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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
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Vol:28転生魔導師と昇格

登場人物紹介

リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。


ニア - リズの義姉。爆焔姫と呼ばれる赤髪の少女。


セナ - パーティメンバー。剣を用いてパーティの前衛を務める。


ナーシャ - パーティメンバー。主に弓を用いて長距離までこなす。


ロジャース - ヒュレスにある冒険者ギルド支部のサブマスター。


 酒場に移動すると、三人とも朝食をとっていた。

 酒場で朝食という内容に混乱する…。実は酒を飲む人が多いから酒場と呼ばれているだけの食堂なんだけど、酒場の方がしっくりくるのだ。

 それは置いといて。

 一応出発前に食べてから行こうという話はしていたので、私もそこに加わる。私の分は取っておいてくれたようだ。


「おまたせ~。」

「お、来た来た。ちょっと冷めてるかもしれないけど。」


 私は「大丈夫大丈夫。」と言ってスープにパンを軽くつけて頬張った。


「それでどうする?今からE昇級のために動く方針でいいか?」


 どうやら食事中にその話をまとめようとしていたらしい。

 私は咀嚼していたパンを飲み込むと、口をはさんだ。


「その件は片付いたから、Cランク受けよう?」

「「「…は?」」」

「片付いたって何?おい!リズ!おいこら!パン食うのやめろ!!」


 セナが私の咥えているパンを奪おうとしてくる。あー!やめろー!私の朝食ー!


「ロジャースと話して認定もらったの!パン取ろうとするのやめろぉ!」

「いやますます意味わかんないよ!?」

「さっきニックから言われたやつ、その用が私の昇級の話だったんだよ。」


 そこから、私は一部を隠しつつ詳細を話した。


「わからん。もうお前の妹わからん。」

「それは言わないで。私にもよくわからない。」

「やば~。」


 そこまで言うかな…?


「サブマスも呼び捨てだったしね。さりげなく。」

「確かに。」

「やば~。」


 ナーシャが思考停止して「やば~。」しか言わなくなった。



 そんなこともあって、結局私たちはCランクの依頼を受けることになった。依頼内容は、ジャイアントワイルドボアの群れの討伐。

 昨日、森で依頼を行なっていた冒険者からの報告により、あの猪の群れがいるという事が発覚した。

 一昨日の侵入事件はそこからの“はぐれ“かもしれない。

 何にせよ、放置すると街に被害が及ぶので自治体からの依頼としてギルドで受理されたそうだ。


 単体での討伐はだいたいEか行ってもDランクの依頼だが、群れると囲まれたりしたときのことを考慮してランクを上げて考えるらしい。確かに死角から突進なんかされたらひとたまりもないだろう。


「でもなー、乗り気になれないんだよなぁ。」


 目撃証言のあった森へ向かう中、セナがぼやく。なぜだろうか?めんどくさいとかかな?


「わかる。あんまお肉美味しくないから狩ってもあんまりね。」

「そうなんだよな。倒してすぐ焼いて食えたらどれほどよかったか。」


 すごい逞しい。逞しい?食欲目線の話だった。ナーシャの方を見るとウンウンと頷いている。

 あれ?私少数派?私がおかしいのかな?


 森に入ったところで雑談も少なめに捜索を始めると、木々の間を闊歩(かっぽ)する標的の群れを発見した。

 私たちは近くの茂みに身を潜め、周囲を警戒する。

 体長およそ200エルエンクの巨大な猪が見える範囲でも5匹いる。


「セナ、どう思う?」

「うーん、これじゃ近接は危険かな。」


 木があるおかげで向こうも下手な突進攻撃はして来ないだろうが、あの巨体で暴れられたら木があるせいで避けにくい。


「ナーシャの使う矢ってあいつの皮抜けたっけ?」

「無理。矢より張力の問題ね。」

「そしたらリズと私でやるしかないか。」

「ん、待って。前衛を私とセナでやる。ニアとナーシャは木の上に。ニアはダメージ重視で。ナーシャはセナと逃げそうなやつの牽制。いける?」


 私とニアだけでやってしまったら、セナとナーシャがいる意味がなくなってしまう。それぞれのできる事をしてこそのパーティだ。


「いやおかしいだろ、リズが前衛ってなんだよ?」

「大丈夫。剣の扱いは叩き込まれてるし、シールドも使えるし。こっちの方が効率がいいと思うよ。」

「むぅ…危険だと思ったらすぐに下がれよ?」


 許可も出たので、私は石剣を生成した。セナとナーシャには木に登ってもらう。

 少しすると上の二人から合図があったので、セナと確認しあってから石ころを飛ばす。


 石ころが当たった猪がこちらを向く。

 目が合った(気がする)瞬間に威嚇して来た。めっちゃ怒るじゃん。

 しかし突進してくる様子はなく、やはり木が邪魔なようだ。群れがそのままこちらにやってくる。


「セナ!いくよ!」

「ああ!」


 私とセナは同時に飛び出し、群れを挟むように動いた。


 とりあえず手近にいた一頭を相手取る。

 頭骨は硬く、私の力での刺突や斬撃で脳に達する事はまずない。胴も皮下脂肪によってただの攻撃ならばおそらく大したダメージにはならない。そうなると首筋の血管を狙うのが1番だが、そんな限られた範囲を攻撃するなんて技術的余裕は残念ながら私には無い。


 ギリギリのところで突き上げを躱し、猪の側面に回り込んだ。

 剣を水平に両手で握り、切っ先を猪に向けて風魔法で突っ込む。

 剣が皮と肉に突き刺さる感覚がもろに伝わってくる。思えば生物を剣で直接刺したり切ったりするのは初めてだった。

 気持ちの悪い感覚に剣を手放しそうになるのを堪え、次の攻撃に入る。


「エアロスラッシュ!」


 発動した魔法は剣を伝って猪の体内で炸裂する。

 結果内臓を著しく損傷した猪は口から血を吹いて倒れた。火魔法で傷口を焼きつつ剣を抜く。

 外部からのエアロスラッシュでも倒せるが、敢えて体内にねじ込んだのには理由がある。

 流れ弾で木を切り倒さないようにするためと、なるべく出血量を減らして戦いたかったからだ。

 特に血。ほかの獣を呼び寄せるというのもあるが、瘴気として淀みになり、淀みからは魔物や魔法生物が発生する。

 死体から発生する物の方が厄介だが、少ないに越したことはない。

 セナの方を見ると、彼女は一体を相手取り、剣での攻撃を控えて回避に徹している。

 私は流れで二体目も同じ方法を用いて倒し、セナの元へ向かった。


「ナーシャ!周囲に敵は?」

「いないわ!その三体で最後だと思う!」

「わかった!そのまま牽制を続けてて!」


 ナーシャとニアにそう告げると、セナが相手している猪へ向く。


「セナ!交代!」

「わかっ…た!」


 私が相手の側面から声を掛け、セナが退くのを確認してから同じ要領で突っ込み、倒す。

 セナは肩で息をしながらこちらへ来た。


「し、死ぬ…もう二度とやりたくない…。」

「息を整えつつ周囲の警戒をしておいて。」

「うわあああああああ!!」


 急に聞こえた悲鳴の方を向くと、一体の猪がニアのいる木に体当たりをしていた。


「おち!!落ちる!!」

「木が邪魔で狙えない!リズ!!」


 猪は木をはさんでナーシャの反対側にいる。


「ストーンアロー!!エアロショット!!」


 岩で生成した矢を空気で押し出して射出。

 咄嗟のことで正確な狙いがつけられなかった。猪に当たりはしたが、貫通してニアのいる木に当たってしまった。


「あ?あ!折れ!!折れーーーー!!」


 猪は倒せたがニアの乗った木が折れ、ニアは落下した。


「ごめんニア!でもあと一体残ってるから!」

「あう…。」


 謎のうめき声を返事として受け取って、最後の猪を見る。

 先ほどのごたごたで逃げ出そうとしていたが、ナーシャとセナによる妨害でそうもいかなかったようだ。


「ふッ!」


 風圧を用いた移動にも慣れた。

 そこそこに離れた場所に居たが、一気に距離を詰めて剣を突き刺し魔法を発動。


 おそらく最後と思われる猪が息絶えたのを確認し、剣を抜いた。

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