ノエル。。
私は、統合失調症という病気があります。
若い頃に発病し、長い間病気と向き合っています。
日々の生活の中で、不思議な体験をします。
自分の病気を見つめて、この小説を書きました。
これを読んでくれる人が、この病気のことを知ってもらえるといいなと思います。
夜は、駅までの道を歩いていた。
今日も、車道の傍で足を止め、沼のほとりの家を見ていたら、足下の草むらがガサガサと動いた。
よく見ると、痩せた白い猫がうずくまってもがいていた。
「おいで」夜が手を伸ばすと、大人しく抱かれた。
「脚を怪我したんだね」
夜の腕の中で、猫は震えている。
「大丈夫だからね」
「ノエル!」
背後でか細い女の子の声がした。
「その子に何をしたの!」
振り返ると小柄な女の子が、怒りで頬が赤くなっている。
「怪我をしたみたい、草むらに居たの」
夜が言うと、
「助けてくれたの?」
と言って、夜から猫を抱き取ると、安心したように
「ごめんなさい、貴女は悪くないのに。。」
と言った。
女の子をよく見ると、寒い季節なのに薄いワンピース一枚で、足元は靴を履いていない。
腕には土と傷が付いて、一生懸命に猫を捜したんだろうな。と夜は思った。
「ありがとう。お礼がしたいから、来て」
先を立って、坂を降りて行く
夜は、黙って付いて行った。
だんだん、夢の中の風景と重なっていく。
女の子は、沼のほとりの一軒家の前で足を止めた。
「ここなの。上がって」
家に鍵は掛けて無くて、汚れた靴下を脱いで上がって行った。
「この家。。、夢に出て来る家と同じだ」
庭は荒れていて紅いバラが這っていた。
「お邪魔します」
玄関を上がってリビングに入ると、女の子は庭が見える大きな窓の前に置いた揺り椅子の上に猫を寝かせて猫の名前を何度も呼んでいた。
「どうしよう。ノエルケガをしてるの?」
夜が近くに来たことに気づいて女の子は心細い声を出した。
「獣医さんに連れて行ったほうがいいかもしれない。」
「一緒に行ってくれる?」
夜は頷いた。
お財布だけ持った女の子を見て
「駅の向こうまで行くからバッグに入れて家の鍵も持って、暖かい服を着て上着も着てね。」
「わかった。待っていてくれる?」
「うん。猫を入れる物ある?無かったら私のを持って来てあげる。」
「無いの。お願いしてもいい?」
「うん。持って来るから待っている間にゆっくり支度していて。足元も靴下を履いて暖かくしてね。」
「わかった。ありがとう。」
女の子が安心して笑ったので夜もホッとした。
「家の鍵もかけてね。」
女の子は夜に付いて来て玄関迄見送ってくれた。