プロローグその2
ガーランド大陸の最西端にあるアインツベルグ王国には5つの騎士団がある。
主に戦闘全般を行う花形、赤い鎧の「レッド」
海上における戦闘や自国近辺における警備を行う青い鎧の「ブルー」
王立魔法研究所と提携し、魔法の開発、実用化を行う「イエロー」
主に後方支援をし、全ての騎士団を支える白い鎧の「ホワイト」
そして、雑務全般を任せられる黒い鎧の「ブラック」だ。
この5つの騎士団は平等であるが、その仕事内容の差ゆえに、国民の間では、
「レッド」→「ブルー」→「イエロー」→「ホワイト」→「ブラック」
の順に優れているという共通意識がある。
しかしここで重要なのが「ブラック」だけが
他の騎士団と比べ、大きく劣っているというアインツベルグ王国における常識があることだ。
その原因は民衆への露出度にある。
この5つの騎士団の中で最も貴族、平民共に目に触れることが多いのが「レッド」と「ブラック」で、「レッド」は国内に出た凶悪なモンスターの討伐任務、「ブラック」は国内の街近くに発生した弱いモンスターの討伐任務へ向かう時や帰ってくる時に王都やその他の街の住民に見られることがある。
その時に「レッド」の騎士たちは少なからず怪我人がおりつつも目的を達成してくるので、民衆からは英雄視され、「ブラック」はゴブリンやコボルトなど、ある程度腕の立つ民間人でも倒せる「ザコモンスター」を主に倒しているので、全員が無傷で帰ることが多く、「別に騎士団がわざわざやることではない」と思われているからだ。
なので騎士学園の卒業生のほとんどは「レッド」に入りたがる。
各騎士団で入団希望者を募るとそれぞれの騎士団で集まる人数に差が出てしまうので、各騎士団の幹部の前で試験をし、指名された騎士団に入団するという方式を取っている。
「その試験で『ブラック』になる=雑魚狩り専門のやりがいのない仕事になる」
という意識が騎士学園卒業生の間で存在するので、配属先が「ブラック」に決まると騎士になることを諦めるものが毎年出てくるのだ。
しかし、彼らはまだ知らない。
ザコ騎士団の「ブラック」が最もハードで、
全騎士団長からの尊敬を集めていることを。