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転生魔導師奇譚  作者: Hardly working
第一章
29/47

Vol:27 転生魔導士と昇格

登場人物紹介

リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。前世では認定こそされていないがクラス9まで扱えた。


ニア - リーゼリットの義姉でCランク冒険者。クラス3魔法まで扱えて、4をリズの下で特訓中。爆焔姫と呼ばれている。


セナ - ニアのパーティメンバーで同じくCランク。ブロードソードを持つ前衛職で、いわゆるタンク役。盾は重いのと金がないので持っていない。


ナーシャ - ニアのパーティメンバーで同じくCランク。弓を使って近中遠どの距離でも戦えるオールラウンダー。


ロジャース - 冒険者ギルド・ヒュレス支部の副長。人によって副支部長だったり、サブマスだったり呼び方が安定してない。Vol:17で登場した支部長(声がデカい)のストッパーで、加えていろいろな問題が起きているためか胃に効くという薬効の茶を愛飲しているらしい。


ニック - Bランク冒険者。リズが絡むと間抜けで頼りないおっさんにしか見えないが、Bランクは伊達ではなく腕は確か。後進の育成もしているため、彼に敬語で接する人は多い。

 翌日。

 宿を出て「さあ依頼を受けよう!」と4人でギルドに入った時点で、あることに気がついた。


 私のランクがFであることに。

 完全に忘れていた。


 別に自分とランクに差がある人たちとパーティを組むことに問題があったり、なんて事はなく。ギルド側から(とが)められることはない。

 しかし、基本的に受注できる依頼はそのパーティに編成されているメンバーの中で最下位ランクのものと同じランクに引き下げられる。

 つまり、私が入ったことで最低ランクであるFランクの依頼以外受けられなくなったのだ。

 そのことを失念していた私達は、宿を出た時の少々浮ついた気分から突き落とされ、とりあえずここからどうするかという会議に入った。


「いやぁ、バカだったね。ウチら。」

「私がランク言っておかなかったのが悪いよ。」

「それを言ったら確認を忘れてた私がね…。」

「てか、今からランクアップとなると…E、D、Cか。3っつ上げるってなるとそこそこキツイよな。」

「きついどころかひと月はかかるんじゃない?前提条件もいろいろと出てくるし。」


 ナーシャのいう通りで、ランクアップには試験を受ける必要があるが、それを受けるのにまず前提とされる依頼を受けるのが一連の流れになっている。この辺りはたいてい採取などの依頼だが、採取地にたどり着くための方法や道順構成、日程の調整などとそれ相応のスキルを要する。それこそ上位ランクは前提の依頼で数か月というレベルだ。

 E、D、Cであればまあ頑張れば一か月で上げられるだろうが、その“頑張る”はだいぶハードな頑張りになる。


「おう、おめーら。そんなところで唸ってると邪魔だ…ぞ…ってリズじゃねーか。何してんだお前?」


 うんうん言いながらあれこれ考えていたら、聞き覚えのある声がした。

 ニックだ。


「あ、おじさん。」

「おじさん言うな。あ、なんだ?爆焔姫?なんでお前らが一緒に?パーティでも組む気か?」

「そうだよ。でもランク差を忘れていたから、どうしようかって話してて。」

「くれぐれも火事だけは気をつけてくれよ。」

「はぁ?ねえニア、ニックがスイーツ奢ってくれるって!」

「あ!?いや、すまん!俺が悪かった!!」


 ホントこのおっさん鼻先焦がしてやろうか。

 いちいち余計な事を言う。


「やべー、リズの奴ニックさん脅してるぞ。」

「親戚の子供みたいだね。」

「ないない、私が嫌だ。」


私は即座に否定した。


「と、とりあえずランクだったな、そういえばロジャースがちょうどその件でお前と話しておきたい事があるとか言ってたから、行ってみろ。」

「ロジャースさん?わかった。」


 私はとりあえず先にロジャースと話すため、一旦別行動を取ることになった。

 するとニアたちは酒場に向かっていった。女子が向かう場所じゃないって言ってるのに。


 それは置いといて。


「アンナさん、ロジャースさん部屋にいる?」

「あ、リーゼリットちゃん!ロジャースさんですね!お呼びしますか?」

「今から行くって連絡してもらえますか!」

「はいはい、わかりました!伝えておきますね。」


 受付のアンナさんに話は通した。あとはロジャースの部屋に行くだけだ。

 彼の部屋はこの建物で二番目に大きい部屋。要するに副支部長の部屋。

 普通は副支部長の部屋なんて予定として入っていなければここまでスムーズに通してはもらえないけど、私はあの事件のおかげでいろいろと特別扱いをしてもらっている。基本的には受付の誰か――例えば今日のアンナさんとかに一言掛ければ通してもらえる。


 副支部長室の扉を叩くと、中から「入っていいぞ。」と声が返ってきた。


「リーゼリットか。」

「ニックに言われて来たんだけど、私のランクに関する話だっけ?」

「あぁ、その件か。座ってくれ。」


私は扉を閉じて、言われるままにソファに座った。


「実はギルマスと相談した結果、お前の昇格が決まってな。」

「昇格?試験も受けてないのに?」


彼は私の対面に座りながら続ける。


「例の件でお前の実力は俺がしっかりと見たしな。そもそもオーガアルファの討伐なんて、軽くBを超えられるくらいのレベルだぞ。そういえば一昨日のジャイアントワイルドボア侵入の時も動いていたらしいな?「デカい狼と一緒の金髪の少女」なんてお前とウルしかいない、それも加味されるぞ。あぁそうだ、ウルの召喚者はアイリーンだが、あの時使役していたのはお前だ。お前に報奨金が出てるから受け取るように。」


彼はそこで一旦言葉を区切ると、手元のティーカップにお茶を注いだ。


「話が反れたが、以上の理由からお前の昇級は何ら問題ない。ただ、支部で上げられる限度はCまでだ。それ以上は本部に報告を入れる必要があるから、急にB以上まで上げたらいろいろとまずい。」


 予想外の返答と畳み掛けるような内容に、少し呆然としてしまった。


「はぁえ…。」


 なんとも間抜けな声を出して返事をする。

 私としては「結構助かってるから、前提なしで試験を受けても良いぞ」とか言ってもらえれば良いかな?と思っていた。貢献度とかでもランク認定はされるらしい。知らなかった。


「それで?どこまで上げる?」

「へ?あ、Cまで!」


 まだ少しボケっとしていた。声を掛けられて気が付く。


「うん?少し考えると思ったが、即答か。何かあったのか?」

「いやぁ、パーティを組もうとしたんだけど、私がFのままだったのすっかり忘れてて…。」


 あはは…と笑いながら言うと、彼は溜息を()いた


「それでCまで上げるのか、それ大丈夫か?急にCまで上がったら怪しまれるぞ?」

「そこは大丈夫。姉に再会して、そこのパーティに入れさせられただけだから。」

「ほう身内ね。ん?メノーの孤児で身内…?お前の姉ってもしかしてニアか?」


 流石は副支部長、頭の回転が速い。


「よくわかったね、そうだよ?」

「そうか…。まあ火事だけは気をつけてくれよ。」


 話を終えて部屋を出る私。残されたのは「あー!あー!マジか!!」と叫ぶロジャースとキンキンに凍り付いたお茶が入ったティーセットだけ。


 そんな好き好んで火属性使ってるわけじゃないし!

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