Vol:4 転生魔導師と弟子?
ニアがクラス2の魔法を扱えるようになってから、3度目の冬が訪れた。
まもなくニアの12歳の誕生日が来る。
この教会では12になったときに独り立ちをすることになっている。
あの後も私はニアに魔法を教えていた。そのおかげか、詠唱が必要ではあるがクラス3の魔法まで扱えるようになった。
簡単な防御用の魔法から、治療魔法も教えた。治療魔法はさすがに抵抗があったようだが、無理を言って覚えさせた。もちろん、教会には内緒で。この辺は魔物が弱いとはいえ、魔物が危険であることには変わりない。
ニアの誕生日の翌日に、ニアは旅立つことになる。
だから、その前にやっておく事があった。
ニアを連れてきたのは教会の裏、森の奥。滅多に人が来ない場所だ。
さてどんな事をしてやろうかウヘヘ。
それはそれで一部の愛好家にウケそうだな…貴族にもそういう類のが居たし…
いや、今からするのは普通のことなのだ。
「ニア、3年間お疲れ様でした。結局クラス3の魔法までしか教えられませんでしたが、そこまでで教えられる事は教えておきました。この辺りの魔物に遅れる事はないでしょうが、決して油断しないように。」
「はい!…なんか不思議な気分だね。」
「歳で言うと私が教わる方だからね。それで今日呼び出したのは他でもない、卒業試験を受けてもらいます。」
「卒業試験!?聞いてないけど!」
「言ってませんからね。」
そう言って私はニアの前から離れる。十分に距離を取って、周囲に被害が出ないよう結界を張った。
「私の魔法を防いでください。当たっても死にはしませんがめちゃくちゃ痛いですよ。」
「あんまりだー!!」
文句を言いつつも、ニアは構えた。
右手には私があげた短い初心者用の杖がある。
材料は異空間の中にあったので簡単に作り上げたものだ。とは言っても杖本体は魔力の多いところに生える魔法樹の一種、魔力伝達率が高いマナトネリコから削り出したハイグレード品。魔晶は魔力増幅の力を持つクリスタルゴーレムの核を使った物で、少ない魔力で高出力の魔法が使える一級品だ。見る人が見れば初心者用(笑)の杖である
材料は全て前世で腐るほど回されてきた研究材料を使っている。
横領ですね。ハイ。
「火炎よ、灼熱の炎よ──」
私は構えると、ファイアボールを詠唱した。
無詠唱で放つ事はできるが、ニアが魔法に対処する必要がある。
対人をするとは限らないが、やっておいて損はない。
ニアはそれを見て、ウォーターアローを詠唱し撃ち出した。ランクが低いほど魔法の展開速度は上がる。
そして属性の相性も考えている。とてもいい選択だ。私のファイアボールは爆発するでもなく消滅した。
すかさずライトニングアローを唱える。
が、それはニアの咄嗟の判断で防がれた。土魔法の応用だ。
手元から土を生成するよりも、足元の土を使った方がいい。自ら生成したもののように自由に動かす事はできないが防壁を作り出すくらいはできるのだ。
基礎も応用も問題ないようだな。
その後もさまざまな魔法で攻撃を試したが、ニアは悉く防いだ。詠唱ありとはいえ彼女には才能を感じる。
「よし、そこまで!最終試験は合格!」
「お、お疲れ様でした…」
ニアはグロッキーになっていた。魔力枯渇だ。
12歳でアレだけ暴れたらそうもなるよね。
「すっからかんっていう感じだね?」
「うぅ、何でそんな…。」
「何でそんなに余裕があるんだー、っていうのは内緒かな。」
「ぐへぅ…。」
私には外部タンクがあるからな。今の戦闘程度じゃ減ったとは言えないくらい余裕がある。
ニアの回復を待ってから教会に戻った。
シスター達にゲッソリとしたニアについて聞かれたが、魔法の練習ではしゃぎ過ぎた結果だと言った。ニアがすごい顔でこっちをみていたが気にしない。晩御飯の時にはいい笑顔になっていた。空腹は最高の調味料である。
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さて、私はある生理現象に頭を悩ませていた。
というかモロそのまま生理です。はい。いやまだ来てないんだけどね。
恐ろしい生理現象だ。えげつない量の血が出るって聞いたし、人によっては寝込むとか、痛さでのたうち回るとか。
で、どうにかしてそれを回避できないか考えました。
生理自体を止めてしまうと絶対体に良くないことが起こる。
生理が来た時に対処療法で抑えてもズレた体調のバランスまではどうにもできない。
ならば止めてしまおう。
何を?
成長を。
クラス8魔法。
それは世界の理に触れる魔法群。
万物に働く重力を操作し、時を止め、望む場所に瞬時に転移できる。
詠唱で行使できるわけがなく、主に魔法陣を用いて使われる魔法。その魔法陣も、魔力制御を上手く扱えなければ起動すらしない代物である。
しかしながら効果は非常に強力で、殆どが準禁術に指定されている。
例えば時間停止魔法。コレを対象に使うと文字通り時間が止まる。範囲を指定しなければ国や星単位で止められるが、その分魔力を食う。用法を誤れば即死に至る。そういった魔法がクラス8に分類される。
クラス8でそのレベルならクラス10はどんだけだよと思うが、10を使えるのは魔王だけらしい。
クラス10なんかはその規格外の魔法をあえて分類するためだけにあるとか。恐ろしすぎるわ。
クラス9は殆どが禁術だ。故に認定試験が存在せず、魔法のクラス分けのためだけに存在している。まあ使える人間もいるんだが。
で、今回私は何をするのかというと、時間停止魔法を極端に範囲指定して使う。
それが体の成長だ。
この方法は前世で作物に対して実験済みなので安全だ。作物の生命活動はそのままに、成長だけ止まった。未成熟の果実が魔法を切るまでそのままになったからね。
深夜、みんなが寝静まった頃。私は部屋を抜け出して外に出た。
手にはあらかじめ借りておいた縫い針。
岩石でタライを作り出し、そこに火魔法で沸騰させた水を容れる。魔法って便利ー(棒)
針を煮沸消毒すると、左胸に突き刺した。
治療魔法の一種で痛覚を切っているとはいえ、めっちゃ怖い。しかも灯りにしてる小型火球が揺らめくので見にくい。しかし背に腹は変えられない。ほぼ一生付き纏うアレと比べたらまだマシでしょ。
刺した針を中心にして、魔法陣を組む。
体内で生成された魔力をまず外部タンクに向かわせて、そこから魔法陣に流れるように組む。魔法陣には時間停止と身体回復の二つを組み込んだ。
「コレでよし。」
胸に刺さった針を引っこ抜くとすぐに血が止まり、みるみるうちに穴が塞がった。問題なく動いているようだ。
多分手や足が飛んでも生える。
全て片付けて教会に戻ったら起きてたシスターにめちゃクソ怒られた。寝付けなかったと言ったら睡眠魔法をかけられてベッドに転がされ、気がついたら朝だった。ゆるさねぇ。




