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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:5 転生魔導師と別れ

 数日が経ち、ニアの誕生日がやってきた。

 準備のために、私はジャックと二人で村に食材を買いに来ている。


「リズお前よ、プレゼント用意したか?」

「ニアのプレゼント?もうとっくに渡したわ。」

「もう渡したのか!?気が早過ぎるんじゃないか?」


 私のプレゼントはあの杖。洒落っ気はないが、実用性は抜群。そこら辺の店で売ってる高めの杖なんかお話にならないくらいの代物だ。

 今になってもうちょっと凝ったデザインの物にすれば良かったかなとか考えてしまっているが…。


 ま、いいでしょ!

 そもそも初心者用の杖に偽装するためにシンプルなデザインにしたんだから、今更凝ったものとか考えなくていいんだよ、うん。


 今日の買い出しはもうどう考えても誕生日用のスイーツだよねってものが多かった。

 ていうかうちの教会やたらとスイーツ美味しいんだよな…前世じゃあまり興味なかったけど、これからはそういうのも楽しんでいこうかな。



 教会に戻ると会の準備が滞りなく進んでおり、それを見ているニアはガッチガチに固まっていた。

 置物みたい。



 調理場に行くとやはりというか、シスターがスイーツを作っていた。

 幾度か手伝ったこともあるが、私は意外とそっちの才能もあるらしく、最近は一人でも簡単なものなら作れるようになった。


「ふふっリズ、荷物を置いたら手を洗ってから来てください。」

「は!」


 ガン見していたようだ。でも、うん。そうしよう。手伝いに来よう。外に出ても作れるように少しでも覚えないとな!!



 手伝った甲斐があってか、用意が少しだけ早く終わった。



「では、始めましょうか。ニアの12歳の誕生日を祝し、ここに――」


 神父の長くてありがたいお話が始まった。

 内容はまあ悪くないが事あるごとに神のありがたみを説いてくるせいでイライラする。


「さあ、祈りましょう…。」


 あーもう勝手に祈っててほしい。

 祝うだけでいいでしょうに…。


 少し長めの祈りの後、乾杯をして誕生会が始まった。

 乾杯といってもこちらは子供、神父達はご法度なのでお酒ではなくジュースだ。


 誕生日は基本的に豪勢になる。

 ジャックを見ると、もう“貪る”という言葉が当てはまるレベルで暴食をしていた。隣に座るレノがドン引き、シスターが呆れている。

 アレはお腹壊すね。

 とはいえ、私も少しハメを外してしまっている気がする。


 少し胃を休めるのも兼ねて、私はアンと話しているニアの方に向かった。


「ニア、改めて誕生日おめでとう。」

「リズ!ありがとう!今日のデザートはリズも一緒に作ってくれたのよね?」

「ええ、ニアのために腕によりをかけて、手伝いましたよ!」


 無い胸を張ってみる。どやぁ。


「あとで出すから期待してね!」

「ふふ、わかったわ。」

「あ、それと話したいことがあるんだけどちょっといいかな…?」


 私はニアに近寄り、耳打ちする。


「私がニアに魔法を教えたっていうの、できれば内緒にして欲しい。」

「前も言ってたね。でも難しい気がする。」

「教会の近くに来た魔法使いに教わったとか言っておけば大丈夫だよ。そこらへんの魔法使いでもランク3くらいなら教えられるから。」

「なるほど。」

「あとプレゼントなんだけど、こないだ渡した杖、アレがプレゼントって形でもいいかな?」

「うん。というかアレがプレゼントって凄すぎない?魔法の威力が全然違うよ?」

「ふふふ、気に入ってくれたようで何よりだよ!」


 私は笑いながらニアの耳元から離れた。





「では、みんなからニアにプレゼントがあります!」


 パーティも終盤。

 シスターの声でみんながそれぞれプレゼントを持ち出した。


 ジャックは貯めたお小遣いで買ったナイフのようだ。珍しくまともなチョイス…いや、そういうことに関しては頭が回るのだろうか?


 レノとアンは同じくお小遣いで買ってきたペンダントらしい。


 ローは摘んできた花で作った花束だった。


「最後はリズかしら?」

「あ、私はもう渡してあるんだ。」

「あら、そうだったのですか。ちなみに何を?」

「内緒です〜。」


 余裕ありそうだが必死にはぐらかしていた。それ以上聞かないで欲しい…。


「ではプレゼントも終わりましたし、デザートを持ってきますね。リズ、手伝ってもらってもいいですか?」

「あぁ、はーい今行きます。じゃあニア、期待しててね。」


 私は調理場に向かった。

 今日作ったのはマフィンだ。実はニアの好物で、いつも目をキラキラさせて食べていた。


 私はマフィンの乗ったトレーを持って食堂へ向かう。


「ああああああああ!!!!マフィン!これを作ってくれてたのね!!」


 あ〜ニアがすごい喜んでる〜手伝った甲斐ある〜


 ニアはもう椅子の上で小躍りするんじゃないかというくらいはしゃいでいた。

 いや、もうアレは踊っていたな。左右にソワソワと動いていたし。カクター系の魔物があんな動きしてたな。確か。

 というか待って、杖あげた時以上に嬉しそうじゃん。

 え?杖<マフィン?

 そうか…ニア…そうなのか…妹は今、心の中で涙しています。


 結局ニアは、パーティじゃ見せなかった貪りをマフィン相手にかまして、神父やシスターはおろか、ジャックまでドン引きさせた。お前もああだったからな、さっき。


 パーティも後片付けが終わり、そろそろ寝ようかという頃。


「リズ…一緒に寝ない?」

「ニア?」


 ニアは先ほどまでマフィンを前にして緩めていたとは思えないほど、真剣な印象を受ける顔をしていた。


 ああ、そういうことなのだろう。

 私は妹として、その提案を受け入れた。


「リズ、今日はありがとう。マフィン、美味しかったよ。」

「それは良かった。杖を上げた時よりも喜んでましたものね。」

「な!リズ!そんなことないって!」


 私とニアは互いに向き合いながらベッドで横になり、小声で喋っている。

 子供用だから狭く、二人でとてもギリギリだ。


「…私…緊張してる…。」

「明日出立ですからね…。」

「なんか…リズ、冷たい?」

「いいえ?明日ニアがここを発つ事が、永遠の別れではないと思っているから、悲しいとか考えていないだけです。」

「え…?」

「いずれ私とジャック、レノ、アン、ローもここを出ます。でも生きていればどこかで会うこともあるはずです。」

「でも、外は危ないんだよ?魔物とかもいるし、生きていればなんて…。」


 ニアは不安や焦りや、その他諸々の感情でだいぶネガティブになっているようだ。


「そもそも、そんな簡単に死ぬような鍛え方をしたつもりはありません。あなたには魔法がある。それもランク3までの攻撃、防御その他諸々をしっかりと教え込みました。まずそれで魔術師ギルドを目指しなさい。そこでさらに鍛えればニアは伸びます。天才の私が言うのですから確実です。」


 そこまで聞いてニアがクスリと笑った。


「天才って、自分で言っちゃうんだね。」

「ええ、天才ですから。」


 私とニアは二人で小さく笑い合った。

 前世じゃ正直辟易していた天才とかいう称も、家族を少しでも笑わせられるなら捨てたもんじゃないな?


 そのあと少しお喋りしていると眠気がやって来て、二人とも抵抗する事なく眠気に意識を委ねた。




 翌日。

 ニアの旅立ちの日。


「ニア、あなたの旅路に幸せが溢れんことを。」

「ありがとうございます、神父様。シスターも、お世話になりました。」


 ニアの言葉に、シスター達が口々に別れの挨拶をしている。

 アン、レノ、ローの年下組はワンワン泣いていた。

 ジャックも涙を流していた。


 私はと言うと、



 泣いていた。



 あれ?昨日あんなキマること言って泣いてますよこいつ。

 おかしいな、泣かないようにしてたのに…。


「あはは、リズ結局泣いてるじゃん。」

「そう言うニアも顔がぐしょぐしょですよ。」


 みんなと挨拶を終わらせたニアは、私の前に来た。

 タオルを渡すと、ニアは顔を拭く。

 あーもうすごい顔になってるよ…。


「でも、昨日も言った通り。これは永遠の別れではないんです。なので、私は笑顔で見送ります。」


 そう言って、私は精一杯の笑顔を見せた。おそらくひどい顔だろう。

 でもニアはそれに応えるように、笑い返してくれた。


「みんな、ありがとう!またどこかで会おうね!」


 そうして、ニアは旅立っていった。

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