Vol:26 転生魔導師と弟子再び
22/08/15 修正
登場人物紹介
リズ(リーゼリット) - 主人公。天才的な魔導師が自ら転生した、金髪黒眼の美少女。
ニア - リズと同じ孤児院を出た義姉。12歳。クラス3の魔法まで扱える。
セナ - パーティメンバー。少し脳筋ぎみだが地頭はいい方。
ナーシャ - パーティメンバー。観察力と洞察力に優れ、パーティの頭脳面を担う
「さっきの空き地に行くよ。」
「は?おい、まだ食べ終わってないぞ!?」
「いいよ、ニアが来ればいいだけだから。ゆっくり食べてて。行くよニア。」
そうしてニアを連れて店を出たら、結局二人とも着いてきた。しかもちゃっかりテイクアウトしてるし。
抜け目ないと言うか何というか。
というわけで、さっきまでいた空き地に戻ってきた。
「ニア、確認するけど、ニアが使った魔法はクラス4のフレアで間違い無いね?」
「はい…。」
「では質問。それは誰に教わったの?」
「本で…。」
「本?あー魔術師ギルドにある貸出の魔導書?あれ読んでる最中で暴発しないように概要だけしか書かれていないのに、よくそれだけで使えたね?」
「あと、支部長とかから呪文は教わった。」
なるほどね。ニアの才能であればクラス4の習得は容易い。でもクラス3に対して消費する魔力が少しだが増加するので、習得は難しいだろうと思ったんだけど、支部長が直に教えてくれたなら別の話か。この街には魔術師ギルドが無いから、確か隣街の支部かな。
それにしても、ニアはだいぶ買われているみたいだ。
「それじゃ、始めましょうか。と言っても、基礎的な動きの反復だけだからそれほど難しくは無いよ。杖を構えて。」
「うん。」
「おー。チラッとは見えてたけど、だいぶ使い込んだみたいだね?」
私が贈った杖は見た目こそ変わっていないが、だいぶ魔力が馴染んでいる様子。杖を贈った師としては嬉しいことこの上ない。
「やることは至ってシンプルなんだけど。ウォーターボールを出して。」
「水よ、いと清き水よ。ここに渦巻き、集いて球と成れ。ウォーターボール。」
おや、前見た時より生成スピードが上がっている。やっぱりニアは才能がある。前に試験した時は球状に形成するのに苦労していたのに。この調子ならクラス3くらいなら無詠唱でも発動出来るかもしれない。
「ねぇ、あれ何やってんの…?」
「さぁ?何故かわからんけど、魔法の話をした途端にリズの様子が変わったのもよくわからないよな。」
なんか話しているのを聞き流しながら、ニアの前で同じくウォーターボールを出す。
「無詠唱じゃねぇか…。」
「ねぇ、もしかしてニアに魔法を教えたのって…」
「はぁ?そんなわけ…あるよなぁ…ニアが無詠唱で使えるのってクラス1だけだったよな?」
「うん、クラス2はまだ完璧に詠唱省略出来ないって。」
「でも妹なんだよな…わかんなくなってきた。」
そのまま何も考えないでほしい。ふと見たらシートを広げてテイクアウトした料理を食べている。
競技観戦じゃないんだけど?
「そしたら、ウォーターボールをこんな形に拡散して。」
「ん、ん?拡散?」
「そう、拡散。制御は保ったまま広げる。限界まで広げて、そこまで行ったらまた球状に戻して。」
私は言葉の通りウォーターボールを板のように広げ、大きく波立たせる。
「う…っく、これ結構きつい…魔力の消費が…。」
「クラス4は範囲制御が主。この消費量がだいたいの目安かな、練習の効率はいいしコツはつかみやすいと思うよ。」
さて、ニアの鍛錬を見守りつつセナとナーシャに対していろいろと説明しておかないと。
木陰のシートでまったりしている彼女らの元へ向かうと、二人は居を正した。そんな畏まらなくてもいいんだけど…。
「ぃしょっと。色々と説明していかないとね。」
「そうだね、聞きたいことは山ほどある。」
「まずは自己紹介からかな、名前とかはさっきの通りだけど。ニアに魔法を教えたのは私。」
「私の勝ちだね。」
ナーシャがそう言ってセナに向けて手を出し、セナはイライラした様子で持っていた銀貨を投げつけた。
賭けてたのね…。
「それで?お前ホントの年齢は幾つなんだ?」
「そこはしっかりと10だよ、ニアの2つ下。ニア!休憩!」
「…わ、わかった!」
ニアが少しふらつきながらもこちらに歩いてきた。
以前であれば確実に倒れるであろう魔力消費量のはずだけど、総量も上がっているみたいだ。
ニアはシートに座るなりテイクアウトしてきた料理を食べ…いや、貪り始めた。なんかもう、すごい。吸い込むように食べてる。
「あ!ニア!私の肉取った!!ちょっと!聞いて…聞いてない!」
このように私のおかずも物の見事に掠め取られ、そのまま口に運ばれて消えた。速い。とても速い。
「リズ油断しすぎだぞ。ニアと飯食う時はこうじゃなかったのか?」
「いや、全然。昨日もこうじゃなかったし…強いて言えばスイーツの時にこんな感じだったかな、送別会の時に焼いたマフィンをすごい勢いで…。」
「あーそれはね、変わってないよこの娘。」
さいですか…。
変わっているような変わっていないような。
そんなニアの事を再確認したのだった。
「そういえば、セナの戦闘スタイルはさっきの模擬戦で分かったけど、ナーシャはどういう感じなの?」
ナーシャは弓使いだ。
番えて狙い射るという特性上、あまり派手な動きはできない。ゆえに弓使いの動きは限られてくる。
戦闘中に目などの露出した弱点を射抜く中距離型、知覚範囲外からの奇襲を可能とする長距離型、そして魔術師との連携により相手への毒の付与やピンポイントに魔法の威力を打ち込むマジックアローなどを扱う支援型の三種類だ。まれにそれ以外の役割を果たす者もいるらしいが、本当に稀だという。
「ナーシャはオールラウンダーだね。」
ニアの発言だが、稀なタイプだった。
「ナーシャが近距離の敵と弓矢でやりあってた時はマジで引いたな。下手な剣士なら余裕で相手できるくらいだったんじゃないか?」
「たまたまだよぅ、たまたま。必死にやってたらできただけだって。」
「本当か?リズには負けるけどナーシャも相当謎が多いよな。」
「あー確かに。そういえば『メノーの魔女』ってリズのことでしょ?」
「その名前で呼ぶのやめて…。」
「えぇ~!いいじゃん!私の爆焔姫みたいでさ!」
気に入ってるんだそれ…
そんなこんなで休憩時間を終え、さすがに消費魔力が戻っているわけもないので、ニアの魔力制御に問題がないかなどを見直したあたりで日がだんだんと暮れ始めた。
セナとナーシャは宿が決まっていなかったようで私と同じ宿になり、そこにニアも来ることになったが部屋が足りず、一部屋に二人というくくりで止まることになった。
明日はパーティで依頼を受ける。
そのことに、少し楽しみにしている私がいた。
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