第十一話 それはまるで女神のような
やっと新キャラ登場。(大嘘)ああ、ここまで長かった・・。
「仲間が必要だと思うんだ」
俺のその一言に、水を飲んでいたジャックが固まった。
俺はコップの水を呷り、続ける。
「ほら、昨日の戦いを思い出してみろよ。俺、マジで弱かっただろ? 多分、お前がどんなに強くても2人じゃ魔王討伐なんて無理だと思うよ」
事実、俺が昨日やったことと言えば。ザコモンスターの代名詞であるスライムに追い回され、やっと一匹スライムを倒しただけ。
もちろん心の中ではなんかいい感じに締めたが、実質クエストクリアしたのはジャックひとりなのである。レベルも変化していないし。
と、俺の言葉を聞いたジャックは、安堵の表情を浮かべてため息を吐いた。
「はあ、そういうことか。てっきり、俺の強さに満足してもらえなかったのかと……」
「違う違う。お前は騎士団長だし、すごい強いと思うんだが。大人数を相手取った時、個人の実力がないと少人数じゃ不利だしな」
昨日のスライムでなくとも、序盤のエリアに出てくるモンスターで群れを組む種族は多いと聞く。雑魚といえども油断はならないし、やはりある程度安定感は欲しい。これからもっと高難度のエリアに行くかもしれないしな。
俺の意見に頷いたジャックは、少し考えた後に頷いてギルド奥の掲示板を指さす。
「仲間を探したいなら、あそこの掲示板に仲間募集の張り紙を貼るのが一番効率がいいな。ここに来る連中は大抵パーティを組みたがってるし。募集条件を書けばなおよしだ」
「分かった。じゃあとりあえず、お互い書いてみようぜ」
俺はスキルで紙を2枚作り出し、ジャックに1枚を渡した。ジャックと俺はえんぴつ立てから一本取り、背を向けあって書き始める。
「お前のスキル、見る限り戦闘に使えるものではなさそうだが。本当に魔王を倒せるのか?」
「もし無理だったら、紙幣を量産して、魔王に人類を支配しても俺だけ高待遇にしてもらうよう頼むよ。つーか、早く書けよ」
「……お、おい。そんな犯罪まがいのことはしないよな?そんな事をしたら、お前は人類の敵だぞ? ……おい! なんとか言え!」
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「……よし、できた」
「こっちもだ。じゃあ、俺から見せよう」
しばらくしてお互い張り紙を書き終え、見せ合いの時間となった。俺がジャックが差し出した紙に目を向けると、ジャックはドヤ顔で読み上げる。
「強い奴募集! 性別・経歴関係なく、腕に自信がある人材を募集します」
「よし、ちょっと貸せ。捨ててくる」
ジャックから紙を奪おうとしていると、ジャックが叫んだ。
「おいっ! なぜ捨てようとする! 何も問題はないだろうが!」
「お前、よくそんなことが言えるな! そう思うなら、ちゃんと最後まで読み上げろよ!」
俺がそう言うと、ジャックは俺のことを睨みながら。
「注。魔王討伐が目的ですので、魔王よりも強い自信がある方……。げ、限定……。」
段々声がしぼんでいくジャックに、俺は怒鳴りつけた。
「お前こんな条件でまともなやつが来ると思ってんのか!大体、魔王より強いやつがいたらとっくに魔王討伐してるわ!」
「す、すまん……俺が悪かった……。……じゃあ、お前のを見せてくれないか」
そう言うジャックに、俺は紙を掲げて見せた。
ふ、あまり俺を舐めるなよ。こちとらバイトしてた店で『君ってなんか手先だけは器用だし、頼むわ』とその実力を買われポップを描いてた男だぞ。異世界の素人に負けるかよ。
「どうだ」
「……」
暫く俺の書いた神がかった募集要項に目を走らせていたジャックだったが、急に血相を変えて。
「おい、俺のアイデアを良くバカにしてくれたな! お前のほうが酷いではないか! 貸せっ!」
「ちょ、おい」
ジャックは俺の手から紙を取り上げ、大声で読み上げた。
「勇者パーティー・聖剣の勇者に入ってみませんか?美少女、美女、誰でも歓迎! アットホームなパーティーです。注。美少女・美女のみ入団可。」
「なかなかいいと思うんだが、どうだろう」
俺がそう言うと、ジャックは紙を破り捨てた。
「ああああ! お前何すんだよ、ふざけんな!」
「何が美女だ! 下心が丸見えすぎだろう、ふざけているのはお前のほうだコウジ! このパーティー名なんか、いつ決まったんだ! 聖剣なんて持ってないくせに!」
「その名前には、これからなんかすごい武器とか楽に手に入んないかなーという、崇高な願いがだな……」
俺たちが言い争っていると、コツコツという音が聞こえた。それは、こんな野蛮な場所には場違いな、ヒールの音で。
その美しい女性は、ギルド中の注目を集めていた。彼女が歩くたび、純白のドレスが揺れた。静まり返るギルドの中、ヒールの音が響き、やがてひとつのテーブルの前で止まった。
「すみません」
そう、俺達のテーブルの前で。
「は、はい」
「先程から、にぎやかなご様子で……。パーティーメンバーの募集ですよね?」
「はい、えっと。張り紙を書いてて」
緊張でうまく話せない俺の言葉を聞き、美女はジャックが破った俺の張り紙に目を向けた。そして、くすっと笑うと。
「私を、あなた方のパーティに入れてくださいませんか?」
その言葉を聞き、誰もが唖然とした。
……春、到来。
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