プロローグ 最強魔物を従えた日
皆様、初めまして。果実将軍と申す者です。今回、初めて小説を投稿させていただくわけでございますが、私はこのサイトに慣れていませんので、色々と不足した部分もあると思います。なので、これは不足してはいけない、という部分は教えてくださると、とても助かります。
さて、前書きが長くなってしまいました。ゆっくりご覧ください。
魔物使いという職業をご存知だろうか?この世界では、本来ならもう100年前に無くなってしまっている職業。しかし、この世界で一つだけ、魔物使いが沢山住んでいる村があった。
僕はその村に住む魔物使いの一人。名はランス。だけど、僕は魔物使いにうんざりしている。
「また勝っちまったな~!」
「流石カリオス様だぜー!」
「格好いいー!」
僕はこの村で最弱魔物使いなんだ。僕には体力も、力も、精神力もない。おまけに従えてるモンスターが、スライムなんだ。普通より結構大きいサイズなんだけど、それは沢山集まってるから。元々は手のひらサイズ。こんなんじゃ、この村の次期長候補のカリオスに勝てるわけない。しかもカリオスが従えてるのは大鬼王。僕じゃなくても、負けるのは目に見える。現在、カリオスと取り巻きのジレンとサンドラに虐められてる。
「おいおーい?俺様がせっかく稽古つけてやってんだから感謝しろよー?」
「ランスに稽古なんて必要なくねえか?」
「そうだよー!元々何も出来ないし、従えられるのもスライムみたいな雑魚中の雑魚しかいないからねー!」
「そうだよなー!何せこいつは親の後も継げない出来損ないの落ちこぼれなんだもんなー!」
言い忘れてたけど、僕のお父さんは現在村の長だ。お父さんは、巨大竜を従えているすごい魔物使いなんだ。でも僕はスライム。差が分かるだろう?
「こいつは錆びた槍だ!固いものどころか、柔らかいものも貫通できない貧弱な槍だ!」
槍、ということは、名前の事を言ってるんだろう。
「稽古は終わりだ!次はもっと痛め付けてやるからなー!」
高笑いをあげながら帰っていくカリオス達。
「大丈夫か?!また虐められたのか?!」
お父さんが走ってくる。
「大丈夫だよ。平気。」
「そ、そうか…。」
本当は全然大丈夫じゃなかった。腕の骨が折れてる。今も叫びたいくらいに痛いが、お父さんを心配させないために我慢する。
「ランス、カリオスの言うことを信じるな。お前は強い。見た目が弱くても、内側に強大な力を持ってる。」
「本当の事言ってよ…。」
「何だって?」
「もうお世辞は止めてよ!」
「お世辞なんかではない!本当の事だ!」
「父さんだって、本当は分かってるんだろ?僕が、魔物使い初の落ちこぼれだって!」
「お前は落ちこぼれなどではない!俺の誇れる息子だ!」
「言ってよ!『お前みたいな落ちこぼれは俺の息子じゃない』って!こんな村出ていってやるからさ!」
「俺は本気だ!落ちこぼれなどと一片たりとも思っていない!」
「っ~!もういい!」
「あ!待て何処へ行く!」
僕は近くの森へ走った。いつもは用がない場合は出入り禁止だが、僕はこの森の構造を知っているので、何処からでも入れる。
――――――――――――――――――――――――
ランスが森の奥に消えてしまう。
「あの馬鹿息子…!」
「あ~あ、行っちゃいましたね~。」
誰の声だ?!
「カリオス!」
まさか聞いていたのか?
「あんな落ちこぼれ放っといていいでしょ?」
「馬鹿者!息子を見捨てる親がいるか!」
「それはあんたが親だから言える事。村の長の立場で考えてくださいよ?あんたはあの落ちこぼれに長を継がせる気でしょ?でもあいつは長の資質もない、従えてるモンスターも弱い、全くと言っていいほど長に向いていない。そんな奴が村を治めたらどうなると思います?」
あいつに長の資質はある、と言いたかったが、何故か言葉が出ない。
「この村は崩壊するしかないんですよ!そう考えたら、あの落ちこぼれをここら辺で始末して、別の奴を長にするのが手っ取り早いじゃないですか?」
「…まさかお前!」
「よって俺様こそ長に相応しい。俺様はこの村を強い村に変えて、この狭い所から出る!」
この馬鹿は何を考えている!
「馬鹿者!俺の親父でも、外に出て、それ以降帰って来なかったんだぞ!」
「それはあんたの親父様が弱かったからだ。俺様は違う。俺様は外に出て、魔物使いが強いことを証明して見せる!そして魔物使い中心の世の中に変えてやるんだ!」
こいつは絶対に長にしてはならん…そのためには、ランスを長にする要因を作らなくては…しかしあの事はランス以外には教えられない。ランス…帰ってきてくれ!
―――――――――――――――――――――――――――
はあ…勢いで森に来ちゃったけど…どうしようかな…。
「「ランスー!」」
え?誰だろう…。声から予想はつくけど…。
「こんなところに!」
「探したんだよ~!」
やっぱり、レオンとサリーだ!レオンとサリーは僕の唯一の友達。レオンとサリーも魔物使いなんだけど、従えてるのがレオンは炎竜で、サリーが木精霊。どっちも結構強い。
「よくこの中から探せたね。」
「私の木精霊が教えてくれたの!」
確かに森の中じゃ、木精霊には敵わないね。
「もう帰ろうぜ?森にいたって、何にもならないだろ?」
「嫌だよ。今帰ったって、どうせ臆病だとかそう言われるんだ。」
「じゃあどうするの?」
「決まってるよ。新しいモンスターを従えるんだ。」
「でもこの森じゃ、よくて獣人がいるくらいだぞ?」
確かにこの森は他の場所と比べて危険度がかなり低い。カリオスが従えてる大鬼王も、あの時かなり運が良かっただけだ。
「私たちも、事前に巣を見つけてから従えたしね。」
巣を見つけるという手もあるが、大体はスライムが外敵から身を守るために巣にしてることが多い。どうしようかな…。
「うーん…あれ?」
あんなところに洞窟なんかあったかな?
「ん?何でここに洞窟が?前ここには無かったよな。」
「もしかしたら、魔法か何かで隠されてたのかも。」
「だとしたら何かがいる可能性が高い!行ってみよう!」
「あ!おい!待てよ!」
「ちょっと?!置いてかないで~!」
~封印の洞窟~
かなり大きい洞窟だ。松明があるので、人が出入りしている。
「魔物の気配もするな…。」
「帰りたいんだけど…。」
この洞窟は広そうだ。今日中で探索しきれるかな…。
………トケ………ヲトケ………。
ん?
……トケ…………トケ………。
何かが呼んでる…!
「こっちだ!」
「お、おい?!ランス!」
「ちょっと?!どうしたの?!」
何かが僕を呼んでいる…!
…………ヲトケ…………ンヲトケ………。
この声は、この先から聞こえる!
「ここだ!」
「何がだ…ってうわっ!!なんだこのデカイ扉!!」
目の前には巨大な扉。これが何かは分からないけど、ここから声がした。
フウインヲトケ………フウインヲトケ………。
声は封印を解けって言ってたんだね。でもどうすればいいのかな…。とりあえず、触ってみよう。
「おい?!ランス止めとけ!何だかその扉、ヤバい気がする!」
「触っちゃダメ!最悪、死んじゃうよ!」
二人の声も聞こえなくなるほど、僕はこの扉の封印を解くことしか頭になかった。そして…扉に触った。
「うわっ!」
目映い光が急に飛び出してくる。その光は僕を吹き飛ばす。そして扉が少しずつ開かれ、何か黒い物が出ていく。その黒い物は何かを形作る。それは、
超巨大なドラゴンだった。
「あ…ああ…。」
「まさか…こいつが…!」
「終焉龍…!」
終焉龍。大昔、世界の殆どを焦土に変え、生き残った人間の勇者によって何とか封印に追い込むことが出来た禁忌魔物の一体である。
「ガッハッハ!500年振りに見る外だ!我はここで500年間、力のある者を待っておった!」
終焉龍の声は太く、重い。その声が洞窟中に響き渡る。
「そこの小僧「はいっ!」封印を解いたのはお前か?」
「よく分からないけど…扉に触れたら、急に光が出てきて…。」
「そうか、お前か!」
「ごめんなさい!」
「何故謝る?我は感謝しておるのだ。この封印は力のある者にしか解けん。」
「え?何で僕が…?」
「気づいていないのか?お前は見たところ魔物使いのようだが、魔物使いでは持つはずのない魔力を大量に持っておるのだ。」
え…?ええ…?!
「でも魔力を持ってたってだけで、力のある者の証明には…。」
「なるさ。あの扉は力のない者が触れれば、たちまち我の怨念に喰われてしまうのだ。」
え…?尚更なんで…?
「とにかく、お前は力のある者だ。封印を解いてくれたお礼として、お前に仕えてやろう。」
「え?それって…。」
「魔物契約だ。早くこちらに来ぬか。」
「あ…うん。」
こういう強い魔物には、魔物契約の方法が違う。例えば悪魔だと、血を少量与えなくてはならない。でも終焉龍の方法は僕は知らない。
え…?口を開けてるけど、まさか食べるんじゃないよね…?従うんだったら主人食べたら駄目だし…。あれ?口の中からなにか光が…。…まさか?!
「うわあ!熱…くない?」
「安心しろ。加護の炎だ。この炎を浴びた者が、我の主という我なりの魔物契約だ。」
何だろう…暖かい…。
「あれ?いつの間に!」
僕の首には、赤い結晶がついた首飾りがあった。
「それは我の器だ。外に出るとき、こんな姿じゃ落ち着いて歩けんだろう。」
ああ…それもそうか…。
「それじゃあ、我はその中で休むとしよう。我を呼び出すときは、その結晶を握って呼び掛けろ。」
「うん、分かった。」
ラグナロクが首飾りの中に入っていく。
「お、おいランス。何やらラグナロクと長い時間話してたが、何かあったのか?」
あれ?レオン達はラグナロクの言葉が分からなかったのかな?まあそれは置いといて。
「うん。どうやらラグナロクを従えたみたいなんだ。」
「ええ?!凄いじゃない!!」
「大丈夫なのか?!」
「うん。平気。」
「良かった…。それじゃ、もう帰ろうっか。」
「でも誰がここの帰り道分かるんだ?」
あ…。
《我に任せろ。この洞窟は知り尽くしておる。》
「あ、どうやらラグナロクが道を教えてくれるみたいだよ。」
「おお、流石禁忌魔物!」
「知識は伊達じゃないってことね!」
《本当は知識だけじゃないのだがな…。》
まあまあ。とりあえず、道を教えてくれる?
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「やっと出れた~!」
洞窟から出た途端、眩しい光が目を刺し、外に出たということを実感させてくれた。
「もう帰ろっか。やることもないし。」
「そうね。疲れたし。」
「でも、この時間に帰ったら、待ってるのは魔物使い勝負だぞ?」
「あ…。」
すっかり忘れてた…。僕が一番嫌いな時間…。