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第十七話 勝利、その後

せこい手だいすき。

 「勝ったぞ」

 「そうか、いっぺん死んでこい」


 アオキを余裕で打ち負かした俺は、控室に戻ったのだが。入ってすぐに飛んできたのがジャックの死ね宣言である。

 俺の見事な機転により勝利したにもかかわらず、ずいぶんひどい言いぐさだと抗議の念を込めて、


 「……おい、勝者である俺に対して随分言ってくれるじゃないか」

 

 そう言うと、ジャックがどんどんしかめっ面になり。


 「おま……お前は、なんであんな勝ち方しかできないのだ!勇者というのは、なんかこう、神に授けられた力とかで……まあとにかく、正々堂々と戦うものだ!それが何だあれは!神聖な決闘の場で取引するだけでは飽き足らず、じゃんけんですらもズルするとか……!」

 「そうは言うけどさ。俺のスキルなんて、紙を作ったり形を変えたりできるだけだぞ? 素のステータスでも、スキルでも負けてる奴と正々堂々と戦えとか、負けろって言ってんのと同じだからな?」


 俺がそう言うと、ジャックは呆れたように首を振った。


 「はあ……とにかく、どういう勝ち方であれ第一回戦は突破だ。王は寛大だから一回は許してくれたが、次はくれぐれも卑怯な真似はするなよ?」

 「善処するよ。つーか、ズルして反則負けにでもなったらかなりまずいからな。さっき王様の前で、条件飲んでくれたら金やるって言っちゃったし……」


 ……あれ? この状況、結構まずくないか?


 「……ジャック、どうしよう。この状況って、かなりまずい気がする」

 「今更気づいたのか。そうだ、お前は先程、王の目の前で金の取引をした。そしてその勝負を王が預かられたということは……」

 「王サマが取引を認めた、ごまかしは効かない……ってことか。」

 

 ジャックが頷いた。

 俺は荷物をまとめ、ソファでグースカ寝ているアンリを思いっきりひっぱたくと。


 「いったあ! ちょっと誰よ、今私の頬を叩いたの!」

 「素とよだれが出てるぞ、アンリ。ちょっと耳貸せ」


 ごにょごにょ……。


 「なるほど。逃げましょう、コウジさん。国外に逃亡するんです」

 「ああ、荷物をまとめてくれ、アンリ。旅の準備だ」

 「お前はなぜなにかあればすぐ逃げようとするんだ! 犯罪者になっても良いのか!?」



 ーーーーーーーーーーーー



 「冗談だよ、そんな怒るなって」



 あの後、俺達を止めようと剣を抜いたジャックを宥めたり、対価を払うことで望むものを召喚する魔法がありますとか言って、俺を生贄に金を召喚しようとしたアンリにお仕置きしたりしたのだが……。


 「……お前の冗談は洒落にならん。お前が支払いを拒否して逃げ出したりしたら、俺まで国家転覆罪で指名手配なんだぞ」

 「ごめんな? 正直7割ぐらいは本気だったけど、もう逃げ出そうとしないって俺んちの太郎に誓うよ」

 「結構本気ではないか!太郎とは誰なのだ!」

 「犬」


 掴みかかってきたジャックの顔に紙を貼り付け視界を封じていると、アンリが叫んだ。


 「きゃっ!」

 「なんだ? どうした? ゴキブリでも出たのか? 安心してくれ、俺達にはジャックがいる、彼に任せよう」

 「なぜゴキブリがいる前提なのだ! そもそも俺は虫が少し……」


 ブツブツ言っているジャックは置いて、アンリに話しかける。


 「おい、最悪売店に殺虫剤が売ってたはずだ、アレを使おう。で、何処にいたんだ? あなたのアホ毛がゴキブリに見えましたとか言ったら、もう一度ビンタしてやるから覚悟しとけ……って、あれ? お前、額になんか付いて……。」


 アンリの額に小さなチップのようなものが付いているのを見て、俺がアンリの額に手を伸ばすと、アンリがその手をぺしっと払いのける。


 「……おい、なんのつもりだよ? お前あれか、好きな子にはつい意地悪しちゃう的なあれか? まったく、それならそうと早く言……す、すまん。冗談だよ。そんな目で見るなよ……」


 アンリにゴミを見るような目で見られ、少し涙目になりかけていると、アンリが俺に背を向ける。


 「おい、何処行くんだよ? おい! おーい! 無視すんなよ、おーーーーい!」

 「お前はいつまでやっているんだ、しつこいぞ。トイレか何かだろう」


 アンリの背中に向けて叫んでいると、ジャックに呆れ顔で見られた。そして、すごすごと部屋に戻る。その瞬間、放送が響いた。


 「第七回戦が始まります。選手は運動場へ来てください」


 何処か様子がおかしかったアンリを不審に思いつつ、俺は運動場へ向かった。



ーーーーーーーーーーーーーー



 「おい、ちょっと待て。なんだよコレ」


 運動場に向かうと、俺の対戦相手であろう椅子に座った茶髪の青年と。


 「……アンリ? なんでそこにいるんだ?」


 うつろな目でそいつを守るように立つ、まごうことなき女神がいた。


 


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