Vol:044 転生魔導師と大魔導の手紙
登場人物紹介
リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。
ニア - リズと同じ孤児院で育った赤毛の少女。髪の色と得意な属性から爆焔姫と呼ばれる。魔法の師匠はリズ
セナ - リズのパーティメンバー。メンバー内唯一の前衛タイプ。完全感覚アタッカー。
ナーシャ - リズのパーティメンバー。元々弓使いだったが、リズの訓練によって魔法矢という魔力を載せた矢を放つ魔力弓使いになった。
マリアンナ・ヴァーディクティリ - この世に数人しかいないクラス7魔法を扱える魔導師。
総本部行きが決まって数日。
この間マリアンナから言われた通り、彼女と最初に出会った店の前に来ていた。
「渡したいものって何だろうね」
「さぁ…何かの魔道具とかかな?」
店の扉を開けて、中に入る。
「いらっしゃい。マリアから話は聞いているわ」
「あれ、なんでわかったんですか?」
「赤い髪は珍しいからね。さて、預かっていたものはこれよ。」
店主がカウンターの下から取り出したのは、二つの封筒だった。
「これは…この封蝋、ファールナム王立魔法学院か。赤毛の小娘…ニア宛だね」
「お、王立魔法学院!?」
世界に三つ存在する、魔法を専門にする学校。
ヴィエナス王国の“国立魔導学園”
アフルエニア帝国の“帝都中央魔法学校”
そして、“ファールナム王立魔法学院”
国立魔導学園は前世の私が卒業した学校。帝都中央魔法学校は東方、アフルエニアという帝国にある学校だ。そして、ファールナム王立魔法学院。
震える手でニアが封を切ると、中から装飾された豪華な三つ折りの紙と、一般的な紙片が出てきた。
三つ折りの方を開けば、そこには
――当学院への入学を推薦する。
マリアンナ・ヴァーディクティリ――
超簡潔にそう書かれていた。
マリアンナは、実は王立魔法学院の教師であり、理事長だったりする。
時折才能のある者を見つけて学園に入学させるというのを聞いたことがあったけど、本当だったんだなー。推薦状がクソほど雑だけど。
ニアが封筒と共に推薦状を落とす。
「えっ、へっ、えっえっ…嘘…」
あまりにも驚きすぎたニアが、少し過呼吸気味になっていたので落ち着くように言う。
「すすすすす推薦状…」
「王立魔法学院って有名な魔法の学校だよな…?」
「有名なんてもんじゃないよ…」
三人はそれぞれ推薦状にビビっていた。
「滅多にないことだし、受けてみたら?」
私は床に落ちた封筒を拾いつつ言った。
「でででででも学費とか用意できないし…」
「推薦を受けた生徒は入学と年毎の学費、学生寮の費用は免除だったはずよ。教科書と制服も学校側から支給されたはず。」
「はぇえ!?」
これはどの学校も同じことなのだが、推薦を受けた生徒はそういった特別免除を受けることができる。
この制度を導入したのはヴィエナス王国の国王。
曰く「真に魔法の才有る者が、金銭などという下らない理由でその才を発揮出来ないのは、全人類の損失である」とかで、推薦を受けられるほどの才能があるのであれば貴族平民はもちろん浮浪児すら学校で学ぶ機会があっても良いだろうと制度を提言し、三校同意のもとで導入されたのだ。
「でもさ、ニアが学校に行くってなったら、アタシたちはどうすればいいんだ?」
「そこに関しても考えてくれていたみたい。」
私は、封筒に入っていたもう一枚の紙片をセナに見せた。
そこには、「他二名は騎士団で面倒を見るように言っておくから、しばらく世話になると良い」との一文が。
「騎士団!?ファールナム騎士団にか!?」
「見込み有りって判断されたのかもね」
「何を根拠に!?」
「ダンジョン攻略者という功績だと思うよ」
私は金髪の小娘宛と書かれた封筒を開けた。
「いやいやそもそもアレはほぼリズだけで攻略したようなもんだろ!それに5階層まで踏破済みだったし!」
「それを踏まえてもってことなんでしょ。私には推薦状が無いみたいだし」
そう言ってセナに私宛の封筒に入っていた紙を見せた。
封蝋こそ学院の物だが、手紙自体はニアが貰ったものとは違い装飾は少なく、
「来院許可証 金髪の小娘 ファールナム王立魔法学院 理事長 マリアンナ・ヴァーディクティリ」
と書かれていた。宛名が適当過ぎて許可証として通用するのか甚だ疑問だ。
「どういう事?」
「私だけ別案件で呼び出されている。私の事は査定に入ってないの」
「いやそんな事一切書かれてないけど?」
「とにかく、3人ともしっかりした環境で修行できそうだね」
わけわかんないんだけどー!?
というセナの叫びをよそに、私達のファールナム到着後の予定が着々と進むのであった。
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