vol.42 転生魔導師とクラス7
サブタイ考える時が執筆作業で1番脳みそを回転させる作業なのではないだろうか
「あ、戻ってきた」
転移門を介してダンジョン内部に戻ると、ニアに出迎えられた。
「もう何があっても驚かない自信ができた」
「私も」
他二名は何やら話しているがよくわからない。
「で、どうだった?」
「なんか…総本部に行くことになった…」
そう告げると、場の空気が一瞬固まった。
「…は?そ、総本部?」
「うん」
「総本部ってあのファールナム王国の?」
「そうだね」
ファールナム王国。世界最大の国力を持つ大国家である。
そしてその首都であるレンネムに冒険者ギルドの総本部は置かれている。
レンネムはその国力を体現するかのように栄えており、すべてにおいて高級、最先端となっている。
いち田舎出身の冒険者からしてみれば、レンネムは羨望の的。そこへ行ける者も同じく…
らしい。
知らんけど。
私からしたらたまったもんじゃないが?
でも行かなきゃ換金は出来ないし、行くしかないのだ。
げんなりする私とは対照的に都会へ行けるとはしゃぐ3人。とりあえず私たちは全階層踏破の報告をしに、地上へ戻った。
「はぁ、そうですか。やはりダンジョンボスが」
「えぇ、もう倒してあるので問題はありませんが」
地上に戻り、調査班へのレポート提出を済ませたところマック達へ詳細な報告をすることとなって現在。
用意された天幕で調査班数人と話し合いをしている。
一応全員で報告に来ているが、他三人は話半分でほぼ寝落ちしてしまって、私しかしゃべっていない。
「ダートゴーレムを倒してしまうとは。若年とはいえさすがはCランクですね。あなた方のランクに難癖をつける輩が多いと聞きますが、これほどの実績があれば彼らが絡んでくることもなくなるでしょう」
「それは良いですね。ところで、相談した件はどうなりました?」
「レポートにあったゴーレムのコアのことですね?その類の物は魔物の素材と同義に考えられていますので、所有権はリーゼリットさんに――」
「ちょっと待ちな」
私の後ろ、天幕の外から声が聞こえた。それも老婆の声だ。それと同時に、圧をかけるような魔力も流れ込んできた。
振り向くと、見覚えのあるババアが立っている。
舟をこいでいたナーシャとニアも魔力に気付いたのか、目を覚ましてババアを見る。
「おや、妙な魔力があるから警戒したが、お前さん等かえ」
婆はそう呟くと、魔力をひっこめた。
思い出した。この婆、クーデンの街にある魔道具屋で会ったババアだ。
「マリアンナ殿、如何なされたのですか?」
「いやなに、さっきも言った通り妙な魔力を感じたからね。確認に来ただけさ」
マックの問いに、マリアンナと呼ばれたババアがフフフと笑って答える。
そうか、マリアンナか。どおりであの時見知った顔だと思ったわけだ。
「え!もしかしてクラス7、大魔導マリアンナ!?」
ニアが急に声を荒げる。そうそう、どこかで見たことあると思ったら、前世で何回か会合の時に顔を合わせた魔女だ。
あーなんかすっきりした。
「おや、知ってるのかい?」
「知らないわけないじゃないですか!!中上級魔力論書にはお世話になりましたから!私の修行法に合っていてとても分かりやすくて…」
そんなやり取りをするニアとマリアンナを見て、ナーシャが私の横腹を肘で小突いてきた。
「ね、あのお婆ちゃん何者なの?」
「あれはマリアンナ・ヴァネッサ。クラス7の魔導師で、確か水系のエキスパートだったかな」
「ク、クラス7って世界で数人しか存在が確認されていないって言ってたやつ…?」
「そうそう」
「そうそう…って、リズは感動が薄いね…」
まあ私がそもそもクラス7だしね。
そんなことを思いながらぼーっと二人を見ていると、マリアンナがこちらを向き、目が合った。
「さて、雑談はこの辺にして本題に入ろうじゃないか。私が感じた妙な魔力は金髪のお嬢ちゃん、アンタだよ」
「私?」
「ああそうさ。魔力が前に見た時よりも随分と様変わりしているからねえ…お前さん、魔族じゃあないだろうね?」
魔族。人族を凌駕する身体能力や魔力量を持ち、種によっては魔物のような特徴を持つ者達のことだ。
「生まれはわからないわ。孤児だから。でも人間として育てられ、人間として暮らしている。そこは確かよ」
「飽くまでも人間だと言いたいのかい」
「当たり前でしょ。第一魔力だけで人と魔族の区別はつかないわ」
「…ふ、ふふ。そうかい、すまないね。年を取ると疑り深くなるんだよ。詐欺とかあるからね。お詫びと言っちゃなんだが、後日渡すものがある。幾日か後に最初に会った店に行きな」
マリアンナはそう言ってそそくさと天幕を出て行った。
なんだあのババア…。
面白い、応援したいと思ったら、感想、ブックマーク等をいただけると、今後の励みになります。




