Vol:35 転生魔導師と大きな依頼
登場人物紹介
リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。
セナ - リズのパーティメンバー。前衛。武器を変えたところ動きが悪くなったため特訓中
ニア - リズのパーティメンバー。魔法使い。元から広範囲魔法を使う傾向にあったが、帽子を直してからさらに強まったため、送る杖を間違えたな。とリズは最近思い始めた。
ナーシャ - リズのパーティメンバー。弓使い。魔法矢の特訓でニアも受けた地獄の特訓メニューをやらされている。なお、ニアは懐かしむような何とも言えない眼でその様子を見ている。
ハンナ・クルーガー - クーデンにあるギルド支部の支部長。副支部長であるハンスは弟。ちなみに親は名付けてから第二音まで同じで呼ぶときに苦労することに気が付いたらしい。
「丁重にお断りさせて頂きます」
めんどくさそうだし絶対ヤダ。ロジャースも許さん。
何故こんなことになったか。私たちがギルドへやって来たとこから話そう。
朝食を食べ終えた私たちは、いつものごとくギルドへと足を運んだ。
まあ2名が未だ本調子ではない為、そんなに面倒な依頼を受けるつもりはない。受付で何かそれなりの依頼がないか聞こうと、お姉さんに声をかけた。すると。
「あ、リーゼリットさんですね。ギルドマスターから、ここに来たら通すように言われているので、ご案内しますね」
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何故?
別にここのギルマスと面識があるわけでもないし、何か問題を起こしたわけでもない。
ニア達も何が起きているのか理解できていないようで、戸惑いの表情をこちらに向けている。
いや、そんな顔で見られてもね。
私達は何がなんだかよくわからないまま応接室と思しき部屋に通され、お姉さんの「座ってお待ちください」に素直に従って椅子へ腰掛ける。
少しすると、壮年の女性がやって来た。
「貴女がリーゼリットですね。支部長のハンナ・クルーガーです」
ハンナは私の対面に座ると、手に持っていた書類を机に置いた。
支部長と聞いて動揺するニア達をよそに質問をする。
「何故支部長が私の事をご存知なのですか?」
「支部長だから…というのもあるけど、実はロジャース君、ヒュレスの副長から推薦状があってね」
そう言うと、ハンナは持って来た書類の一枚をこちらに出した。
そこには確かに名前と管理番号、そしてロジャースの名前があった。
「なにこれ…」
「彼から送られて来た推薦状です。確か1週間ほど前に」
各ギルド支部間での情報は、ヴィエナスで開発された特殊な魔道具を用いてやり取りされている。私の──前世の数代前で開発されたとかで、設計図とコンセプトは見たことがある。
情報伝達は距離があっても一瞬なので、私たちが出発する前かした後か、そのタイミングで送ったのだろう。
そんなことはどうでもよくて。
「私知らないんですけど」
「あら?そうなの?彼の事だからこちらに押し…送る時に話はしてると思ったのだけど」
押し…ってなによ。
もしかしてアイツ、私を厄介扱いしてこっちに釘付けにできるように手を回した?
「まあそれは後で追求するとして、この事業というものについて説明するわね。実は数か月前、ここから東へ向かったところに、遺跡、いわゆるダンジョンが発掘されたの」
「丁重にお断りさせていただきます」
とまあそんな事があったのです。
推薦状を見るに、事業というのはどう考えてもそのダンジョンの発掘作業だし、ロジャースは私に断りもなく推薦しているしで面倒なのは目に見えている。しかし。
「え!ダンジョン行こうぜ!稼ぎ時だ!」
「私も行きたい!ね!ナーシャ!」
「私はそんなでもない…」
と、他三…二名が騒ぎ出した。
「あのねぇ、ダンジョンってすっごい危険なの。遺跡だから崩れる可能性もあるし、罠があるところもあったりする。それに内部の魔力が非常に澱んでいるから、魔物は湧き放題だし下層に行けば行くほど魔物の危険度が上がるんだよ?」
内部構造にもよるけど、大抵のダンジョンは魔力の澱みが酷く、魔物の巣窟と化している
しかし、この説明でセナは目の輝きを強くした。
「修行にもってこいじゃんかよ!」
脳筋には何を言っても無駄である。
結局私が折れて、ダンジョンの概要を聞くことになった。
「この遺跡はおよそ300年前に造られたものよ」
ハンナはそこそこ大きな紙を複数枚取り出し、机に広げた。
図面を見る限り、その遺跡の地図のようだけど、だいぶ書き込まれている…?
「コレを見る限り、だいぶ踏み入っているように見えるのですが?」
ナーシャが私と同じ疑問を持ったらしい。
「貴女たちにお願いしたいのは第五階層以下の領域の調査よ。現在第四階層までは浄化、安全の確保をしているの。詳しい考古学的な調査に関してはそこで滞っているわ」
「私たちを投入する理由は?」
「正直に言って、信用できて実力のあるパーティが居ないのよ。皆、海の方へ出てしまっていてね」
あーどこかで聞いたことがある。
クーデンに所属する冒険者の大半が、海の治安維持を行っているらしい。どうしても自治体の色が濃く出るから、こういうところだと海の魔物退治や海賊などの対処に夢を見るのだろう。
「その点、あなたはロジャース君の推薦。信用もできるでしょうし、腕も確かなはず。そんな人物とパーティを組んでいるのであれば、そのメンバーもそのラインをクリアするというわけです」
「はあ…」
かなり強引な解釈だ。
あとセナはなぜか得意げな顔をしているけど、私の能力を考慮しての評価だし、武器に振り回されている間はその評価にすら届かないからね?
私は大きなため息を吐いて、ハンナの方を向いた。
「では、とりあえず今までに確認された魔物とトラップ、階層ごとの特徴を教えてください」
こうして、あまり乗り気ではないままダンジョン攻略に向けたブリーフィングが始まった。
確認した内容をまとめて準備を終えたら突入だ。
心底行きたくない。
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