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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
43/47

vol.41 転生魔導師と因果応報

登場人物紹介

ロジャース - リズが初めて訪れた街であるヒュレスにあるギルドの副長。胃が弱い。

 ここ最近はクソが付くほど忙しかった。

 街道にオーガが出てきた事件を皮切りに、デカい従魔事件やら魔物侵入事件やらオーガの巣の強襲やら。

 書類仕事に加えて前線に出張ったもんだから疲労も半端じゃない。おまけにオーガの巣強襲作戦に参加した内、重傷を負ったやつらは復帰までに時間がかかる。補填こそないが予後の確認はあるし、抜けた穴を埋めるためにさらなる書類仕事や街の守衛に割り振る人員の調整、本部上層への報告…とギルマスも俺も過労でぶっ倒れるんじゃないかという忙しさだった。

 まあ、それもこれも唯一すべての事件に関係していた厄病神を隣国に送り込んで、その上向こうさんの事業に組み込むように仕組んだし、しばらくは帰ってこないんじゃねぇかな。もう何も起こらねぇだろ。


 平穏を取り戻した余韻に浸りながら茶を(すす)る。

 カップを置いて、本日の収支報告書に目を通す。やはり重傷者が療養に入っているのがデカいのか、ここ最近下がり調子をキープしているな。ため息が出る。



 コンコンッ



 扉をノックする音が聞こえた。


「入れ」


 返事をしたが、入ってこない。


「なんだ?」


 俺は扉まで向かい、開けた。が、人はどこにも誰もいない。

 ノックした後すぐに隠れたという気配もなかったし、気のせいだったのだろうか?

 開けた扉を再び閉める。と、そこで違和感に気付いた。

 何故人がどこにも、誰もいないんだ?

 冒険者がギルドの奥に入ってくることが無くても、ギルド職員は普通に行き来しているはずだ。それにギルドの奥まった位置にあるわけでもないため、廊下に人がいないということは基本的にあり得ない。

 良いようの無い不安に駆られた俺は、机の横にある剣を取るために振り向く。



 目が合った。



 そいつは俺の席に座っていた。

 気配は一切感じられなかった。


「ちょっと重要な話があるから、人払いをさせてもらったわ」


 厄病神リーゼリットが、悪魔の微笑みを浮かべる。





「な…なぜここに…お前は」

「ヴァレニアに向かったはずだって?ええそうよ。でも話があって戻ってきたの」


 私のアテとはこの男、冒険者ギルド ヒュレス支部副長のロジャースである。

 クーデンからヒュレスまで一週間はかかるが、私には転移門という魔法がある。

 クラス6の魔法で、異空間を介して長距離を一瞬でつなぐことができる魔法だ。

 しかも一度行ったことのある場所は詳細に指定することができ、こうやって建造物の中にも移動できるのだ。

 そしてちょっとしたトリック、まあノックされて扉を開けても誰もいない、なのに振り向いたら部屋の中に人がいる。これ滅茶苦茶怖いよね。恐怖心を煽るのに少し遊ばせてもらった。

 どうやら効果覿面だったようだ。だんだんと顔色が悪くなっていくロジャースに構わず、こちらの主張と要求を叩きつける。


「ね、クーデンのギルドに着いたらいきなりダンジョン攻略の話を出されたんだけど何か知ってる?もちろん知ってるわよね、アンタが推薦を出したんだから。私の知らないところで」

「くっ」

「でさぁ、あのダンジョン攻略したらとんでもない代物が出てきちゃったから、それの処理を頼まれてほしいの。私の知らないところで色々やったのは許すから、謝罪代わりにお願いできないかなーって」


 私は支部長の椅子から退き、来客用の椅子に腰かけた。それを見たロジャースはいったん机に戻ってティーカップを手に取ると、それを持って私の前に座った。とりあえずは私の話を受けるという意思表示だろう。

 交渉という形で。


「…あぁ、確かにお前に話を通さなかったのはこちらに非があるしな。だが内容にもよるぞ」

「ハイは?」

「…ハイ」


 これでよし。残念ながらこれに交渉の余地はないんだよロジャース君。君が私を厄介者扱いしていることも、私に恐怖心を抱いていることも理解しているうえでお話に来ているのだから。

 ロジャースは死にそうな顔で茶を啜っている。


「というか、お前はなぜここにいる?クーデンからここへは一週間はかかるだろ?」

「世の中には知らない方が得することもあるのよ」

「…それで、何を処理するんだ?」

「これよ」


 私は異空間を開き、中に適当に突っ込んでおいた元ゴーレムの腕をロジャースに見せた。

 ロジャースは突然出てきた物体に何か言いたげだったが、すぐに様々な方向から観察を始めた。

 少しすると観察が終わったのか動きを止めて俯き、右手で顔を覆い、息を吸った。


「限度ッ!!!!!!」

「うっさいわね…」

「待て待て待て待てお前これミスリルだろうが!」

「ご明察。ミスリルゴーレムね」

「ミスリル製ゴーレムだと!?しかも今の腕から考えたら3エンクはあるゴーレムだろ!」


 背もたれに体を完全に預け、こめかみを抑えてロジャースが唸る。胃痛持ちから頭痛持ちに転職したのかな。


「そ、ダンジョンの最下層で襲われたから無力化して回収したの。で、その処理、というか換金ね。それを任せたいわけ」


 そこまで言うと、ロジャースは顔を上げて私を見た。


「…待て、ダンジョンの最下層ってことはダンジョンボスか?」

「そうよ」

「あー、うん。そうか、お前それ、ダンジョンの研究用サンプルとして提出する必要があるんじゃないか?」

「内部にいる敵性体のドロップ品に関しては何も言われていないし、仮にそうだとしてもボス討伐の特別報酬の代わりとして貰うわ。」

「ドロップ品ってお前…いいだろう。処理の手はずは整えてやる」

「さっすがロジャース」

「ただし」


 ロジャースが私に人差し指を向けた。


「3か月後、ギルド総本部へ向かう。いいな?」


 は?


「はああああああああああああああああああああああ???????????????」

インガオホー!!



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