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第十三話 え。

え。

 「勇者は何処だ」



 ……え。なにあれ、つよそう。なんなのあのでかさ。

 俺が固まっていると、更に騎士が。


 「勇者、居るなら出てこい。嬲り殺しにしてやる」


 よし、逃げよう。

 逃げ出そうとする俺を、ジャックが呆れたような表情で止める。


 「おい、なぜ逃げる?」

 「おい離せ!あんなのに捕まったら何されるか……! むしろなんでお前はそんな落ち着いてんだよ、状況が分かってないのか!? 他人事だと思ってるんだろ!」

 「だから、そんなに慌てる必要はないのだ。あいつは……」


 と、ジャックがそこまで言った所で、騎士が突然目の前に。 


 「お前か」

 「うおっ」


 ドシン、と後ろに倒れ込んでしまった。ビビってない、ビビってねえぜ?


 「転生者の気配を感じる。お前が勇者なのか」


 ……どう答えるのが正しいんだ。俺がもし嘘をつけば、俺ではない転生者が狙われるのだろう。

 考えろ! 俺はそんなにクズだったのか! いくら俺以外の転生者はチート能力を持っていて、ラノベみたいに美少女にちやほやされて暮らしてるかもしれないからって、そんな…。

 

 …………。


 「答えろ」

 「人違いです」

 「嘘を吐くな」


 ばれた。


 「大丈夫だ、悪いようにはせん」


 お前嘘だろ、さっき言ってたこと忘れてねえぞ。嬲り殺しとか……!


 「ああ、自己紹介がまだだったな」


 そう言って騎士は、兜を脱ぐと……!




 「……は? 女?」

 「はじめまして勇者さん。私はワークス・ライン。そこにいるジャックの姉さ」


 ……え。

 俺がジャックを見ると、ジャックは呆れ顔で。


 「ドラゴンに乗って勇者を見に来るのはやめろって言っただろ、姉さん」

 「ひさしぶりね、ジャック。この前のサトウくんの時以来かな?」


 ……え。

 色々と突っ込みたいことはあるが、とにかく。死の危機は脱したらしい。



 「落ち着いたみたいだしさっきの続きですね。ていうか、あなたは人の挨拶を笑った時点で人格に問題があると判断せざるを得ないわけで。そういった点からも、あなたにあえて有能スキルを与えなかった私はむしろ有能という感じで」



 ……こいつ空に帰ってくんないかな。



ーーーーーーーーー



 「……勇者頂上決定戦?」


 ラインさんは俺に用があるそうだったので、とりあえずギルドに移動した俺達である。

 俺が聞き返すと、ラインさんは水を一口飲んで頬杖をついた。


 「そう。転生者の頂点を決めるトーナメント戦なんだけど、出てみない?」


 ほほう。興味がなくはないが、俺で勝てるのかどうか。

 隣に座っていた女神の肩を叩き、他の面々に聞こえないように小さな声で話す。


 「おい、俺って転生者の中ではどれぐらい強いんだ?ステータスが全部5だったんだが」

 「えーと、転生者は最低でもステータスが10あるのが当然なんですよねー。だからあなたは、スキルもゴミ、ステータスもゴミの最弱勇者ってことに……いたっ!ちょっと、踏ん付けないでよ!」


 アンリの足をグリグリやりつつ、俺はラインさんに向き直った。


 「すみません、俺は不参加でお願いします」

 「え!? ……別にいいけど、もったいないよ?」


 驚いたような顔で言ってくるラインさん。というか、少しオーバーリアクションでは? ってぐらい驚いている。


 「賞金あるよ? もっと考えたほうがいいんじゃない?」

 「……ちなみに、幾らぐらいなのか伺っても」


 けしてやましい気持ちなどない。異世界に来たからにはカジノで景気よく散財してみたいなーとか、俺じゃ魔王なんて百パー無理だから、金で冒険者雇ってそいつらに魔王倒してもらおうかなーとか、そんな考えなどない。そう、魔王を倒すための資金稼ぎである。


 「んー、今年は十億円かな」

 「出ます。何処でやるんですか?」


 即答した俺に、アンリがじとーと視線を向けてきた。

 ラインさんは苦笑すると、ジャックに向き直り、何やら話を始めた。

 ……しばらくして、話し終えたラインさんが席を立つ。

 

 「それじゃあ、よろしく頼むよ、ジャック。コウジくんも、またね」

 「ああ」

 「はい」


 手を振りながらギルドを後にしたラインさんを見送ったあと、ジャックが俺に手招きした。

 そして俺に耳打ちしてくる。


 (大会は明日だそうだ。……特訓だな)


 え。

 


 …………え。



 

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