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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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vol.37 転生魔導師のダンジョンアタック その2

冗長になってしまっているのが痛い

 7層に足を踏み入れると、今までの階層とは様相が違うことに気が付いた。

 周囲の壁が違うのもそうだが、その最たるものは敵性体であった。


 7層の敵は、魔導人形(マギカドール)

 魔石を核として動く、その名の通り魔法で動く無生物である。

 簡単な命令を下しておけば、それに従う。


「やっと私の出番ってことだな!」


 と、セナは息巻いていたが、敵はご丁寧にバスタードソードなんてものを装備していたため、急ごしらえで石盾を作り彼女に持たせた。

 相手の武器は手入れされなくなって久しいだろうが、それでも殺傷能力は高い。その場しのぎの物だが、無いよりはいいだろう。


 剣で戦えると解ってからのセナの動きは目を見張るものだった。ここに来てから出番なしだったのもあるだろうし、前の階層で甲虫相手に行っていた、外骨格の隙間を狙って攻撃する、という精密な動きの練習をしていたのもあるだろう。盾で敵の攻撃を逸らしつつ、的確にマギカドールの関節部分を破壊していく。


「固いけど対処できないわけじゃないし、動きも遅いから関節が狙いやすい!」


 そんなことを言いながら、今も一体のマギカドールを破壊するセナ。一応私も作り出した石剣で同じように対処している。

 ナーシャも今回は弓矢を使って敵を倒している。階層突入前に、彼女の矢に岩石魔法の刻印を施しておいたので、先日に比べて矢の威力と耐久が上がっているのだ。

 ただ、貫通力も上がっているので、狙いどころには気を使ってほしいけど…どうやら杞憂だったみたい。

 胴の分厚い部分に当てることで、貫通力を殺しているらしい。

 正直言って、私が前に出ざるを得ないような状況で、壁の損傷がどうこうと言っている場合ではないのだが、それでも被害がないに越したことはない。ナーシャの対応力は素晴らしいと言えるだろう。


 ニアは、まあ、うん。石弾を発射して援護している。火を使わないだけマシだ。


 ナーシャとニアの援護もあり、この階層も順調に攻略が進んだ。とはいえ、敵のランク的には上がっている。

 マギカドールは本来私たちが相手にできるランクじゃない。私たちとの相性が良かっただけだ。

 相性の問題などという曖昧なものは、最も簡単に崩れ落ちる。

 階層の半ばに至ったかどうかという辺りで、ナーシャの魔力が限界に達した。


 そもそもナーシャは現在魔力制御の勉強中。

 魔法矢というものは、魔力を消費する。

 刻印を施したのは私だが、魔力自体は使用者自身のものに依存するのだ。

 矢に魔石を組み込んでそれを励起することで発動する仕組みもあるが、そもそも高いし自作するには魔石も何もかも足りないので用意できない。

 要するに、魔力効率の悪い状態で魔力消費を繰り返したせいで倒れてしまった。


「調子に乗りすぎました」

「自己診断が適切で大変よろしい」


 自らの魔力量を考えずに矢をバカスカ射っていたのは事実である。それら諸々を合わせて枯渇してしまったわけだ。


「フォーメーション変更だね。とりあえず今はナーシャが動けるようになるまで休憩。今後はセナだけ前衛で、私は後衛に徹する。ナーシャは索敵と私の補助をお願い」

「わかった…」

「そういう事だから、セナは負担する敵の量が増えるから気をつけてね」

「体力分配を考えろって事だね」

「そういうこと。ニアはナーシャと共に索敵と遠距離の敵に対処して」

「わかった。私の魔力もそろそろキツいけど大丈夫かな?」

「あくまでも補助でいいよ。とりあえず魔力回復薬を服用しておいて。」


 私は荷物から魔力回復薬を取り出して、ニアに渡した。

 ニアは嫌な顔をしながらそれを受け取ると、一気に飲み干す。


「まっっっっず…おえ…」

「我慢して。魔力不足でぶっ倒れるよりマシよ」


 そんなやりとりをしていると、セナがふと、こんなことを聞いてきた。


「それ、ナーシャが飲むんじゃダメなのか?」

「魔力回復薬はね、劇薬なのよ。経口摂取で魔力変換の効率を上昇させ、それを以て魔力回復とする薬なの。魔力制御が未熟な者が服用すると、上昇した変換率に体が耐え切れなくて、最悪の場合死に至るわ」

「思いっきりやべー薬じゃん」


 それ故に基本的には魔道具専門店でしか販売されておらず、魔法使いにしか販売されないものなのだ。

 ただ…


「まあ、法律では私たちも飲める年齢ではないんだけど」

「は!?」

「えっ!?」


 セナとニアが勢いよくこっちを見た。


「魔力回復薬の服用は15歳を超えてから。これが国際的にも定められている内容ね。その年齢に満たない者への販売や譲渡も禁止」

「え、あ?じゃあ!」

「法律で禁止されているだけで、ニアが飲む分には問題ないわ。私が保証する」

「いやいや!そういう問題じゃないって!!」


 うーん、実はそういう問題なのよね。

 この法律、もともとは“魔力の制御が未熟とされる15歳までは服用禁止。”という内容だったんだけど、いろいろとあって今の表記になったらしい。

「15歳までは魔力の制御が未熟である」という風にされていたけれど、前世の私が提唱した「魔法習得年齢の都合上、15歳に差し掛かった時点で魔力制御に落ち着きが出るだけであって、もっと若い時分から修業を積めば低年齢でも魔力制御はできるようになる。」という理論で、その考えもヴィエナスでは廃れてきていたはず。

 しかし法律の改正は一筋縄ではいかず、私が提唱してから10数年は経っているであろう現在でも、魔力回復薬の服用は15歳以上とされてしまっているのだ。


 ちなみに私がどこからこの薬を入手したかというと、アイリーンから素材を買って自分で精製したものだ。

 ブラフにいろいろな素材も買ったおかげか、すんなりと買うことができた。彼女も私がポーション精製をすることができる事を忘れていただろうし。


「というか、リズは飲まなくて大丈夫なの?私よりも魔法使ってたように思えたけど」

「わ、私はほら、魔法で作った剣を振ってただけだし。他のも規模が小さいからほら、そんな消耗もなかったからアレだよ」


 ニアから急に痛いところを突かれたせいで、若干しどろもどろになってしまった。

 正直言ってこれくらいだと総魔力量から言ってしまうと消耗ですらない。それに、ニアに言った通り石魔法の剣を振ってただけだし、効率重視で魔法を使っていたので嘘ではない。


 ただ正直な話、ここから先にいる可能性のあるダンジョンボスには、このままだと本気を出さざるを得ないかもしれない。

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