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第十五話 進化したスキル

転生したいなあ・・・無理か・・。

 「「レベルアップ?」」

 


 武器屋にて。

 あいつら俺を置いて飯行きやがって、後で覚えてろよ特にアンリ……とか考えながらひたすら紙を出し続けていた俺だったが、積んだ紙が俺の身長の半分くらいになった頃。急にステータスボードに「レベル2」と刻印された。


 「ああ、なんかお前らが飯食ってる間に出し続けてたら、レベルが上がったんだよ。……ていうかお前ら何驚いてんだよ? ……もしかして俺、そんなに才能ないと思われ」

 「ほお、ここに来てやっとレベルが上ったのか。どんな変化なんだ?」

 「おい無視すんな、泣いても良いのか」


 ジャックが目を背ける。一瞬泣きそうになったが、俺は開き直ってドヤ顔で。


 「ふふん。お前らに見せるために、レベルが上がってからは一度もスキルを使ってないんだ。まあ見てろ、進化した俺の実力を」


 俺はそう言って立ち上がり、手を高く掲げて叫んだ。


 「無限創造・紙(ペーパークリエイト)!」

 「「おおっ!」」


 ジャックとアンリの驚嘆の声の中。その叫びとともに、俺の手が発光し…!


 

 「……まあ、でしょうね」


 紙が二枚、作られました。


 「なんでだよう……。実は最強能力だった、とか。なんか急に全然関係ない能力に進化したりとか、そんな展開を期待してたのに……。」

 「まー初めに言いましたし。能力に変化はないって」


 俺は泣きながらアンリに突っかかった。


 「てめーふざけんなよ! 確かに言ってたけど、言ってたけどさあ!」

 「ちょっとやめて! 離れてください! ……ああっ!鼻水が!私のとっておきの服に鼻水がっ!」


 アンリがしっしとやってくる中、俺はジャックにすがった。


 「ジャックう……。もうお前だけが頼りだ、俺の代わりに大会に出てくれ…。スキルで騎士団長に変身しました、とか言っとけば騙されるよ……。」

 「そんな卑怯な真似ができるか! 出場を決めたのはお前なのだから、お前が出なくては仕方ないだろう!」


 そこをなんとか頼むよー! あの台次は来るんだって!

 ジャックにもしっしとやられ、脳内でクズに成り果てるほど絶望していた俺にアンリが。


 「そんなあなたに、とっておきの強化魔法をかけてあげましょう!そーれ「レスビング」!」

 「ちなみに、どんな魔法なんだ?」

 「煽りがうまくなる魔法で」


 俺は言葉を遮り、アンリの頬をひっぱたく。


 「なにすんのよ! せっかく魔法をかけてやったのに!」

 「なにが煽りがうまくなる魔法だ! なんでそんな何の役にも立たない魔法をかけるんだよ! ほらかけてくれ、無条件で人に好かれる魔法をかけてく」


 アンリが無言で俺の頬をひっぱたいた。


 「何すんだお前!親にも5・6回ほどしかぶたれたことないのに!」

 「結構ぶたれてるじゃないですか!何やらかしたんですか!」

 「ははははは!」


 俺とアンリが取っ組み合いの喧嘩をしていると、ジャックが突然腹を抱えて笑い始めた。


 「……何だよジャック。笑いどころじゃないぞ」

 「そうですよジャックさん。こいつの自意識過剰さに笑っちゃう気持ちはわかりますが、もっと遠慮と言うものを……」

 「何だとコラ!」

 

 また喧嘩を始めた俺達に、ジャックが涙を拭いながら。


 「すまんすまん、お前らの会話があまりに面白かったのでな」


 ……う。そんな笑顔で見るなよ……。

 ジャックの屈託ない笑顔に毒気を抜かれた俺達は、つかみ合いをやめた。



 「で、トーナメントはどうするんだ?」

 「……まあやるだけやってみるよ。俺の能力で勝てるかわからんけど、勝ったら儲けものくらいの感じだしな」


 そう言って、俺は武器屋を出た。さあて、伝説を作りますか!



ーーーーーーーーーーーーー


 そして、前話冒頭に至る。



 「大体、なんでお前はそう大事なことを先に言わねーんだよ! 詐欺だろコレ、訴えたら勝てんぞ!」

 「まあ落ち着け、受付を済ませてくる」

 「待てえええええ! 俺は出ない! 出ないんだああああああ!」


 めっちゃでかいホール……まあトーナメントの会場なのだが。そこの待合室にて、俺は大人気なく叫んでいた。


 「受付を済ませたぞ。さあ、楽屋に案内しよう」

 「おい待てよ、無視すんな! 理不尽だろ、賞金が負けた奴から没収されるだとか!」


 そう。大会当日の朝、ジャックから出た衝撃の一言である。


 「十億もの大金が、イベントのためだけに国家予算からわざわざ捻出されるとでも思っていたのか? 大体、敗者になんのリスクもないはずがないだろう」

 「昨日国王から貰った袋の中の金数えたら、百万ぐらいしか入ってなかったんだぞ! 千円札でごまかされてたんだ! つまり、コレで負けたらホントに一文無し! それどころか借金だ!」


 俺がそう言うと、ジャックが優しげな顔で俺の肩にぽんと手をやり。


 「安心しろ」

 「じゃ、ジャック、お前……!」


 俺がジャックに期待の眼差しを送ると。


 「俺は仕事があるから一緒に行けないが、夜逃げの手伝いぐらいは」


 俺は無言で逃げ出した。


 「おい、何処へ行く!」


 ジャックの声を背に、俺は。

 この世界に来たことを、すごく後悔していた。

 

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