうが、今はどこかに身を隠してゾンビが集まる状況をリセットしたい。

 

「くそっ、どこか逃げ込めるところはないのか!?」


 延々と続くゾンビループに徐々に焦りを感じながら逃げ込める場所を探す。


 周りには崩れている建物や物陰ぐらいしかなく、奇襲をするために一時的に隠れるのには向いているが、ゾンビが集まってきている中では身を隠し続けることはできない。

 ゾンビに見つかった時には囲まれて逃げられなくなる。


「はあ……はあ……」


 走りながらゾンビを倒し、やっと一つの崩れていない民家を見つけることができた。

 門が開けっ放し、玄関の扉も半分開いている。外見は薄汚れているが、崩壊前は白と黒のシックな見た目だったんだろう、都心にあるような小洒落た家だ。


 俺はここに避難することに決める。

 まずは家の玄関から見えているゾンビを一掃しなければいけない。

 俺は気力を振り絞り、家の周囲を何度か回ってゾンビを駆逐する。


 一瞬ゾンビの視線が途切れたことを確認すると玄関に飛び込んだ。


 玄関のドアを閉めると視界が真っ暗になるが、俺は息を整えつつ目が慣れるまで気を抜かずじっと聞き耳を立てる。


「はぁ、はぁ……周囲のゾンビが家に来ている様子はなし…。家の中は物音一つしない」


 目が慣れてくると家の中が見えてくる。目線の先にはすぐに二階に続く階段。その手前には左右に扉がある。


「休めるだけでもありがたいが、できることなら物資があるとなお良い。……お邪魔します」


 土足のまま家に入るとまずは左のを覗いてみる。ここは寝室でベッドが置いてある。窓も小さいしカーテンが掛かっているから、後で使わせてもらおう。


 右の部屋はキッチンとリビングだった。ここで物資の補充をしたいが、日当たりよく作られていて、カーテンが全開なので外が丸見えだ。

 外壁があるとはいえ、ちょっと怖い。今すぐ探索するリスクを避けて先に二階にいく。


 二階にも部屋が二つ。一つは倉庫になっていて、後で何か探してみよう。


 もう一つは……日本ではありえない銃器類が大量に部屋に散らばっていて、俺は意味が分からず固まった。


 日本で銃器が家にあるなんてありえないだろう。警察なら拳銃ぐらいは持っているのは知っているが。


 戦時中の武器庫かよって、映画の知識しかないが地震で崩れたんだろうと思うがそこらじゅうに転がっている。


 ハンドガン、子供身長ぐらいあるスナイパーライフル、何が違うのか知らないたぶんアサルトライフルやショットガンだと思われる物。


 銃に興味がないから詳しくはわからないが、身体中に銃器を身に纏い華麗にゾンビを倒していく俺が頭の中で踊り回る。

 ふっ、俺の時代が来たのかもしれん。


 テンション爆上がりで身体の疲れが吹っ飛んだ俺は、とりあえす倒れている棚などを軽く片づけて落ちているハンドガンを拾ってみる。


「結構重いんだな」


 わくわくしながら適当に構えて一通り遊んでから、ハンドガンをいじってみる。

 今まで興味のカケラもなかったが実際持ってみるとめちゃくちゃ楽しい!だが……弾の入れ方がわからん。


 素人が弄り回すのもちょっと怖いので何か説明書的なものがないか床を見回してみる。

 そこで見たくないものが見えてしまった。

 本当は何処か心の片隅ではわかっていたのかもしれない。


 ――BB弾――


 袋に大量に入っていて、俺だって知っているプラスチックの物から銀色の物、銃弾の形のどう使うのかわからないものまである。


 一気に急降下するテンションと、そんな馬鹿な、現実ってこうだよ、アホなの?という言葉が頭の中でぐるぐると回る。


 最序盤はナイフで、途中からハンドガンを手に入れて、スナイパーライフルやショットガン、何でか知らないがクッソ強いマグナムをぶっ放す某ゲームの主人公が崩れていく。


 ちなみに俺はマグナムを使ったことがない。もしもの時の為にとっておいてクリアしても使わない所謂エリクサー症候群てやつだな。知らんけど。


 テンション駄々下がりな俺は疲れがどっとぶり返して座り込む。壁に寄り掛かって転がっている玩具を何とはなく見つめる。


「ステータス」

 


クガ ヤマト

タイプ:一般人タイプA

レベル:9

HP:57

MP:57

筋力:B+

耐久:B+

俊敏:B+

魔力:B+

精神:B+


固有スキル:幻想拡張


スキル:ソロアタッカー ステータス+



 レベルがかなり上がっている。ゾンビ片っ端から倒してたからな。

 問題は、どれだけレベルが上がってもゾンビは()()()()倒さなきゃいけないってことだ。


 俺にはゾンビを纏めて倒せるような魔法みたいなのは使えない。もしかしたら覚えられるかもしれないが覚え方がわからない。


 銃があれば離れている時に数を減らす、一発で倒せなくても手足にあたれば動きを阻害できる。

 近づいたら剣でって考えていたんだが、まあそんな都合のいいようにはいかないか。


「幻想拡張で玩具を本物にするか?でも弾がない。BB弾から銃弾なんて作れるのか?作れたとしても銃弾にはサイズがあったはず」


「考え方を変えて玩具のまま強化するか?BB弾も強化して威力を上げる。確かガスガンならデフォでアルミ缶貫通できるって聞いたことはある」


 いや、そうじゃない。幻想拡張は俺のイメージが重要だ。別に本物にしなきゃいけないわけじゃないし、そのまま強化して使うという縛りも必要ない。


「そうか、やってみる価値はあるかもしれない」


 ハンドガンを手に取り眺める。


「幻想拡張」


 俺の身体から、手から魔力が流れハンドガンを包み込む。そういつも通りの光景だ。


 イメージだ。鉄の棒を鉄の剣にしたように。このハンドガンにも俺のイメージを乗せて集中する。


 集中することしばし、ハンドガンを包み込んでいる魔力が形を変えていく。


 すぐには終わらず、魔力が迷うように、染み込むようにハンドガンに浸透していく。


 初めての感覚だ。


 初めの魔力だけじゃ足りなかったのかハンドガンに魔力が吸われていくのがわかる。魔力の消費が大きい。


 急激に魔力を吸われたからか一瞬ふらつくがここで集中を途切れさせるわけにはいかない。


 我慢して我慢して、ようやく魔力が落ち着いて完成した。


 俺の手の中には見た目がほとんど変わっていないハンドガンがあった。


「見た目は変わっていないが、完成したことはわかる」


 ステータスを確認するとMPが20も減っていた。


 今までの消費の十倍か、レベルの低いうちは頻繁にはできないな。


 ハンドガンを、どこにしまおうかと思って、ズボンの後ろにさしておく。やっぱハンドガンはここでしょう。


 バッとスーツを翻して、ハンドガンを構える。数秒して顔が緩んでくるのがわかる。

 ヤバい……俺ちょっとカッコいいかも!


 いつまでも遊んでいても仕方ないので、一階で物資を漁ることにする。この趣味部屋にゴツい軍用だと思われるリュックがあったのでそれも拝借。


 リュックを背負うとハンドガンがかっこよく取り出せない。

 どうしたものかと思いながらとりあえずは右手にハンドガン、左手に剣を持ってキッチンとリビングがある一階に降りて行った。

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― 新着の感想 ―
[一言] モデルガンでもガンホルダーないかな?
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