Vol:36 転生魔導師のダンジョンアタック その1
あけましておめでとうございます。HardlyWorkingです。
書いてて詰まるわ長くなるわ冗長な感じだわで散々な出来ですが、なんも書かないよりましだと思ったのでそのまま上げます。
今年はもう少し文をきれいに書けたらなとは思いつつも、こんな感じで続けていけたらなと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。
ギルドの職員に案内され、私たちはダンジョン内を進んでいた。
とは言っても、ダンジョンの第四階層までは魔力の澱みを解消する浄化装置や照明が置かれており、調査の際に危険が及ばないよう環境が整えられいるので、魔物はいないし明るいしで本当に進んでいただけだ。
「流石は貿易都市。高い設備がいっぱいあるね」
「よくわかるね?」
「まあね」
通路を照らしているのはランタンだが、調査員には照明の魔道具が個別で支給されているみたいだし、浄化装置はどれも一級品で、見たところすべての装置にヴィエナスの有名メーカーのエンブレムが刻印されていた。
ランタンに照らされる見慣れぬ意匠の通路は、それだけでここが遺跡なのだと感じさせる。
正直言うと仮にそれが最近の物であってもそう感じるんだろうけど。雰囲気に当てられてそう思っているだけだ。
意外なことに、セナも興味ありげに周囲を見回している。
これもその場の空気に当てられた影響かもしれないけど。
しばらく移動すると、バリケードが設置された関所のような場所に到着した。物々しく、調査というよりも踏破を目的とするような設備が目立つ。
「ここが現時点での最前線になります。」
でしょうね。
装備品の最終チェックに入る。まあ、私たちが持ち歩く荷物は殆ど少ない。ロープや各種ポーションなどの基本的なものと、そこそこの食糧くらい。
というのも、この前線基地にいる全員が私たちをバックアップするからだ。
過剰戦力にもほどがあるが、私達の他にまともに攻略ができる連中が居ないとなると、私達に十全な状態で100の実力を出させた方が効率がいいのだろう。
確かに、食糧の事を気にする必要が無いのは大変ありがたい。普通であれば日程を定め、装備重量と相談しながら日程分の食料を用意し、それを決めた配分で過不足なく消費する必要があるが、今回はそれが無い。
初ダンジョンとしては理想的な難易度になっている。
「現在、第四階層まで浄化装置が機能していますので、第五階層は澱みも軽微だと思われます。ただ、第六第七と続いた場合にどうなるかはわかりません。加えて、魔力堆積塊、いわゆるダンジョンコアが発生している可能性もゼロではないので、十分に気を付けてください」
前言撤回かもしれない。
魔力堆積塊というものは、名前の通り魔力が固形化するほど凝縮された物体で、ダンジョンの最下層で発見されたからこその別名を持つ。
そしてそれの危険性は、それ本体には無い。
それが周囲にもたらす影響…端的に言ってしまうと、めちゃくちゃ強い魔物が生まれる。
そりゃ固形になるほど凝縮された澱みがあれば強い魔物も湧くよね。
そういった個体はダンジョンボスと呼ばれ、親玉的存在として扱われる。べつにダンジョン内に力以外の優劣関係はないし、命令系統も存在しないけど。
なので、お気楽気分でそんなのが目の前に現れたら、悲惨なことになるのは確定だ。
「私たちへの依頼にダンジョンボスの討伐は入っていませんよね?」
私は、念のために訊ねておいた。
「はい、含まれていません。まあ可能であれば討伐していただいても結構です。その際には別途報酬が支給されます」
無茶を言うな。死ねというのか。
私は聞こえなかったフリをし、バリケードの前に立った。
準備と最終チェックを終えた仲間たちが、隣に並ぶ。
「ご武運をお祈りします」
私たちは、未到の領域へと足を踏み入れた。
第五階層は軽微とはいえ、第四と比べるとやはり澱みが発生している。
魔物もそこそこに湧いていて、アルミラージやゴブリンなどがチラホラと見受けられる。
しかし特に多いのはスライムだった。
不定形で液体と個体の中間のような体質をしている魔物、スライム。脳はおろかまともな臓器は一切なく、そのせいで知能ではなく食欲で動く。しかし本能からか天井などから垂れ落ちて獲物を襲うという、厄介極まりないヤツだ。しかも体質的に物理攻撃に強く、生半可な斬撃では即座に再生してしまう。
「切れない!!!!!!!!!!!!!!!!」
と、キレたセナが剣を振り回しているが、何の意味もない。
「セナ、下がって。私が魔法でどうにかするから」
と言ったニアは、火炎魔法を詠唱し始めた。
「うおーい殺す気か!!」
「あふん」
膝裏を蹴って姿勢を崩し、詠唱を中断させる。
ニアが恨みがましくこちらを見てきた。
「スライムは氷と雷にも弱いから、基本それで倒して。火炎魔法は空気を燃やすからこんな場所だと最悪窒息死するし、壁とか燃やしたら怒られるからね?」
「あ、それはヤバいね…」
半液体とでもいうような体質をしたスライムは、凍結と雷撃に弱い。もちろん火炎系で焼き尽くすのも有効打ではある。
「フロストミスト」
掌に発生した霧状の氷に息を吹きかけ、スライムへ向けて飛ばす。こんなことしなくても飛ばすことはできるけど雰囲気って大事だよね。
飛び行く霧はランプの灯りを反射してキラキラと輝き、スライムに接触した瞬間にその体を急速に凍結させた。
相手を氷漬けにする魔法はいくつもあるけど、地形などに配慮すると限られてくる。
フロストミストは拡散こそするものの地形への影響はほぼ無い。安心して使うことができる。
「セナ、砕いて」
「ん」
すると何を思ったのか抜き身の剣で叩こうとしたので、岩石魔法で生成した棒をセナに渡し、砕かせた。
その後もスライムは凍らせ、他の魔物は切り伏せるなりをして、第六層への階段を発見した。
「まあ予想通り、ここまでは順調と」
「うん。ただここからはもっと気を引き締めないとね」
階段を前にして、第六層突入に向けてナーシャと話し合っていた。
とは言っても、第五層の攻略で消費した物資は少ない。周囲警戒を強める。と言った程度の話をしただけで終わった。
こういった話はナーシャしかできない。放火脳と脳筋ではボンヤリとしか理解してくれないから。
それにしても…ここは何の目的があって作られたのだろう。
第六層への階段を降りながらそんなことを考えていた。
お宝と呼べるものも少なくは無いけど、倉庫といったような雰囲気ではない。だからと言って墓所というわけでもない。ましてや生活感などはなく、実用性も感じられない。
でもそれだとここまで深く作る必要が…。
考えているうちに第六層に到達した。ギルドの予想通り、澱みが強くなっている。
そして、遭遇する魔物もまた変わっていた。
それらは、魔蟲と呼ばれるものだ。
いつぞやにセナが追っかけ回された蜂型の魔物、あれも魔蟲の一種である。
ただ、今回の種類はコガネムシのような類…いわゆる甲虫と言われる種類の魔蟲だ。名をバトルスカラブという。
攻撃方法は体当たり…魔物はお前らそれ以外に芸がないのかというほど体当たりが多いが、少なくとも私たち人間、それも子供くらいなら体当たりでもかなりのダメージを与えられる。さらにこの魔物に関しては全身が固い外骨格に覆われている。生物的な柔らかさは一切なく、体当たりだけでもまさに岩か鉄にでも当たったかのような衝撃に襲われるのだ。
「セナ、バトルスカラブの装甲はかなり固いから、その剣でも通らないかもしれない。それどころか刃こぼれするかも。狙うなら関節か装甲の隙間を狙って」
「わかった、無理そうなら援護に徹する。さっき使った石の棒は?」
「いけるかもしれないけど、破壊する目的で殴ったらセナの手がもたないと思う」
「やめとこ」
幸いにもまだ補足されておらず、数は一。戦闘に入る前に対処方法を伝えておく。
「ニアはフロストミストを使って。魔蟲に限らず、虫は気温低下に弱いから」
「ちょっと苦手だけど、頑張るしかないか…」
「で、ナーシャなんだけど…蟲の関節って狙える?」
「できなくはないかな、やってみるね。」
ナーシャが矢を番え、スッと一瞬狙った後リリースした。
カンッという音が響き、バトルスカラブは体勢を崩した。が、その脚はまだ健在だ。当然気付いたヤツは、こちらへと這い寄ってくる。
「暗いのもあって狙いにくい…ちょっと無理かも」
「わかった、ちょっと目に気を付けてね。ライト」
ライトは照明魔法だ。
いや、本来は照明魔法ではない。火炎魔法の上位である光炎魔法を、出力を極限まで抑えることで殺傷力をほぼゼロにし、逆に圧を上げることで光量を増やしたものである。
「わ、まぶしッ!」
…セナはもう、ほっとこう。
私が生成した光源は二つ。それぞれ球体が浮かんだような見た目だ。
一つを敵の方へ飛ばし、もう一方は頭上に浮かべた。
「これで射ってみて」
「これなら当てられるかも」
そう言うなり、ナーシャは再度矢を番えて射った。
すると、バキャともメキッとも聞こえるような音を立てて、相手の脚がもげた。
「命中」
「よし。でも矢はダメになってそうだね」
矢は魔力と違って有限なので、射った後にできるだけ回収しておきたい。
確認したところやはり割れていた。
「魔力矢を岩石系で補強して射るとか…は現実的じゃないね」
「そうね…」
というのも、ナーシャの得意属性は水・風で、苦手なのは土ということが判明した。
そもそもが魔力の訓練中であるナーシャは、土系統の効率が致命的に悪い。矢を強化するのは無理な話だった。
そもそも強化された矢が歴史的価値のある壁を抉らないという保証もない。
「この階層も凍結戦法が有効だということで…」
「釈然としないけど意義なし」
ニアはまた苦手な系統の魔法を使うので不服そうだ。
一方セナは精密な攻撃の練習になると言ったら納得した。チョロい。
6層の敵の分布は蟲とスライム他で大体4:6くらい。蟲は下位の魔物を食糧にしているようで,
明確な食物連鎖のある生態系を構築していた。
「事前に渡された報告書にあった通りね。下の階層に向かうにつれて、上位捕食者が増えていく」
「なにそれ、じゃあ次の階層だと虫を食べる魔物が出てくるってこと?」
「その辺は分からないけど、まあ蟲より強いのは出てくると思う」
そんな会話をしながらも攻略は着々と進み、とうとう7層への階段を発見した。
弱い魔物ばかりとはいえ、流石に疲れた。一旦ここで休んでいこう。
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