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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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vol:38 転生魔導師のダンジョンアタック その3

ダンジョン回は次で終わると思います。

次で終わらせます。いつまで潜ってんだ


モグラか

 今まで前衛を私とセナ、後衛をナーシャとニアで組んでいたフォーメーションを、前衛をセナ、後衛を私、全体的な補助をナーシャとニアにした事で、攻略スピードが確実に落ちていた。攻略スピードというよりも、滝を処理する速さというのが正解か。

 そもそもランク的に討伐には無理がある魔導人形に対し、私たちは相性とコンビネーションという点だけで捌き切っていた。それが崩れれば実力差は顕著に表れる。


「敵の数が…!捌き切れない!」


 特にセナは酷かった。体力の配分を考えることもそうだが、戦い方にも気をつけるべきであろうという事になぜ気が付かないのだろうか。今も二体の敵を相手しているが、仮に一体で余裕だったとして、増えた時にも余裕なわけがないじゃん…

 まあもともと感覚派っぽかったし、体で覚えるしかないのだろうが。

 あ、なんだろ。メノーに置いてきた小ジャックを思い出した。あれよりはマシだけど。あいつ元気かな?


 とりあえず、セナが相手しているうちの一方を、石魔法の矢で貫き倒す。


「ごめん、リズ!ありがとう!もうちょっと引いて戦うよ…人数が減っているのが頭から抜けてた」


 ほら、こういうところが小ジャック(あの馬鹿)と違うんだよね。


「気にしないで。気付けているならそれで充分。私が全力で援護する。」


 まあ全力は出しません。


 遺跡消し飛ぶから。




 フォーメーションを変更してから少しして、このダンジョンも終盤といったあたりだろうか?

 この遺跡、下に向かうにつれて大きくなっているらしく、角錐、円錐のような形をしているようだ。当然、下層になるにつれて階層の広さは増えて、一階層あたりの負担が比例して上がっていく。

 それでも何とか私たちは遺跡の最下層、今までの道筋からすれば、最後の部屋に通じているであろう石の扉を発見した。


 ここに来るまでに魔力堆積塊(ダンジョンコア)のようなものは見つからなかった。ということは、この扉の先に発生しているはず。

 そしてそこには、このダンジョンの最高捕食者たるボスも存在する…。


 …?


 ともあれ、ここまで来れたはいいが消耗が激しい。正直言ってこのまま入って無事という保証はない。

 戻る手間があるが、一度引き返すことにした。

 帰りはまあ楽である。いくら澱みが発生しているとは言っても、魔物の発生はかなりの時間を必要とする。

 次ぎ来た時にどのくらい湧いているか見当もつかないが、初日の多さに比べたら全然違ってくるだろう。

 報告もかねて、5階に一度戻ろう。




「あ、お帰りなさい。探索は順調ですか?」


 5階に戻ると、そこにいるギルド職員が駆け寄ってきた。


「はい、一区切りつきましたので、戻ってきました。報告もいろいろあります。」

「わかりました。でも皆さん3日は潜っていましたし、いったんお休みになられてはどうでしょうか?」


 やっぱりそのくらいか。遺跡内部はそこまで広くもないが、とにかく敵が多い。群れに足止めされて、何度かこしらえた拠点へ戻るのと群れのせん滅と…と繰り返し行き来することもあった。しかも遺跡内は明かりもないので日付感覚が狂う。疲労もあったし、寝るときは交互に寝るので、自分が何回寝て何回夜を過ごしたか、なんて数え方はできなくなる。


 とりあえずそんなことは置いておき、私たちはギルド職員の案内で遺跡の外に設営されたキャンプにて三日ぶりの熟睡と、温かい食事を摂って英気を養った。





「そうですか、マギカドールが…」


 十分な休息をとった後、私は調査員のリーダーであるマックという男性職員に報告をしていた。


「はい。ほかの階層では出てなかったのですか?」

「そうですね、少なくとも第一から第五まででそんなものが出てきたという報告はありませんでした」


 なるほど、そうなるとやはりあの階層は何もかも異質。なんの理由があってかは知らないけど。


「一応内部構造をマッピングして複製してあるので、こちらは渡しておきますね」

「ありがとうございます。今後の調査に役立てます。それで、この後は最下層へ?」

「はい、一応最後の扉も内部を確認しておこうという話になりまして」

「そうですか…気をつけてくださいね。このダンジョンの規模からして――」

「ええ、おそらくあの扉の奥にダンジョンコアとボスが存在するでしょう。まあ、ボスに関しては可能性がまちまちなので何とも言えませんが。危険だと思ったら即時撤退をします」

「了解しました。今回初めて一緒にお仕事をさせていただいたばかりですが、あなた方の仕事は速く、何より丁寧だ。現在6層の調査に入っているところですが、壁や柱に新しい損傷が見当たらないという報告が入っています。そういったところまで気を配れるような皆さんをこんなところで失うのは、あまりにも勿体ない」


 おお、もう6層の調査に入ったのか。となると6層は敵の出現も緩くなっているかも?


「そう言っていただけるとは光栄です。では、私は準備がありますのでこれで」

「はい、健闘を祈ります」




 そんなこんなで、私たちは再びダンジョン最下層の扉の前まで来ていた。

 道中の敵は前回の時点でほぼ殲滅(せんめつ)が完了しており、マッピングをしていたおかげもあって、非常にすんなりとここへ戻ってくることができた。


「よし、あとはこの扉の奥を確認するだけ。もしも内部にボスがいて、それを討伐できそうならばする、無理そうならば即座に撤退、調査隊への報告と討伐隊編成の申請をする。いいね?」

「りょーかい。装備は問題ないよね?」

「一応リズと私用に魔力回復剤を2本、ナーシャにはリズお手製の刻印入り魔法矢が数十本と、これまたリズお手製のポーションが10本。十分だと思うよ。ボスがいない可能性だってあるわけだし」

「まあ、用意があるに越したことはないよ」


 持ち込んだ装備の確認をし、私たちはいよいよ最後の扉に手をかけた。


 扉は内開きでそこそこの重さがあったが、問題なく開けることができた。ただ、何か少し引っかかった。扉の動きとかではなく、扉そのものに、どこか魔力が流れている気配がしたのだ。


「ん…?」

「どうしたの?」

「いや、なんか魔力が…」

「あれ?なんもないぞ?」


 先に内部を覗き込んだセナが、そんなことを口にした。


「え、なんもない?」


 続いて私も内部を覗く。

 とても広い空間だ。円形をしていて…まるで闘技場のような形をしている。

 やがて4人が警戒しつつも空いた扉の前に立った瞬間、突如として後方から突風が私たちの体を部屋の中に押し込んだ。なんとまあ単純な罠に引っかかってしまったものだ。しかもご丁寧に入ってきた扉は閉じられてしまっている。

 そして追い打ちをかけるように、目の前の床が下がっていく。


「んえっ!?」

「おいおい、まだなんかあるのか!?」


 円形の淵を3エンクほど残すように、中央部分が大きく下がった。下までは3~4エンクほどある。

 ただ、それ以上に…


「ねぇ、アレ…」

「ああ、アレはヤバいだろ…」


 私たちの足元、下がった床の壁に当たる部分に、金属光沢を放つ巨大なゴーレムが埋まっていた。

 いや、アレは埋まっているのではなく、格納されているのだろう。

 あれがこのダンジョンのボス。

 さっき脱出を試しみて、扉に向けて魔法をぶっ放した。しかし扉どころか壁全体に魔法防御の刻印が施されており、破壊できなかった。


 この部屋に押し込むような罠の配置、恐らくはあのゴーレムを倒さない限り私たちはこの部屋から脱出することが出来ないということだろう。なんという強引な罠だ。設計した者の顔を見てみたい。

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