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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:3 転生魔導師の姉

 ニアです。


 聖グレーティス国の田舎の教会に住む孤児です。


 先日妹弟──妹弟と言っても血の繋がってるわけではない、ただ一緒の教会で暮らしているだけの子ですが──の誕生日があって、その子達は7歳になったのですが、翌日妹の方がなんかすごい魔法を使ってました。

 妹のリーゼリットは魔法のことを隠しておきたいみたいで、私に「誰にも言わないように!魔法教えてあげるから!」と内緒にしてきました。

 圧縮魔法を簡単に操れることは誰かに自慢できることですが、彼女に言われたら姉として拒否するわけにはいきません。



 ということで、私はリズに魔法を教わる事になりました。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 私の魔法がバレて翌日。いつもの三人で仕事をした後、昼食後にニアと二人で教会の裏に来た。


 昨日椅子を作った木の下へ向かう。椅子は撤去済みだ。


「それで?ニアはどの辺がわからないの?」


 私は新しい椅子に座りながら尋ねた。


「うーん、クラス2の形状変化が難しくて。」


 クラス2となると槍と球か。

 槍は矢の延長で意外と簡単だ。となると…


「球が作りにくい?」

「そう、それ。」


 やはり。

 球でつまづく人は多い。というのも球状魔法は爆発させる事を前提としている。ファイアボールなんか当てて燃やすだけだったらフレイムで焼いた方が早いしね。


 で、爆発させるのに必要なのが魔力圧である。

 魔法内部の圧を上げる事で大きな爆発を起こすことができる。土属性はそれに当てはまらないが。

 土は爆発させるより塊でぶつけた方が威力高いしね。


 しかし圧を上げると制御が難しくなる。綺麗な球形である必要はないが、なるべく綺麗な方が爆発した時の力が綺麗に分散しやすい。

 この球形に保つのが難しいのだ。


 であればやる事は一つ。


「それじゃ、ダンシングフレアやろうか。」

「え?何で?」

「何でって…ニア、もしかしてまだアレを芸だと思ってるの?」

「だって攻撃できなさそうだし…」


 そこかよ

 というかニアは根本から間違っているようだな。


「ニア…魔法には確かに攻撃魔法があるけど、魔法は攻撃だけじゃないのよ…。」

「え!?」

「結界を張る魔法もあるし、傷を治す魔法もあるの…。」

「傷?回復術は神の奇跡でしょ?」

「グレーティア教ではそう言ってるけどあれは真っ赤なウソ…むしろ今までそれが変えられなかったことが不思議なくらい…。」

「そうなんだ…?」


 信じてないな?


「でも、それに何の関係が?」

「攻撃に関係ない魔法もあるの。だいたい、今座ってる椅子もそもそも魔法で作ったものだよ…。」

「たしかに…。」

「こほん。とりあえず、形状変化の練習に一番うってつけなのはダンシングフレアです。いきなり複雑な形で始めると大変なので、簡単なものから始めます。」

「はい!」


 それからニアはダンシングフレアによる形状変化の修業を始めた。

 まずは平面的なものから。これはすぐにできた。

 次に立体的なもの、これも平面ほどではないがスムーズにできた上、球体も問題なかった。鳥や蝶もやりたいと言われたが、練習の末追々と言っておいた。無理に決まってるでしょうが。今やったら冒涜的な何かが誕生するわ。


 となるとやっぱり魔力圧の問題か。

 であれば魔法圧の練習をするべきだな。まあ形状変化の練習は重要なので、基礎の反復はしてもらおう。





 私はニアの修行を見つつ、自分の裏作業も行っていた。


 いきなりだが、魔力についてお話ししよう。

 魔力には大きく二つの種類がある。生物が体内に留めている「内在魔力」と、自然界に存在する「大気魔力」だ。

 内在魔力は、魔法を行使する時などに消費され、身体が大気魔力を吸収し変換する事で回復する。まあ回復は微々たる量だが。


 ドラゴンが使うようなブレスの類も実は内在魔力を消費したもので、レッドドラゴンの火炎袋は非常に良質な火属性に固定された魔力のタンクなのだ。



 話が逸れた。



 で、内在魔力には上限がある。

 種族の限界値とその中で個人差が出る。

 つまり上限が低いとバカスカ魔法を撃てないし、高ければ上級魔術を複数回打てるようになるのだ。


 そして前世の私は研究の末一つの方法を編み出した。

 それが外部魔力タンクだ。


 宮廷魔導師になり初めの頃、ほとんど研究漬けで魔法を使う機会がなかった。魔力が余っていたのだ。

 あまりにももったいなく感じたので、結界魔法を応用してタンクを作り出し、その中に魔力をリレーした後自分の体に流れるようにしてみたところ、なんかできてしまったのでそのまま使っていた。

 意味もなく。


 魔力タンクはコレまた研究で発見した異空間にぶっ込んでおいた。

 この異空間、個人個人で存在が違うものらしい。何と言えばいいのか、その人間の隣の世界というか…。うまい言い方がわからない。

 そして私は今、前世の異空間にアクセスできないか試している。

 あの時の魔力タンク、10年近い余剰魔力を注いでいたので、相当量になっているはず。



 異空間に接続するには魔法陣が必要になるので、アクセスするだけの小さいものを石板に書き込むというか掘り込む。

 その作業をニアが目を点にして見ていた。修行を続けなさい。


「できた。」

「何これ…魔法陣?何の?」


 ニアを見ると指先で簡単な蝶を作っていた。三角形2つだけだ。順調なご様子。


「ないしょー。」


 魔法陣に魔力を通すと、真ん中に腕が通るくらいの円形の穴が空いた。向こうが見えるわけではなく、別空間がある。


「ふむ。」


 中を覗くと、目当てのものを発見した。

 というかすごいことが判明したなこれ。私とアルベルトは別人であるはずなのに同じ空間を有していた。

 これはこの空間が魂によって区別されているということではないだろうか。

 今後の研究材料が増えたな…


 あ!いや!ダメだ!研究は無しだ!それから逃げるために私になったんだろ!


 研究者体質はそう簡単には治らなさそう。




 それはそれとして、前世の異空間に接続できるなら、やる事は一つだ。私は外部タンクを自分の体にリンクさせた。

 試したくてソワソワしたが、森一個くらい消えそうなのでやめた。調子に乗ってクラス7の魔法とか使ったら目も当てられない。


 ニアの方を見ると、慣れてきたのか平面図形を複数出してくるくる回していた。いい感じだ。






 次の段階として、手のひら大の水球に圧を加える訓練をさせた。

 すると水球がグニグニと動き始めた。ニアもやけに集中している。


「はいストーップ。」


 私はニアの手から水球を弾き飛ばした。

 吹っ飛んだ水球は横に飛んで行き、木にぶつかってさく裂する。


 バシャン!!


 木が震えて葉が数枚パラパラと舞った。ダイナミック水やり。

 とりあえず今の水球でニアの問題点がわかった。大した問題ではないのだが、向いていないやり方をしているようだ。


「ニアのやり方は悪くないけど、ニアに向いてないやり方だったね。」

「と言うと?」

「ニアは全方向から均等に圧をかけてたでしょ?アレだと慣れないうちはすごい集中を必要とするし、一つ間違うと手元で爆発する危険があるんだよね。」

「え゛!?」

「で、提案。水球の中心に向かって円を描くように、

 球体をなぞるようなイメージで圧をかける。グルグルグルグル球の中心へ。反対側からも同じ圧をかけてグルグル回す。やってみて。」

「うーん?」

「泥団子を作るイメージかな…?」

「あー!なるほど!」


 わかったようだ。言ってる私はしっくりこなかったが。

 しかしこのよくわからない助言が功を奏したのか、ニアは見事ウォーターボールを完成させた。



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