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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:6 転生魔導師の初戦

本文が膨れ上がったので分けてます。

 ニアの出立からしばらくした頃。そろそろ草木が芽吹き、春に入ろうかという時期に事件は起こった。

 教会の聖堂の方から悲鳴が聞こえたのだ。


 私はその時、調理場で夕食の手伝いをしていた。

 聞きなれない男の断末魔と女性の悲鳴。

 男の方は若い、だがジャックではない。急ぐか…。

 ちなみにジャックはよく悪さをしてシスターに絞められるので断末魔は日常茶飯事である。


 私は一緒にいた数名と共に聖堂の方へ向かおうとしたが、途中で向こうから来たシスターに遮られた。

 曰く何の問題もないので、子供たちは向こうに行きましょうと。

 わかりやすく大問題対処中ですね。


 私はとりあえず誘導に従って、別の部屋へと向かった。が、ジャックがいない。

 ジャックも何かに気付いて向こうに行ったということかな…?余計なことをしていなければいいけど。

 なんにせよここで待機しているつもりは毛頭ないので、私はシスターの制止を(かわ)して聖堂まで向かう。



 本当にわかりやすく緊急事態だった。

 一言でいうなれば



 襲撃である。





 見ると、聖堂の大扉の下で倒れている男が一人、出血している。その横に、レザーアーマーを着た男が一人、こいつが切ったのだろう。外にも何人かいるようだ。


 ジャックは…?


 最悪の想像がチラリと脳裏に浮かんだが、少し離れたところで倒れているのが見えた。息はしているようだし、出血も確認できない。杞憂(きゆう)だったようだ。




 さて…どう考えてもあのレザーアーマーが下手人だよな。


「早くガキどもを出さねぇか!」


 狙いは子供達か。何故?

 人身売買だろうか…?

 それにしてもやり方が粗い。


 なんにせよ、シスター達が抵抗して傷付くのを見る気は無い。クソ宗教の教徒とはいえ10年以上私たちを育ててくれた親達だ。


 背に腹は変えられない。


 私は前に出た。




「駄目よ!リズ!下がって!!」


 シスターの悲鳴にも近い声が聞こえる。

 襲撃者は少し驚いた表情をするも、すぐに値踏みをするように私を見た。


「ほーなかなか上玉じゃねぇか。嬢ちゃん、そんなところに立って何する気だ?」


 へー私って上玉なのか。水面に映る自分を見てそこそこ美形かもとは思っていたが。


 私の容姿はどうでもいいとして。

 右手を男に向け、魔力を込める。


ウィンドブラスト(暴風圧)。」


 右手から放たれた暴風の塊は、見事襲撃者に直撃。男は教会の外に吹っ飛んだ。もちろん、倒れている人には当たらないように調整してある。

 外にいた仲間と思しき奴らも巻き込みを受ける。


「ぐあああ!!!」

「えっ!?」


 襲撃者達とシスター達、双方から声が上がった。


 私はそれを意に介せず、すぐに倒れた男に近寄る。息はしているな。

 回復魔法をかけてその場に放置した。動かす余裕はない。


 教会の外を見ると、先ほど飛んでいった男達がよろめきながらも立ち上がっていた。


「ぐッ…!なんだ今の魔法は!?」

「あのガキ、無詠唱で魔法を使ったぞ!」

「しょうがねぇ、価値が落ちるが手足を使えなくするか。穴としての使い道は残るしな。」


 穴て。下品な話ですねぇ…。


 まあ私の場合手足切っても魔法使えるし、なんなら時間経過で生えてくるんですよね(多分)。


「投降してください。」

「何?ははは、嬢ちゃん、少しばかし魔法が使えるからってあまりあまりナメたことを言うもんじゃねぇ…ぞッ!」


 男が一気に距離を詰めて来る。が、いきなりつんのめって突如出現した目の前の岩壁に顔から激突した。

 踏み出した足元に石を作り出して、これまた地面から生やした岩壁に突っ込ませたのだ。

 踏み出した脚力がそのまま顔に入ったような感じかな。


「あがッ…!」


 男は鼻血を出しながら倒れた。

 私との距離はそこそこ開いている。そうでなくては私が危険だからだ。その距離を一気に詰めようとすると、相応の速度を要する。そんな速度で壁にぶつかれば…


 鼻は折れただろう。運が良ければ前歯は残りそうだ。


「繰り返しますが投降をしてください。」


 こいつがリーダーだったのか、他の者に動揺が走る。


「くっ!調子に乗るなよガキがァ!」


 おっと、一人だけ怯んでないのがいた。

 剣を構えて腰を深く落としている。そのまま突っ込んでくるつもりだろうか。


「勧告も警告も、無視ですか。」

「シッ!!」


 相手は前傾姿勢に踏み込んだ右足で、強く地面を蹴った。

 速度だけならリーダー格の奴より速いかもしれない。が、対処が出来ないわけではない。


 前世では王宮騎士相手に様々な武器種の相手と戦う模擬練習をしていた。

 本来であれば魔法使いには必要のない訓練だ。しかし、万が一にでも近づかれたときに対処できるようにしておきたかった。

 魔法使いの新しい戦闘体系を開発してみたかったともいえる。


 10年も経ってはいるが、感覚はそこまで鈍ってはいない。これだったら騎士の方が速かった。粗削りと言ったところか。


「フレイム。」


 突き出した右手の先から炎が噴き出る。


「ッ!甘い!」


 奴は咄嗟の判断で後ろに飛んだ。

 が、あらかじめ上から落とした石に後頭部をしたたかに打ち付け、伸びてしまった。甘い(笑)。

 魔法名を口に出すのは仲間にどのタイプの魔法を使うか知らせるためであって、正々堂々宣告しているわけではない。単独行動の魔法使いは場合によっては最も危険だと認識した方がいい。


 決着がつくと、残ったメンバーは戦意を完全に消失していた。

 念のために石の錠を腕に付け、武装解除をしておいた。

 リーダー格っぽかったやつも同じ処置をして、治療魔法で出血は止めてやった。




 そうこうしているうちに、神父達がぞろぞろと出てきた。目の前の状況を見て絶句している。


 ふぅ。


 教会(いえ)、出るか。

 だって緊急事態とは言え流石にやりすぎた。教徒の前で治療魔術も使ってしまったし、完全に異端児だろう。

 とりあえず私は戸惑う彼らを尻目に、教会ではなく村の方へ向かった。


 血まみれで倒れていた男はおそらく村の住民。私たちに危機を教えにきたのだろう。そうなると本隊は村だ。一介の村人に過ぎない人たちの戦闘力は期待できない。下手に抵抗してしまうとマズい。

 手遅れでなければいいが…。




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