ダンジョン初日
10階までは洞窟だ。さくっと9階を抜けて来た。但し10階はボス部屋のみのようだ。
当夜達はボス部屋前でおやつタイムにして、少し休んでから扉を開けて中を覗いた。
中を覗くと先程のボス部屋と同じような感じだが、当夜達は躊躇いもなくボス部屋に挑んでいく。
5階と同じようにボスが出てきて、先程のとほぼ同じ毛並みの獣だが、腕が4本、頭が2つあるのだ。
当夜は気持ち悪いなと思いつつ、アイスボールをマシンガンの如く「ドドドドドドドト」との重低音と共に連続発射する。しかも一つ一つはソフトボール位だ。
顕現直後でまだ動きが固まっている所を襲ったのだ。避けられる筈もなくあっさり胴体に風穴が開き倒れる。皆で一斉に飛びかかり串刺しにし、首を2つ同時に刎ねてあっけなく終わった。
レグナス「なんか騎士道に反する卑怯な戦いだったような気がしますが・・・」
レグナスがそう言うがルナがあっさり切り捨てる
ルナ「この部屋に我々が一歩踏み入れた瞬間から、いや扉を開けた瞬間から既に戦いは始まっています。準備が出来ていないほうが甘いのです。気が付きましたか?扉を開けた瞬間から、当夜様が魔法の準備を、アイスボールの準備をしていたのを?面と向かい合ってから戦うなんて、コロシアムでの競技大会だけですよ」
レグナスは項垂れていて、アモネスもシャクラも同じだ。
当夜「まあそれくらいにしておこうな。彼女達はまだ15歳だ。色んな事を学んでる最中だからね」
アモネス「でも、当夜は争いの無い平和な国から来て、戦闘経験なんて皆無な筈よ」
当夜「もうさ、俺は色々と人の嫌な面とか本音を知ってしまったのさ。何より俺自身が穢れたしょうもない奴だから、如何に楽しようとつい考えるのさ。君達は俺みたいな心の汚れた大人にはならないでね」
シャクラ「そんな事ないもん。当夜は自分の事下卑し過ぎだよ!常に自分以外の事を考えて、楽したいのじゃなく、どうすれば確実に私達を守れるかを考えての結果でしょ?私達の事を大事に扱ってくれるし、何より当夜は私達の英雄なのよ!白馬に乗った王子様なのよ!だから汚れてなんていないのよ」
三人に抱きつかれ泣かれれてしまった。当夜は女心をよくわかっていない。今まで接した女は外観を褒め、会話も適当に同意し頷いて、お互い激しく体を求め合う。ただそれだけだった。独占欲もせいぜい体の相性の良い女を頻繁に抱きたいと思う為位にしかなかったのだ。心を求めた事も求められた事もない。今のようなプラトニックな関係は経験がないのだ。
今までは口論になりそうになったらキスをして、甘い言葉を囁くだけだった。
彼女達の存在が今の当夜の生きる糧だった。彼女達を守りたい、幸せにしたい、笑顔が見たい。彼女達の屈託のない笑顔は、何にも変えられない当夜へのご褒美だった。
三人の頭を撫でて、涙を拭いてあげるとまた感謝された。
戸惑う当夜に助け船を出すのはルナだ。
ルナ「ドロップを確認しましょう」
その一言に我に返り、ドロップを確認した。ドロップは魔石と女性用のマント二枚だ。青いのと、白いのだ。ルナがシャクラのを見比べているが、デザインは同じで色違いなだけだ。但し、サイズが違う。シャクラのは薄い緑だ。サイズから青がレグナス、白がアモネス用だ。
その場で二人共着替え、当夜のチェックが入る。
当夜「どう見てもアモネスとレグナスの為にオーダーして作ったとしか思えないよな。ジャストフィットだし、このダンジョンはひょっとして、冒険者の強化用か?次のボスはシャクラ、アモネス、レグナスが真正面から堂々と戦ってみよう。それで俺の仮説の信憑性が上がる。勿論俺達がサポートするし、危なくなったら介入する」
当夜がそう言うと皆頷いた。夕方近いので今日はここで野営をする事となった。収納のお陰でかなりぬるい野営なのだが。
テントを2つ設営し、布団を片方のテントに出して、アモネス達に寝床の準備をお願いした。
アモネス「ねえ当夜ってば、テントを何故2つも出すの?1つで全員寝れると思うのだけど?」
当夜「まあ見てのお楽しみだよ。一つ言えるのは君達の喜ぶ顔が思い浮かぶって事かな!」
アモネスは不思議そうに当夜をジト目で見るしかなかった。
当夜は次にテーブルと椅子を出していく。魔導コンロや包丁等の調理道具、食材を出した。シャクラの出番である。趣味が料理というのもあるが、両親が調理人だったようで料理は色々仕込まれていると言っていた。
当夜はもう一つの床の部分がないテントの床に、初級魔法のアースホールで穴を掘り、そこに簡易トイレを置いて、トイレルームとした。桶と手桶を出して水を汲み置きしている。水は生活魔法でなんとでも作れる。因みに水は色々な種類が作れる。
それと、この世界でのトイレットペーパーの代用品。何とかの葉っぱを乾燥させた少しゴワゴワするのを買っていたのを出している。
ミネラルたっぷりな水、純水、硬水、軟水、生理食塩水、スポーツドリンクのようなもの、塩素のたっぷり入った消毒液等だ。イメージすれば出るが、ミネラルの場合元素記号を思い浮かべてみると入ったが、試行錯誤を重ねて、ミネラル水と思えばどういったミネラル成分が入るかをイメージ固定で生成出来るようになった。
トイレの完成を伝えると血相を変えたレグナスが駆け込んでいった。
本来少し離れた所で魔物に襲われる恐怖と戦いながら用を足すのだ。勿論仲間に見張りを頼むが、異性がいると中々恥ずかしいのもあり、トイレ問題は大きな問題だった。
皆我慢していたようで、ルナも含め用を足していた。
穴は当然汚物が入っているので、当夜の魔法で埋め戻ししていき、トイレは別の場所に穴を開け移動する。それの繰り返しだ。
ひと仕事終えた当夜に対して皆はとても優しかった。そして物凄く感謝をされていた。
食事の準備ができて、皆で食べる。
オーク肉と野菜の炒め物とパンにスープだ。
馬車での移動で頑張れば何とか出来るレベルの食事をダンジョンの中で行っているのだから異常というか規格外である。
転移石で地上に出ないのは、地上よりセーフエリアの方が安全だからだった。
食後の洗い物は皆で行うが、当夜はお湯係で食器は洗わせてもらえなかった。
次にトイレ用のテントでの事になるが、湯浴みを準備した。人が入れる樽に並々とお湯を入れている。当夜がこれを思い付き、道具屋の裏で無造作に置かれていた樽を貰ってきたのだ。
使い勝手がまだまだなので、改良の余地は大いにあるが、一応一人入る度にお湯を入れ直し、大きなタライに掛け流し用にお湯を注いである。
そうこうしていると就寝時間が来た。セーフエリアとはいえ、見張りを立てないわけには行かず、順番を決めた。最初が当夜単独で、次にルナとアモネス、最後がシャクラとレグナスだ。
そうしてダンジョンの初日を終えていくのだった。




