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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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vol.43 転生魔導師と踏破報酬

登場人物紹介

ハンナ - 冒険者ギルドクーデン支部長の女性。(したた)か。

 ダンジョン攻略の翌日。

 私たちは報酬を受け取るためクーデンのギルドに来ていた。

 受付のお姉さんに通されて、ハンナが待つ部屋に向かう。


「さて、お疲れさまでした。皆さんのおかげでダンジョン内部の安全が確保され、本格的な調査が開始されました」

「もう二度とやらないから」

「でしょうね。まあ、あれはロジャース君のせいなので、あそこまで急な話は来ないと思いますが」


 ノックが聞こえ、ハンナがそれに応えると、ハンスが袋を持って入ってきた。

 彼が動く度に鳴るその袋に、眠そうにしていたセナが反応した。


「今回の報酬である金貨50枚が入っています」

「おーっしゃやったーーーーー!!!!!!!!!!!」

「それと、依頼は関係ないのですが、ロジャース君から通達がありまして」

「通達?」


 セナたちが金貨が入った袋から分配をしている間、私はハンナの話を聞いた。


「ええ、次の総会にあなた達を連れてきてほしいと。」

「総会?支部長が総本部に集まるアレ?」

「よくご存じですね、その通りです。だいたい二か月後ですかね」


 つまりロジャースは換金の話を押し付けられたけど、総会に合わせて私たちを総本部に召喚し、あわよくばそこでまた面倒事を済まそう、という魂胆ってわけ?


「あの男…」

「少女がしていい表情ではなくなってますよ」

「…チッ。それで?私たちはどういう扱いになるわけ?」

「そうですね…招待客、という扱いではないですね。懲罰でもないですし…そう考えると招待が一番近いですかね。なんにせよ、支部保有の馬車で移動して頂く形になります」

「あれ、てっきり『金は出すから乗合で来い』って言われると思ったけど?」

「ロジャース君ならそういうセコいことを言うかもしれませんが、私はあなた達に良い印象しかありませんので」


 ハンナはそう言うとニコりと笑った。超優しい。おかげで支部所有のいい馬車の旅が確約された。

 さすがに王宮勤めの頃のような馬車ではないが、乗合なんかよりグレードは数段上だ、ありがたく使わせてもらおう。

 ただ…


「あれ?ここからだと船を使った方が速いのでは?」


 ファールナム王国は陸路の場合、ヴァレニアを北上してグレーティスにかなり近づいた後にローリアという国を経由して入国することになる。

 しかし、ファールナムには港があるため、ヴァレニアから船を使えば大きなショートカットになるのだ。


「ええ、そうなのですが…ローリアのエプナス島近海で海棲(かいせい)魔物が活発化していまして。その影響でエプナス島のルートが使えなくて」

「ああ、そういえば海の方で立て込んでいて私たちにダンジョンの探索を任せた、みたいなこと言ってましたね。そういうことだったんですか」

「ええ、それに慣れない船旅はキツいですよ?」


 あーそうね、多分全員ダウンするわ。私も無理。


「それだったら陸路の方が良いですね…」

「でしょう?とりあえず出発はひと月後。それまでに準備を整えておいていただければ、あとは自由行動で構いません」

「わかりました、それでは。ほら行くよ?」

「おーう!」


 私が立ち上がると、他の3人も動いた。

 ニッコニコのセナから私の分の袋をもらい、中身を確認する。

 13枚入っている。


「多くない?」


 金貨50で一人に13って明らかに数おかしいでしょ。


「いーや、あってるよ。正直リズがいないとあの仕事はここまでうまくいかなかったと思うし。そんで、10をギルド預け、あたしら3人で9ずつ、残った分がリズってことになったんだよ」

「そう…それでいいならいいけど」

「金貨9だって十分大金だよ。十分十分」

「教えてもらうことも多かったし、この経験は金貨1枚分より大きくなりそうだしね」

「なるほど、それならありがたく受け取っておくわ。それじゃ、失礼します」


 支部長室から出て、廊下を歩く。

 何人かすれ違うギルド職員とあいさつを交わす中、ふとセナが聞いてきた。


「そういえばリズってさ、なんであんないろいろな事知ってんだ?」

「あーそれ。私も気になってた。ニアは?」

「私は教会で一緒に暮らしてた頃にあきらめたわ」

「えーなんで?」

「だって――」

「その質問に答えたことで発生する責任を、貴女は何処まで負えるの?」


 ニアの声を遮るように私が声を発した。


「質問をするなってこと?」

「そうじゃないわ。私の回答で知り得た事柄に責任を持てるのであれば聞いていいってだけの話よ」

「重…」


 思わず、といった感じでセナの口から言葉が漏れた。

 私はふっと笑う


「冗談よ。ヒュレスの街にいるアイリーンっていう魔女に教えてもらったの。色々とね」

「なんだよ!変な答え方しやがって!」

「フフフー!!女子たるもの秘密を持っていた方がカッコいいのよ!!」

「なんだそれ」

「…」


ニアからは冷ややかな目で見られた。

「Need not to know」 とか 「答えを知りたくない事は質問しないことだ」とか、そういうの好きです(アホ)


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