第十四話 仲間はずれ
ハブられるって怖い。
「おいふざけんな、離せよ!」
「逃げようとするな。ほら、着いたぞ。諦めろ」
「やだ! 出ないぞ、そんな理不尽な戦いに出てたまるか!」
くそ、ステータスの違いのせいで逃げられない!
……俺は、見えてきた大会の会場に向かって。
「いやだあああああああああああああ!」
絶望の叫びが、会場にこだました。
ーーーーーーーーー
「それじゃあ、特訓を始めるか」
「……おい、ホントにやるのかよ?」
とりあえず、出ると公言してしまった以上は仕方ないので。訓練を始めることになった俺だったが……。
「仕方ないだろう。トーナメントに出ると言ってしまった以上、後戻りはできん。ならば、少しでも勝てる確率を上げるためにも、訓練をするしかない」
「……まあ分かったけどさ。何の訓練するんだよ?」
俺が聞くと、ジャックは少し考えてから、俺の方に手を伸ばした。
「すまんが、ステータスボードを見せてくれ」
「いいけど、お前には前に見せたよな? レベルアップもしてないし、前と変わってないぞ」
そう言ってステータスボードを渡すと、ジャックは真剣な顔でそれを見る。
しばらく待つと、ジャックはステータスボードを返してきた。
「ありがとう」
「ああ。……で、どうだった?」
俺がそう言うと、ジャックは真剣な表情のままで。
「お前の問題点は2つだ。……まず1つ目は、ステータスの低さだな」
「ああ、アンリにも言われたな。どうやら俺は、転生者の中でもステータスが低い方らしい。」
ジャックが頷いた。
「確かにそうなのだろう。俺が前見た勇者は、ステータスがレベル1で20あったからな。……で、ステータスがこうも低いと、たった1日レベル上げをした所で元のステータスが高いほかの転生者に勝るのは難しいだろう。そこで……。」
…ちょっと待て。こいつ、この前案内した勇者はサトウだって言ってたよな。つーことはつまり、俺はサトウに負けて……!
俺が大事なことに気がついてしまい絶望していると、ジャックは俺の肩に手を置いた。
「もう一つの問題点である、スキルを強化する。……力で劣るならば、技で勝つのだ」
そう言って、ジャックは不敵に笑った。
ーーーーーーーーーー
「……おい、これいつまでやってれば良いんだ?」
スキルを使用する事によって熟練度が上がり、レベルが上ったりスキルが強化されるらしい。
ということで、とにかく紙を創り続けることにした俺だったのだが。
「……もう一時間ほどやっているが……。全然上がらんな、どうしたんだ?」
ジャックが心配そうな表情で、積まれた紙を眺める。
この前のサトウのときは、スキルを2・3回使うだけでレベルが1上がったそうだ。なのに俺は、もう数え切れないほどの量を生み出して居るというのに一度もレベルが上がらない。
「……やっぱりねー。タナカさんは才能がないからなー。んー」
「お前は何様なんだよ」
クソムカつく表情で俺を煽ってきたアンリを睨んでいると、ジャックが尋ねてきた。
「レベルアップはないとはいえ、何か気づいたことはないのか?」
「んー……? まあなくはない、かも……な?」
「煮え切らない返事ですね、うざいです」
とりあえず、アンリの髪を引っ張り泣かせながら気づいたことを書き出してみる。
1つ目。紙を作るには、何となく念じる。そうすると、体の表面から出てくる。出てくる時には触った感じがしないので、完全に体外に排出されるまでは質量を持っていないと推測。
2つ目。紙の生産スピードはだいたい一秒に一枚のペース。一枚生産中は、もう一枚の生産は不可能。
3つ目。形を変えるスキルは、大きくしても薄くなったりはせず、何処も同じ材質になる。
「なるほどな……。よく気づいたな、この短時間で」
俺のメモを覗き込んでいたジャックが、感嘆の声を漏らす。
「まあ、俺ぐらいになるとそりゃまあ」
「あ、コレ全部馬鹿でもわかるスキル説明書にかいてあったことだ!」
……。
俺の言葉を遮って余計なことを言いやがったこいつを、どうしばいてやろうかと熟考していると、ジャックが。
「まあなんにせよ、コレは良い収穫だな。引き続き頼むぞ」
そう言ってジャックは、俺を置いて武器屋のおじさんに挨拶に行く。俺は、それについていこうとするアンリを引き止めた。
「ちょっと待て、俺を置いて何処に行くんだよ」
「え?お腹すいたからごはん食べに行くんですよ?」
は?
当然のように俺がハブられている事実に固まっていると、ジャックが。
「それじゃあ、留守番を頼んだぞ。ボルグさんも、買い出しに行くようだからな」
え。
そう言って店を出ていくジャックとアンリを、俺は呆然と見つめていた。
…嫌な話だなー。
ブックマーク・感想・レビュー等よろしくおねがいします。