第12話 不良は儚い夢を見た②【佐行視点】
「おぉ!オッサンさぁこんなにも格好いいな車乗ってんのかぁ~すげぇなぁ」
迷彩柄のダウンにダメージジーンズを身に纏う。
俺の旧時代の車を見るや興奮し、年甲斐も無くはしゃいでいるのは、檜扇コノハ。
金髪サイドポニーテールの中性的な……一応は魔女なのだが如何せん、緊張感と言うか……まぁ魔女らしくは無いと言うのが、俺の率直な感想だ。
その檜扇を捕獲もとい、連れて来いと言ったのが他ならない、我が上司の課長である。
普段から課長経由で魔女の捕獲指示が出るが、それは他部署からの応援要請や代理であったりと基本的には、上層部からの依頼を課長が俺らへとを出すのが通例なのだが今回は訳が違う。
「そんなに珍しいかこの車?てかお前、車好きなんか?」
檜扇は揚々として俺が指示するまでもなく、助手席に瞬く間に鎮座する。
「うわぁスッゲェ~本革かよ!内装だけでも相当、弄ってんじゃんか!金持ちだなぁ……車?んー別にぃ」
「別にって……こんだけはしゃぎ倒して別には無いだろ?ちょっとショックだな……一応は俺の自慢の逸品なんだがな」
「んだよぉ!そんな事で落ち込むなって!ほら早く行こうぜー馬鹿な依頼主の所によぉ!面白そうだからよぉ~俺がボコッてやるからっ!」
そう、今回の任務は上層部を通していない、課長が何処からか受けたであろう捕獲任務。
筋を通していないだけに、上層部にバレたら厄介なのに……と思いつつ車を庁舎へと、轟音響かせ俺は走らせた。
「なぁお前は周りに自分が"魔女"で在る事は、話したりしたのか?」
「いやぁ~言わねぇよ!第一さぁ今の時代、何れだけの人間が魔女の存在を信じてるんだよ?アンタわかるかい?あんなん"都市伝説"で片付けられちまう話じゃね?」
確かに檜扇の言うとおりだ。世間なんて、現代人にとっては過去の伝説的な生き物の一つに過ぎない。
口裂け女や人面犬みたいな……そんなレベルだ。
「そうだな。世界が"情報統制"され何時しかそんな昔話じみた事になったからな。まぁそれはそれで良かったのかもしれないな」
「それに……魔女が理由で独りぼっちるなんて俺は真っ平、御免だぜ……絶対に……独りはな」
俺は横目に檜扇に視線をやると、少しだけ寂しそうな表情をしていた。
それは儚げで、今までの強気の不良だったのかと、見誤る程にその表情は意外な物だった。
「そうだ、お前は家族は居るのか?」
ふと俺は気になって質問を投げかてみた。先の発言からして、どうやら"独り"に何やら思う事がある様だったから。
場合によっては檜扇の特異特質に関わる可能性が在るからだ。
「なんだよ急に……。ほぼ初対面にそこまで立ち入るかよ……ならアンタはどうなんだよ?」
まさかの質問返し。俺は躊躇わずに口を開く。
「俺か……俺は独りだ。結構昔に両親と姉が死んだ。ある日突然な……他殺だ」
"独りだ"と言うところまでは良かった。
俺が"他殺だ"と言った瞬間、檜扇は何とも言えない、悲しい表情を浮かべ俯い向いてしまった。
「――わ……俺こそ……ごめんなさい」
そうとだけ言うと檜扇は、庁舎に着くまで口は固く閉ざされ、一言も発する事は無かった。
車内は凍り付くと迄は行かないものの、居たたまれない、気まずい空気だけが漂う。
早く庁舎へ着かないものかと……そんな時に限って渋滞に嵌まる。
『なんてこった』
脳裏にはそんな言葉だけが思い浮かぶ。
「お前が気にする事は無い……俺の素性は周知の事。それに、昔の話だ」
俺は続ける。
それは寧ろ檜扇に聞いて欲しかったのだと……。
「今から17年前だ。その頃、俺は家族でドイツに暮らしていた。父親がドイツ人でな、一応俺は日本国で産まれたが直ぐに父親の母国へ航った」
懐かしい記憶、久々に思い返す家族の記憶。
当たり前の様でそうでは無くなった日常。
「でなウチの両親は俺とは違って、バリバリの研究員でさぁ。それも"脳科学"ってやつで、今の歳になってまた説明されても、理解できない様な事をやってたんだよ」
「来日も来日も研究、論文に忙しくしていたさ。それでも、そんな中でも両親は俺達、姉弟には精一杯の愛情をくれた。俺達は愛されていた……確かに」
両親のたゆまぬ愛情は今でも忘れない。忘れられる筈がない。
そんでもって家庭環境が良かったのか、俺達姉弟は反抗期と言う名の通過儀礼を知らない。経験をしなかたのだ。
「すまんな。オッサンの独り語りでな……時期に庁舎に着く。お前がぶん殴りたい人に会えるぞ!――どうしたんだ?最初の勢いは何処へ行った?おーい!」
『心此処に在らず』
威勢が良かったのは最初だけか。
虚勢を張るための外見か。
ではなんの為に?
『檜扇コノハ』
課長も何故、こんな奴の捕獲を命じた。
得策でもあるのか?
否、それを聞く為にも俺は連れて来た。
「おい!オイッ!寝ちまったのか檜扇ぃ~何とか言えよ!」
ハンドルから左手を離し肩を掴み軽く揺する。ちょっとでも力を入れたら、意図も簡単に折れてしまいそうな程に華奢な肩。
良くもまぁこんな体躯で不良としてイキってたなと思う。
「うわぁ。後もう少しで着くって言うのに……」
車の揺れも相まってか、檜扇は何時しか深い眠りについていた。
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『私はまた怖い夢を見た。それは恐ろしく気が狂う程に……私は……私は親殺しの"檜扇コノハ"。それは決して消える事の無い記憶。消せない記憶』
【人を……人類を……喰らえ……】
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